第09話 連れてってほしい
週末の朝、いつものように、町の広場に集合する。ハトリトさんは青いので、毎回すぐにみつけることが出来た。
「おい」
と、わたしはまず声をかけた。
いや、おかしい。まずは下手にいこうと親しみを込めたつもりだったけど、つい、本能が漏れて混じって、少し荒ぶった感じになってしまった。脅迫開始の声かけになっている。
でも、まあ、しかたない。
ここは、そのまま突き進む。そういう気概が大事だ。
「おはよう、ケルルくん。そして、なんだい」
それにハトリトさんは気にもしない。ぞんざいな扱いに、慣れた人生なのだろう。
遠慮せず、わたしは伝えた。
「あの、依頼ですけど、できれば、もう少し歯ごたえのある案件に同行させてください」と、わたしは迫った。
「歯ごたえ」ハトリトさんはつぶやくようにいった。
「なんというか、いままでのゆるふわな依頼じゃなくって。これぞ冒険ってのがいいです」
「冒険」
「というか、ほんとはあるんですよね、とんでもない冒険みたいなの、わたしに隠してるんですよね」
まずは決めつけて話してゆく。
「わたし、ぜんぶわかってますからね、それを出してくださいよ。出さないと、もうハトリトさんの悪評をこの近辺に世間に広めますよ、微妙に致命的にならない悪評を選別して小出しに出します」
しまった、無意識のうちに脅迫してしまっている。
でも、ハトリトさんは取り乱さない。「おや」と、声をあげ「ようやく気付いたのか」と、いった。
よし、認めた。
なら、ここで引いてはいけない。わたしは、さらに、ぐい、っといった。
「わたしをあまく見ないでくださいハトリトさん」腕を組んでうなずいた。「わたしにはね、真実を見抜く友人がいるのです。その友人がいる限り、わたしに隠し事はできません。わたしはその友人を、一生はなさずにいるつもりなので、つまり、一生、真実を人の力で見抜いていってやるつもりです」
「うん、きみの他力本願宣言はさておき」ハトリトさんがぬるりと私の話を切り上げた。「しからば、きみの希望を叶えるとしよう」
「叶えるって、いつですか」
「今日にも」
「おっ」
素早い対応に、わたしは怯んだ。でも、負け時とまえに出る。
「うん、いい心がけだ、評価します。まあまあだ」
なぜ、上から目線でいったのかは、わたしにもわからない。でも、出たものはしかたない。
「いや、じつはね」と、ハトリトさんはまた、ぬるりと声をかけ、話はじめた。「今日あたり、きみはそう来ると思っていて、用意してあった」
「用意」こっちから要求しておいてあれだけど、事前に準備されたされたで、不安になる。身勝手ながら「用意」と、二度、口にして、ハトリトさんを見た。
「命懸けの依頼だ」ハトリトさんはあっさりとした口調でいった。さらに続ける。「今日はそれをこなしに行く」
「なにをですか」
「ちょっと竜と戦いに行く」
ハトリトさんは、変わらぬ様子でそういった。
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