元カノそっくりさんと共通の趣味

 僕の妹は妹だけど妹ではない。それは僕と彼女に血縁関係がなく数日間前までは他人であったから。だから好きな食べ物とか好きな服、趣味なども全く知らないし、今わかっていることは銭湯で本を読むという変わった共通の趣味があるくらい。

 別に知らなくても死にはしないし落ち度もないのだろうけど、義理のお兄ちゃんとして知っておきたい。妹の趣味を!!

 ということで僕は勇気を振り絞って聞いてみる。


美雨みうさんにはハマってることとか趣味ってあるの?」

「そりゃぁーありますよぉ!…………ほ、本を読むこと?」

「そうなんだ。僕もそれくらいかな」


 顔立ちもすごく整っていて、彼氏がいても誰も文句を言わないであろう美少女の妹には趣味が少ないということがわかった。

 自身の偏見なのだけど、最近の女子高生はカラオケ行ったり、ラウンドワン行ったり、メイクとか服とか、プリなんとかとかしてうろちょろしてるイメージ。でも僕には彼女があまりそういう風潮に馴染みがないように感じた。


「どんなジャンルの本読むの?」

「色々!ライトノベルと漫画とか絵本とか小説まで」

「女の子でもラノベ読んだりするんだね!」


 義妹は以外にもライトノベルの良さをわかっているらしい。

 作品に縛りもなく、主人公がいて、可愛いヒロインがいて。そして挿絵もついている。僕は思う。この世にライトノベルよりも楽しく読める文庫本はないと。


 ――時間はあっという間に過ぎ、外は暗くなった。

 朝からパジャマ姿だった美雨は僕の隣で足を崩してリビングのソファーに座る。

 時間を全く気にせず、美雨さんと話してると楽しくて笑顔がたえなかった。もしも由芽ゆめと上手くいっていたら今みたいに楽しくて心地いい時間が沢山あったのだろうか。

 今の僕は元カノが大嫌いだ。上から目線なところも、急に些細なことで怒って機嫌が悪くなるとこも。


「え!!3000冊!? そんなに本もってるの!」

「うん。約3000冊だけど」

「うぅぅ……ラノベいっぱいかぁ。部屋いっていい?」

「え!?」


 本を見るだけ。読むだけだってわかっているのに、自分の部屋に女子が入るとなると不安と緊張が生まれる。


「でもまだ出会ったばかりだし、男子の部屋に女子が一人でくるのは……」

「お兄ちゃん。だめぇ?……」

「駄目じゃない!!!」


 そうだ。僕はこの子のお兄ちゃんなんだ。不純な気持ちもなければ妹に対する変態欲もない。


「でもちょっと片付けはしたいなぁ」

「いいよ!じゃ行こ!」

「今から!?」

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