子守唄

尾八原ジュージ

※詳細不明

 蔵から出てきた作者不明の絵を、私の書斎に飾っている。

 病室のように殺風景な白い部屋が、異様な情熱をもって、ぞっとするほど写実的に、克明に描かれている。

 まるで額縁の向こうに、もうひとつ部屋があるように見えるのだ。


 最近、年の離れた妹が書斎に出入りする。

 何の用かと思えば、例の絵を見ているだけらしい。

「面白い?」

 と問うと、

「時々絵の中を誰か通るから」

 という。

 嘘だ、とは思わない。そういうこともあるかな、と思うくらいの絵なのだ。私も見てみたいと思いはするけれど、妹の言葉を疑う気にはならない。


 妹によれば、最近は絵の中から声が聞こえるらしい。歌を歌っているという。

 知らないメロディーで、知らない国の言葉だそうだけど、なぜか子守唄だということははっきりわかるらしい。

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子守唄 尾八原ジュージ @zi-yon

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