【本文感想】2-14 小公女リゼットは、魔法の装丁と謎がお好き?

●作品名:2-14 小公女リゼットは、魔法の装丁と謎がお好き?

 作品URL:https://ncode.syosetu.com/n0925hv/15/


 書籍想定

 (2)「推し!」ポイント:要

 (3)「惜しい!」ポイント:要



(2)「推し!」ポイント

◆きっとこれは最良の出逢い◆

 本の装丁変態マニア(♀)×不愛想な装丁師(♂)の、魔法の本を取り巻く師弟もの! 二足歩行で人語を話す、ちょい口ワルなニャンコも出てくるよ!!



(1)所感

 貴族令嬢・リゼットが不思議な世界に迷い込んで自らのビブリオ系変態気質を満たす、異世界ファンタジー……という感じでしょうかね。

 美しい装丁という作品のアイコン的アイテムと、異世界と、魔法と、喋る猫。

 そして不愛想な男の子。

 女の子の心を擽る要素が、ふんだんに詰め込まれている作品です。


 まず、魔法の装丁本の定義が「人に出会いを与えるモノ」というのが粋。

 魔法書ではなくもっとささやかなアイテムにしている事で、この後の物語が魔法そのものが飛び交う戦闘的なものではなく、誰かとの出会いとそれが齎す心情の変化にフォーカスされるのだと分かります。


 しかし、予期せずあんな性癖(?)が芽生えるキッカケを与えてしまった彼女のお祖母さまは、さぞかし頭を抱えた事でしょうね。

 「あぁあの時本を渡したりしなければ」という嘆きが今にも聞こえそう。(笑)


 リゼットは本の内容には全く興味を示さない『装丁特化』の変態ですが、美しい装丁の本だなんて値が張りそうなものを度々買う、一種の道楽貴族っぽさを感じます。

 にも拘らず笑われたり箒で追い払われたりと、領主の娘ではあっても領民の距離が近い様子を窺わせ「どうにも憎み切れないタイプの令嬢らしい」というさりげない描写にしているのが良いですね。


 また、喋る『猫』が不思議の国のアリスでいう所のウサギ的な役割をしていたり、本への執着を見せる場面で『あの本は自分と出会ってくれたのだ』とお祖母ちゃんの言葉を想起させる言葉を告げたり(この部分、特にリゼットの中で祖母の言葉が生きていると分かって非常に良き)、『装丁師』という言葉に何をする人なのかは分からないけど字面だけで瞬発的に弟子入りを申し込んじゃったり。

 この物語の一連の流れ(真面目な部分とコミカルな部分との波)が好きです。


 それにしてもクライドは、絶対何だかんだで本へ間違った愛で方(頬ずり)をするリゼットが放っておけずに、制御役 兼 世話焼き役 兼 正しい装丁の愛で方指南役 兼 『魔法の装丁本』との関り方を教えていく(物語自体のけん引)役になるでしょコレ。

 全ての役割を担うポテンシャルを秘めている、苦労性になりそうな予感がひしひしと。(笑)


 これ、続きが無かったら許さない(まがお



(3)「惜しい!」ポイント

 異世界に迷い込む瞬間の心情描写(タメ)が足りない気がするのが、惜しい!


 もしかしたら文字数の関係で削った場所かもしれないなと思いつつ……。

 燕尾服ニャンコに本を取られて、走って追いかけて異世界(?)に入り込んでしまうというシーンが少し、演出不足かもしれないな、と感じました。

 というのも、状況描写に特化して心情描写+リアクションが足りていないのかもしれないな、と。


 例えば、曲がったところに壁があったらきっと、「壁がある事に驚き⇒しまった!⇒怯んで目をつぶる」などのアクションがあった後に、「結局減速しきれずに」頭から突っ込む……と思ったのに「あれ? 衝撃が無い。何で? ⇒」目を開けたら、そこには異世界が。という感じになりそうだな、と。

 「」の中の描写を状況描写の間に混ぜると、より読者が感情移入しやすくなるかもしれません。


 日常から異世界へと迷い込むワクワクはこの作品の一種の武器だと思うので、改稿をする際はこの辺をもう少し分厚くして上げると、より没入感のある作品にできそうだなと思いました。

 

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