モモ、町に出る

「それでは、探しにまいるぞ。」

モモは、御台所を探すというより、江戸の町を実際に見ることが出来るのでワクワクしている。しかし、家臣が連れてきた筋骨隆々の立派な白馬を見てたじろいだ。

「さ、さ、上さま。」

吉保に促され、恐る恐る、家臣に支えられて、白馬にまたがってみる。力強い見た目からすると硬いイメージであったが、鍛えられた筋肉は柔らかくて乗り心地が良い。馬に乗れるかと不安だったが、小さい頃に牧場で乗馬体験した記憶がよみがえってきた。

「では、参るぞ。」

目の前に広がる江戸の町並みは、時代劇のセットとは違う、リアルな世界だ。沢山の人々がせわしなく行き交い、そこら中で大きな声が溢れ、活気に満ちている。やはり天下の将軍のお膝元、江戸である。この江戸の背景に、家臣を従えて、美しい白馬に跨る自分。きっとめちゃくちゃに映えているに違いない。

(スマホがあれば撮りまくって、インスタに上げるのに。)

普段、将軍が外出する御成りでは、町人たちは粗相がないように緊張した雰囲気になる。砂埃が立たぬように道には水がまかれ、もちろんゴミなどは片付けられる。しかし、今回は隠密である。ありのままの町の姿だ。モモの興味は尽きず、見るもの全てが新鮮で、上下、左右、絶えることなく首を動かし、その光景を目に収める。その姿を見て、吉保はまた感動した。

(こんなに懸命に御台所さまを探しておられる。やはり、愛の大きさは無限大なのですね。)

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