第36話 私、どうしたらいいのかな…
彼女は制服ではなく、私服姿だった。
今日、早く帰宅したということは何かしらの事情があったに違いない。
響輝は彼女の家に向かっている際、もう一度メールを送って確認を取ったのだが、返答はなかったのだ。
そんな顔を見てしまうと、やはり、先ほどのスーツ姿の男性のことを思い出してしまう。
その男性と莉緒は兄妹関係であり、彼女も何か言われているはずだ。
「私……ちょっと忙しくて」
莉緒は苦笑いを浮かべている。
何かを隠しているのは明白であり、余計に彼女の本心を知りたくなってきた。
「ちょっと待って」
響輝は、素通りしていこうとした彼女を引き留めることにした。
実の兄から色々と言われていると思うが、莉緒からも直接聞きたいのだ。
「私……本当に忙しいから」
「兄から言われているの?」
「……しょうがないよ。そうなってしまったのなら」
「しょうがない? でも、莉緒はそれでもいいの?」
「……兄さんから言われていることだから」
「だとしても、本当は従いたくないんじゃないの?」
「……一緒に住んでいるし、余計に話を拗らせたくないの」
莉緒は悲し気な表情を見せつつ、響輝から掴まれている腕を振り払ったのだ。
「ねえ、ちょっと一度、冷静になって会話しない?」
「……でも」
「その方がいいと思うよ」
響輝は多少強引ではあったが、莉緒の手を優しく掴んで、彼女の顔をハッキリと見て、自身の意見を告げるのだった。
「なんか、本当のお兄さんみたい」
「え?」
「だって、ここまで親切にしてくれる人なんて、響輝君くらいしかいないよ」
「そんなことはないよ」
響輝は突然のことに、緊張感のあるタイミングで照れしまったのだ。
「莉緒さんは、他の人とも仲がいいし。実際のところ、俺以上の人なんて結構いるんじゃない?」
「んん、響輝君だけだって……こういうこと学校で話せないし。迷惑でしょ。暗い事情を人前で話すとか、気分悪くさせそうだし」
「そうかも……な。でも、俺には普通に相談してもいいから」
「ありがと」
莉緒は軽く頷いてくれた。
少しは気分がよくなったようで、顔色が明るくなったような気がする。
響輝は彼女と共に、近くにある公園のベンチへ向かい、腰掛けるのだった。
「この前、兄さんから誰かと付き合っているだろって言われたの」
「突然言われたんだね」
「うん。私も驚いたくらいだからね。それと、私の兄さんは仕事の都合で、水族館近くに来ていたみたいなの」
「変な偶然が重なったなぁ……」
「だよね。私も本当にどうしてって思って。嫌になったの。元から兄さんのことはそんなに好きじゃないんだけど。下手に話しても、よくないし」
莉緒は俯きがちになる。
溜息を吐いて、一段と気分悪そうにしていた。
「私、どうしたらいいのかな?」
「でも、お兄さんは、なぜ、そこまで注意深く言うんだろうね」
「わからないわ。むしろ、私も知りたいよ」
直接聞けたのなら、そんなに悩む必要性なんてない。
むしろ、その程度で解決するくらいなら問題にはなっていないだろう。
響輝と
「じゃあ、莉緒さんは、お兄さんと共通の話題とかはないの?」
「そういうのはないよ」
「知らないの?」
「知らないっていうか。兄さん、自分の事、そんなに話さないし。昔は普通に接していたけど、今は何が好きなのか、わからないの」
「んん……でも、共通の話題があれば、何とかなりそうなんだけどな……。そうすれば、ちゃんと、お兄さんの方も話を聞いてくれると思うんだけど」
響輝は腕組をして悩む。
都合がいい解決方法はないだろうか?
「ん?」
ふと、響輝は何かを思いつく。
普段から読んでいる妹系のラノベのことが脳裏をよぎったのだ。
非現実的なやり方かもしれない。けど、あの妹系ラノベのシチュエーションをうまく利用すれば、何かしらの改善に繋がるような気がする。
何事も深く考えていてもしょうがない。やれることからやってみようと思った。
いつも妹がバカにしてくるので、俺は学校一の美少女とイチャイチャすることにした 譲羽唯月 @UitukiSiranui
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