第12話 この頃、学校周辺に怪しい人がいるんだけど…
今日は朝から濃すぎる。
まさか、通学途中に、リリカっていう奴と出会うことになるとは思ってもみなかったからだ。
それにしても、リリカって、普通に高校生だったんだな。
容姿や言動に幼さがあり、
制服姿の彼女を見て、女子高生なんだと改めて実感する。
響輝はギリギリのタイミングで校門を潜り抜け、昇降口へとたどり着く。響輝は中履きに履き替え、教室に向かうことになるわけだが。
現在進行形で付き合っている
やはり、昨日の件も相まって気恥ずかしさに襲われるのだ。
響輝は廊下を歩いていると、ふと思う。
この学校にいるラノベを書いている人の存在である。
リリカは、その子を勝手にライバル扱いしているようであり、気になるところだ。
一体、誰なんだ?
一年以上、高校に通っているが、そんな話や噂すらも耳にしたことがないのだ。
そもそも、どんなラノベのジャンルを書いている人物なのだろうか?
もしかして、いつも読んでいる妹系のラノベの作者なんじゃないかと思うが、まさかな、と思う。
そんなに都合よく人生が展開されるわけがない。
そうこう考えているうちに、響輝は教室前まで到達していた。
響輝は教室に入り、クラスメイトらのざわめきを感じたのである。
今日はやけに騒がしい。
教室の壇上前に人だかりができている。
なんだろうと思いつつも、一旦、席に座るのだった。
「ちょっと、聞いて。みんなちゅーもくね」
壇上前の方から活発的な女の子の声が響く。
朝なのに、ハッキリとした口ぶり。
無駄にテンションの高い。
その彼女は、
テンションが無駄に高いというのも大変である。
なんせ、響輝は起きたばかりで体の方が本調子ではないからだ。
その上、声が大きいせいで、耳に大変響く。
梓紗は明るい性格ゆえ、交友関係が広く誰からも慕われている。
彼女の周りには、多くの人が集まっているのだ。
陰キャで友人すら少ない響輝と比べたら、天と地ほど違う。
比較すること自体、ナンセンスである。
「皆には聞いてほしいことがあるの」
「なんだよ、委員長。こんな朝っぱらからさ」
壇上近く、黒板周辺にいる委員長のセリフに、辺りにいるクラスメイトの一人が面倒くさそうに聞き返していた。
「これは重要なことなんだから、よーく聞くようにね。この頃、この学校の周りに怪しい人がウロチョロしているの。そういう情報をね。私、朝練している時に先生から聞いたのよ」
教室が不穏な空気に包み込まれる。
「え? 誰? 不審者ってことよね」
「だろうね」
「というか、なぜ、この学校にそんな変な奴が?」
皆がざわめく。そんな中、響輝は一人で席に座り、遠くの方から話を聞いていた。
「でも。まだ、不審者かどうかは定かではないけど。夜遅くに帰宅する時は、誰かと一緒に帰るようにね。この怪しい人の情報が記載されている用紙は、教室後ろの掲示板に貼っておくから、ちゃんと読んでおくように」
梓紗は責任感の持ち主であり、やるべきことをしっかりとこなしている。
彼女は教室の後ろの方へと向かい、ホワイトボードの掲示板に、その用紙をマグネットで張り付けていた。
怪しい人か……。
パッと思いつくことは、あの子である。
小説家を気取っているリリカって女の子だ。
まさか、あの子が不審者ってこと?
まだ正確な情報が出回っていないのに疑いを持つことはよくないが、一応、脳の片隅には入れておこうと思った。
まあ、リリカとはあまり関わりたくないわけだが。
この様子だと、また彼女とどこかで出会いそうである。
朝のHRが終わり、一時限目の授業が始まる。
響輝は教室の席に座り、ただ黒板を見つつ、授業を受けていた。
妹の唯とどうやって仲を戻すのか、そんなことばかり考え込んでいたのだ。
本当は唯と昔のように普通に過ごしたい。
ただ、それだけの事なのに距離を感じる。
響輝は授業中、ボーッとしてしまう。
唯との仲直りする方法。それは……わからない。
どうしたらいいんだろうと思い、ふと教室の黒板の方を見ると、丁度振り返った莉緒と視線が重なってしまう。
急な出来事にドキッとし、響輝はサッと視線を逸らす。
な、なんで、このタイミングで……。
昨日、莉緒とはキスしたこともあり、心臓の鼓動が早くなる。
お、落ち着け。たまたま視線が合っただけなんだ。
何度も自分に言い聞かせていた。
刹那――、莉緒との共通の話題である、妹系のラノベのことが脳裏をよぎったのだ。
あの妹系のラノベでも兄と妹が喧嘩した場面があった。その時、兄の方から歩み寄って、思い出の場所に行き、和解する話があったことを思い出す。
……唯との思い出の場所……?
どこだろうか?
すぐには思い出せない。
けど、その場所に向かえば、本当の意味で唯とは和解できそうな気がする。
自分が好きなラノベでも兄と妹が仲直りできたのだ。だから、できるはずだと、響輝は自分をひたすら納得させていた。
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