第15話 俺らは、神さんでも仏さんでもねえんだよ。
「どういうこった?」
ゼペスの言葉に、首を捻る蓮次。
「貴方達『マツリバヤシ』は魔王を撃退した後、国を回っては人々に活力を与え、施し、恵みを
そこで一旦言葉を切ったゼペスは、蓮次を見つめた。
「何でえ何でえ、小難しい事抜かしやがって。俺らはそんな大層なこたぁしてねえよ。尻の穴がムズリ、としてくらあ。ま、
蓮次が尻を掻き始め、『何やってんのよ!』と奏に背中を叩かれる。
「……貴方達が闘いに参加すれば、グレブ帝国を容易に撃退できる。ただ、貴方達が戦に加担したとなれば……これからの旅路に重大な影響を及ぼすでしょう」
「そうですね。そうなると僕らか、僕らのうちの誰かを引き込もうとする勢力も出てくるでしょうね」
京が肩をすくめ、ため息をついた。
ゼペスは頷きながら、話を続けた。
「執拗に攻めてくるあの国には手を焼かされましたが、度重なる出兵と過度の徴兵、徴収、自国の資源の乱獲によってあの国は最早、ボロボロです。今回を
それを聞いた奏が、はい!と手を挙げた。
「はい、奏さん。ご質問ですか?」
「うん。私達が参加しなくっても、勝算はあるの?」
「追い返す事は難しくないでしょう。グレブは十分な輜重を用意して攻め入りません。事あるごとに、自国の厳しい状況に慌てふためいては出兵し、徴収や略奪を繰り返しては進んできますので油断さえなければ。ただ……」
「サイアク。徴収とか略奪とか……ふざけてる!」
拳を握る奏の肩をぽん、と叩いたエルが首を傾げた。
「その先があるみたいね。ただ……何ですか?」
「ガルディ、説明を」
「はい。我が国の南にザンザムールという国がございます。我が国と同盟を結び、魔獣やグレブ来襲に連携する為に、国の境界線に互いの拠点を設けているのですが……拠点から『ザンザムールと連絡が取れない。竜の姿を確認。現地を確認する』との報告の後、連絡が途絶えています」
それを聞いた京が、腕組みをする。
「うーん。考えられる可能性は……竜がザンザムールって国を襲った。それか、グレブ帝国が竜を召喚して闘わせた、とか。僕らはこの世界の竜を知らないんですが、簡単に召喚できるものなんですか?」
「簡単ではありません。召喚は呼び寄せるモノの強さによって使用する魔力量が変わります。グレブがそれだけの術者を集められると思えません。竜は魔王に並び立つほど、強い。それに、過去あの国が召喚獣を呼び出したという記録もありません」
ふぅむ、と唸る蓮次以外の面々。
そこに。
蓮次が口をはさんだ。
「ま、いいさ。ガキ共にゃ祭りと『しばらくうめえもん食わせてやっからよ』ってなげんまんしちまったしな。俺でいいなら手え貸すぜ?追っ払うくれえなら、な」
その言葉に二人が戸惑い、三人が憤慨した。
「それは……蓮次さんがそう言って下さるのは私達にとってこの上ない話ですが……それでは貴方達の評判とこれからが思いやられます」
「
からり、と笑う蓮次が横の三人を見た。
「てえ訳だ。おめさん達は好きにしていいぜ?」
「ふふ!ふざけんなぁ!なんで一人で決めてんのよっ!」
「蓮さん。なんで一人……なの?私達は、必要ない?」
「そうですよ。僕達は解散に賛成した覚えはないよ?」
奏が怒髪天を突き、エルは俯いて、ぼそり、と呟いて拳を握り締め、京は目を座らせて、一歩も引かない、という気構えで蓮次を見据える。
「聞き分けのねえ事言いなさんな。俺あ、イワナガの姫さんとサクヤの姫さんに頼まれて、おめさん達の代わりに来てんだ。いつでも
肩を竦める蓮次に、三人がゆらり、と立ち上がった。
「……蓮次は、どうすんのよ」
「俺あ、あっちでぽっくりお陀仏だ。
「だから、それが嫌だって言ってんのよっ!!!」
奏が、叫ぶ。
「んあ?」
「一人ぼっちになんか、誰がさせてやるもんか!!」
泣きながら、叫んだ。
京とエルも、蓮次を見下ろして、睨みつけている。
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