欠片2「理想像」

 プリンス・プリンセスと呼ばれる人になりたいと思う。

 美しく、品行方正でありたいと思う。


 私は自分の容姿が嫌いだ。見ていて気持ちが悪い。

 だけど、磨きたいのはそこじゃない。内面だ。

 内側の美しさは外側にも表れると思う。

 つまりきっと、今私が自分を好きになれないのは、今の自分の内面が未熟だからだ。

 求めるものと、距離があるからだ。


 優しい人でありたい。

 強くありたい。

 考えることの出来る人でありたい。

 美しくありたい。

 輝いてみたい。


 人に、笑顔をもたらせる人に。

 柔らかく、温かく、時には包み込み、時には支え、時には寄り添える人になりたい。


 人を、守れる人に。

 悲しみから、恐怖から、強者から、悪人から、守り戦える人になりたい。


 人を、受け入れられる人に。

 共感出来なくて良い。その人は、そうあるのだと、相手をあるがまま認められる人になりたい。


 人に、胸を張れる人に。

 ありとあらゆる事柄を熟考し、自身の振る舞いに自信をもって、正しいと思えることを、正しく行える人になりたい。


 人から、憧れられる人に。

 素敵だと、あなたのような人でありたいと、思ってもらえるような人になりたい。


 これは、叶えられる未来だ。

 きっと手に出来る、いつかのお話。


 考えろ。学べ。鍛えろ。信じろ。諦めるな。進め。そして休め。

 怯えるな。決めるのは私。

 正解なんて無い。こうすれば叶えられるなんてマニュアルも無い。

 決めるのは、私なのだから。

 私が在りたいと思える人に、私は在れて居るか。

 他の誰にも判断出来ない。否定なんてさせない。

 異を唱えるのならばそれは、「あなたの理想」と「私の理想」が同じではないと、ただそういうことだ。


 私のことは、私が決める。

 酸いも甘いも、私のものだ。

 この喜びは、誰にも渡さない。私だけのものだ。私が得たものだ。

 この苦しみも、誰にも渡さない。私だけの責任だ。他の誰にも譲りはしない。


 何もかも、私のせいだ!

 この楽しさは、私の決断によるものだ!

 この悲しみは、私の未熟さによるものだ!

 全て、私の力だ!

 私が嬉しさを勝ち取ったのだ!

 私が辛さの侵入を許してしまったのだ!


 流れ込んで来る。良いことも。悪いことも。

 防波堤は何処だ。感情の奔流が押し寄せる。

 楽しかったあの日も、悲しかったあの日も、今日の予定も、昨日の献立も、喉の渇きも、体の疲れも、焦りも、不安も、来週届く荷物も、全部全部全部。

 私が決めたものだ。私が受け入れたのだ。

 あの日の行動が無ければ、あの喜びはなかっただろう。

 あの日の決断が無ければ、この苦しみは無かっただろう。

 やったのは私だ。行ったのは私だ。


 他の誰が、何と言おうとも!

 最終的に、それらをしたのは、私なのだ!

 だから!だから!だから!


 誰かのせいにしたくない。

 私が頑張ったんだって言いたい。

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