欠片1「記憶の欠片」
この物語は、記憶の断片である。
現時点では出来るだけ時系列に沿いたいとは考えているものの、実際には浮かんだ欠片を1つ1つ掬い上げて記すため、必ずしも時系列順とは限らない。
私の頭の中は、記憶の欠片で出来ている。
大事なのは、あくまで欠片であるということ。
パズルピースとはまた違う。
パズルピースであれば少しずつピース同士をはめていき、いつの日にか1つの作品として成り立つであろう。
それは"思い出"かもしれないし、人に伝えたい"言葉"であるかもしれない。
こうして記す文章だって、単語や文脈など様々なものを組み合わせて完成させる「パズル」のようなものではないか?
でも私の頭の中には欠片しかない。
ピース状ではないから少しずつはめて形作っていくことも出来ない。
完成予想となるはずの絵も描いていなくて、パズルとしては成り立たない。
だから1話完結出来る短編のような形を取ろうと思う。
確かにこれらは私の断片であるからして、全てをまとめなければ私という人間には成り得ない。
しかし一方で、こんな言い方をすれば誰かに指摘されてしまうのであろう。
「では、この物語を読めばあなたという人間の全てを理解出来ると言うの?」
勿論そうではない。
忘れてしまった過去が多いことは、想像に難くない。
自身では理解し切れていない、"他人から見た私"というものもあるだろう。
では、どうせ完璧になど成れはしないと分かり切っているのならば、こんな欠片の海であろうと問題ないのではなかろうか。
さて、何の話であったか…。
そう、「私の頭の中は、記憶の欠片で出来ている」。
——人に何かを伝えたくてもパズルピースのように上手く文章を組み上げることが出来ないから、結局要領を得ない支離滅裂な言葉になる。
ほら、こんな風に。
きちんとした一文を書こうと思えば思うほど、ぐちゃぐちゃと形が崩れていく。
だから短い文を重ねて、読み返して、順番を入れ替え、言葉を変え、どうすれば伝えられるのか、試行錯誤していく。
口に出して話すというのは、これが出来ないから困ったものだ。
ただ、こんな頭でも役に立つことはあるらしい。
私の欠片は過去・現在関係なく、平等に頭の中を漂っている。
そのため、「以前にも似たようなことが無かったか」というレベルでは大いに役立つのだ。
これが仕事では特別役立った。
そして同時に、他の人たちはそうではないらしい、と初めて実感した。
皆、口をそろえて「覚えていない」と言うのである。
何故?一緒に作業したでしょう。共に話を聞いて、調査して、まとめて、対応して、報告して。
それなのに覚えていない?何を馬鹿な。
「でもそれって何か月も前のことでしょう?」
確かにそうだ。
「そんな前のこと覚えていないよ」
じゃあ何か。
あなたは数か月前に行った旅行の目的地を覚えていないのか。
カレーを食べた日付は覚えていなくても、カレーを食べたことがあるとは記憶しているだろうに。
私の記憶だってそれと同じだ。
何月何日の出来事か、どんな風に物事が進んだのか、詳細までは覚えていない。
そんなことがあったなあ、そんなレベルなのである。
話が脱線した。
いつもより長くなってしまった。
今日のところはここまでにしよう。
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