用意周到
「絶対に許されない恋。仮にも王族同士でそんなこと……スキャンダルにも程があるだろ?」
「っ、まぁ……」
「でも人間って不思議でね、いけないと解っているのに余計に欲しくなるものなんだ」
重なった手。彼の温もりが指の先まで融けて、双玉の宇宙がより一層近付いてくる。
空いた片方の手で距離を取ろうとノア様の胸を押し返すも、彼も空いた手で私の腰を引き寄せた。
「ノア様っ……!」
「シャーロット、君のことが本当に好きなんだ。堂々と君の横を歩きたい、肩に手を添え腰を引き寄せ俺のものだと判らせたい」
「ノアさま近いっ……」
「シャーロット、俺と婚約して」
「えっ!?」
「お願いだ。君のことしか愛せないから。うんと頷いて。それだけで良い。それだけでどんなに幸せか」
ちゅう、と首に吸い付いて離れない。
吸血鬼みたいに首ばかり責められるのだが、勿論嫌ではない。彼から与えられる快楽は愛しか感じないので本当に気持ちが良い。
けれど、頭の片隅にあるのは、ルーカス殿下の婚約者だったときの嫌な記憶。やりたいことを押し殺して、相手のために人生を生きる。それがまた繰り返すのは嫌だ。
「ッ! あッ、ノアさまっ……! でも私っ……! 仕事がッ……!」
「ふふ、シャーロット。仕事人間の俺に言う言葉かい?」
「っ……そ、れは。ふぁっ!」
「君が嫌だというのなら茶会なんて出なくていいし仕事以外の人と話さなくたっていい。俺はシャーロットが居ればいい」
「でもっ、でもでもそんな簡単にッ!」
「簡単だよ、そんなことぐらい。……ねぇシャーロット。諦めて?」
「あき、らめ……」
“諦めて”
その言葉がやけに衝撃的で。あ、私はもうこの人から逃げられないんだ、って思った。だから、抵抗していた胸の間にある最後の砦を、下ろした。
「ん、もしかして、諦めてくれた?」
「ぅ……っは、はい……諦め、ました」
「! シャーロット! ああシャーロット! 愛してる、心から愛してる。やっと俺のものだ、絶対に離さない……!」
ぎゅうっと強く抱き締められたので思わず呼吸が止まる。
苦しいよと背中を叩くと、
「ちょ、ちょっ……! ノア様っ! わ、私が頷いたからって婚約が決まったわけじゃ……! 両親の許可だって……!」
「言ったろう? うんと頷いてくれればそれで良いって。俺の両親にも、勿論君の御両親にも許可はもらってる」
「……………………はっ!?」
思考停止する私の瞳には、満足気に笑うノア様の姿。「俺を誰だと思ってるの」と、まるで獲物を捉えた獣。
さすがノア·プラトン、恐ろしい男だ。
「ふふ、今からどれだけ君を啼かせたって誰にも文句は言われないね」
「なっ!」
驚く口は直ぐに塞がれて舌が潜り込んできた。
熱い舌は絡み合って吐息が漏れて息が出来ているのかも分からなくて、ただキスしているだけなのに子宮が疼いてしまう。
(キスってこんなに蕩けるものだったっけ……?)
「可愛い。可愛いよシャーロット」
「あっ……のあ、さまっ、くるしいです……っ」
「良いね、君の最期が俺の腕の中ってのも」
「!? まだ死ねません……!」
「あはっ、冗談に決まってるじゃないか。これからは俺無しじゃ生きられないってほど、どろどろに甘やかしてあげるんだから」
「んんっ……こわいですよっ……!」
「そりゃあね、もう我慢する必要がないからね」
そう言って、するりするりとドレスの中へ手を伸ばし、焦らしながらショーツへ辿り着くと、意地悪くでも嬉しそうに笑うノア様。
はいはい。言いたいことは分かってますよ、私はキスだけで濡れるはしたない女ですよ。
「シャーロットってば……本当にもう……。そんな
「どっ! どんな顔してるっていうんですか……!」
「んー、内緒」
「なんでっ!」
「ああもう本当に可愛い……。君の言葉から表情、仕草ひとつひとつにそそられるよ」
「ッ! い、言われ慣れていないので程々にしてクダサイ……」
「それは無理だな。だってどろどろに甘やかすんだから」
「〜〜〜っ!!」
そんなやり取りが続いて、結局最後は私が負けた。こんな男に勝てるはずない。
ノア様は私のドレスを脱がせると、「さぁベッドまで行きましょうね」と容易く抱える。すっかり痕が消えたから付け直さないと、と呟いて。
いざベッドの上に乗せられると、愉しみながら下着からストッキングからガーターベルトまで身包み全部剥がされて、丁寧に丁寧に痕を付けていく。
そんな行為についには私が我慢できなくなって、伝家の模範解答「ノアさまぁ……おねがい……」と首を傾げてみせた。
するとやっぱりこの言葉にはノア様も弱いのだった。
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