第22話 転職機能開放!

 俺達は長い旅路を経て、とうとう第五の街シャルダンへと辿り着いた。

 仲間の死も乗り越え、心と体が一段と強くなった上で。


 そしてどうやら、この街では更なる戦力アップが見込めるらしい。

 というのも――


「この街の中央には転職の神をまつる祭場がありましてな」

「なにそのハロワ神みたいなの」

「そこで祈る事によって転職システムが解放されるのですぞ」

「お、遂に期待の機能が解放されるんだな!」


 遂に魅惑のジョブチェンジが出来る様になるというのだから。


 ここで一つ言っておくと、俺達は現在みな無職状態だ。

 戦士、弓士、魔術士も「ただそう名乗っているだけの無職」という扱いらしい。

 俺に至ってはフリーターと、正直早くどうにかしたかったんだが。


 その機会がとうとうやって来たという訳だ。

 この時をどれだけ待ちわびた事か。


「職に就く事でステータスが全体的に向上しまする。それと装備適正が加わり、出来る事に幅が増えますぞ!」

「あと職ごとにパッシブスキルも付与されるわね。成長すればアタックスキルも覚えるわよ」

「魔導士系スキル楽しみでっす!」

「そういえば確か、ユーリス一族は転職すると極大魔法を忘れるとあったような」

「じゃあユーリスだけ無職のままで行こう」

「なんでーッ!? ぴえーん!」


 一人だけ転職する必要の無い奴がいるが、この際それは置いておく。

 俺とダウゼン、ウィシュカは立ち位置から改善の余地さえあるからな。


 確かに攻撃力は必要だが、ぶっちゃけ飽和している。

 単純に火力ならユーリス一人で充分なのだ。


 しかも全員が遠距離で、命中精度などを考えると無駄が多い。

 特にウィシュカは矢弾の消耗もあって財布にも優しくないんだ。


 となると根本的な役割から変える必要がある。

 例えば彼女を、欲しいと思っている前衛に転向させるとかな。

 自由に構成を弄れるシステムだからきっとかゆい所にも手が届くだろう。


 フッ、夢が広がるぜ! 


 そんな楽しみをとっとく理由なんてない。

 という訳で俺達は一番に転職の祭壇へと向かい、祈りを捧げる。


『転職システムが解放されました』


 すると早速、勇者の証が輝いて機能拡張を報せてくれた。


 なお、職は最初から予め揃っているらしい。 

 条件さえ満たせば、最初から高位職になる事も出来るそうだ。

 取得しないといけないなどの制約が無いのはとても助かるな。


「よし、それじゃあまずは俺から変えてみるとするか!」


 で、今の俺がなれる職はといえばこんな感じだ。


剣騎士ソーディアン……剣と盾で仲間を守るオーソドックスな盾役

聖騎士パラディウム……神聖防技と盾を駆使する防御の要

双盾士シールドテイカー……盾二刀流で鉄壁、攻撃を棄てた完全ディフェンダー

魔盾士フィンポインター……魔法の盾を展開する、魔法防御にも長けた頼れる壁

霊鎧士バリアリジョン……防御フィールドを張り、属性防御に特化したぬくもりの盾

防壁士ヴォルメイカー……壁を組み立てて安置拠点を造る長旅の友


 待って。

 なんで盾役しかないの?

 自由度一体どこいった!?


 仲間達のジョブは完全に自由だった。

 高位ジョブはまだ選べなかったものの、タイプさえ変える事だって出来たんだ。


 なのに俺だけ盾ジョブしか選べないってどういう事!?

 即死攻撃だらけの世界をこのまま最前線で突き進めって事なの!!? 


 あわよくば、俺もアタッカーとか魔法使いとかやってみたかったのにィ!!!!!


「ダウゼン、解説を頼む」

「勇者は人を守る事が大前提ですからな。基本的に盾ジョブ以外は選べませぬ」

「なんで勇者だけそんな縛りがあるんだよ……! いいじゃない、魔法で暴れる勇者がいたって。開発部、もう少しゆとりをもてよ……!」

『ターゲットが間違っています』

「それ担当部署違うって事?」

『翔助は割と正解に近い真理を手に入れた』

「結局どの部署かわからないけどな!」

『もっと近づいて調べてください』


 でも、仕様ならもう仕方がないか。

 後で裏技やバグ技で強制ジョブチェンジが出来る事を祈るばかりだよ。


 そこで俺は比較的アタッカーにもなれる【剣騎士】を選んだ。


//////////////

狭間 翔助 ♂ ☆勇者

職業:剣騎士

Lv:21

HP:1819/2834

MP:0/0

攻撃力:491(武器+370)

防御力:99999

瞬発力:101

知性力:113

精神力:122

運命力:65


パッシブスキル

〇剣の極意 〇盾の極意

アタックスキル

なし


次のレベルまであと 2,981,395,229 ポイント

//////////////


 今のスタイルとも大して変わらないから動きやすいと思ってね。

 この世界の戦い方に慣らしていく事を第一に考えた選択だ。

 おまけに槍も装備出来る様で、洞窟で入手した武器の再利用もできるし。


 ダウゼンは斧にこだわりがあるようなので【斧技士アクスブリッター】となってもらった。

 コイツの距離無視特性は先天性らしいからな、生かさない手はない。


//////////////

ダウゼン=グラウリー ♂

職業:斧技士

Lv:21

HP:2007/2910

MP:0/0

攻撃力:520(武器+395)

防御力:99999

瞬発力:81

知性力:135

精神力:101

運命力:40


パッシブスキル

〇斧の極意 〇力の開放

アタックスキル

なし


次のレベルまであと 2,981,395,229 ポイント

//////////////


 一方でウィシュカは意を決して【迅駆士ハイスラッシャー】に。

 元々身軽だったので相性も良いと思って。

 当人は少し戸惑っていたが、そこは慣れて貰うとしよう。


//////////////

ウィシュカ=ウィトミッタ ♀

職業:迅駆士

Lv:21

HP:1888/2195

MP:0/0

攻撃力:99(武器無し)

防御力:99999

瞬発力:143

知性力:98

精神力:116

運命力:89


パッシブスキル

〇双剣の極意 〇短剣の極意 〇高速移動

アタックスキル

なし


次のレベルまであと 2,981,395,229 ポイント

//////////////


 最後はユーリスだが、こちらは変わらない。

 やはり低レベルでも極大魔法を使えるのは重要だからな。

 基本レベルが上がった時に変える方がいいだろう。


//////////////

ユーリス=ヴェルーシュ ♀

職業:魔術士

Lv:21

HP:1212/1813

MP:54/1052

攻撃力:253(武器+160)

防御力:99999

瞬発力:91

知性力:144

精神力:127

運命力:130


パッシブスキル

なし

アタックスキル

なし


次のレベルまであと 3,103,215,001 ポイント

//////////////


 無職でもこれからアタックスキルを憶えて行くらしいし。

 足手まといなんかには間違ってもならないだろう。


「ほんとにウチ、転職無しなんでっすか……?」

「早く変わりたければ気合いで正式に極大魔法を憶えるんだな!」

「そんなーご無体なー」


 こうして俺達は転職を済ませ、装備も一新して旅の準備を整えた。

 盾役が相変わらず俺なのは未だ納得いかないが、今は諦めるとしよう。

 サブ盾という程じゃないが、ウィシュカも前に立ってくれる様になったしね。


 それで一行は街の外へ。

 目指すはもちろん第六の街だ。


「第六の街ウィルゲイムは西の湿原を越えた国境の先にありまする」

「関所もあるけど平気よ。勇者の証があるからね」

「なら遠慮なく進んでよさそうだ。それじゃあ行こう、皆!」


 でも経験上、恐らくここまでが冒険のチュートリアル。

 RPGっていうのは大抵、肝の要素を解放してからが本番だしな。

 この先はきっと邪神とやらの影響が途端に強くなっていくだろう。


 となると次は一体どんな障害が待っているやら。

 敵も仕様バグも、この世界じゃ全く侮れないのだから。

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