3話 作戦通りに行きますように
まずは状況を整理しよう。
それから、一つ一つ進めなくちゃ。
私は何とかあの場を逃れて、雪乃と一緒に自分の部屋に戻った。
しかし、雪乃は
「雪乃様っ!歌が送られました!昨日の逢瀬についての歌に違いありません」
の声一つで飛んで行った。
いや、正確には引きずりながら這い出行ったのかもしれない。
だけど、昨日私あんなに苦しんでいたはずなのに、よくも他の男と遊んでたのね。
だから、1人残った私はとりあえず、今を理解しないといけないと思った。
あのちゃぶ台ぐらいのテーブルに紙が溜まっているから、それに書くか。
あっちの私は13歳。
中一。
学費がそこそこ高い私立中学に通ってる。
そこは共学で、中高一貫校。
年に数人の東大を出す。
身長170.1cm。
あれ、ここの私って背低くね?
定規ないから知らんけど、でも見た感じ低。
そして、体重は...知らん
対してこっちの私は
雪乃っていう姉妹持ち。おそらく姉。
そして、奥方様っていう母持ち。
父知らん。
でも見た感じ少し偉そうな家。
お見合いしたがるから、政治に関わるかな。
えと、私ってどんな顔してんだろ。
鏡ィ
あーこれにちょい映るわ。
てか、何なん。私の顔こんなに歪んでないし、青くない!
でも、眉毛丸くて草。
お、二重じゃん。よっしゃぁ!
目が大きくて、あっちの私とは全然違う!
...あれ?
うん?
平安時代って細い目が美しいんだったよね
あ、オワタ。なんで顔は元のまんまじゃないのお?
あ、それで私お見合いするんだった。
癸子はお見合いを嫌っているみたい。
相手は誰だろう。
薄い瞼に少し折り目が付いていて、でも二重ほどうるさくはなくて、そして美しい横顔で、いつも微笑んでいるようで...
つまり、涼羽みたいな男の子だったらいいな。
結埜香、目を覚ましなさい。誰があなたみたいな人と一緒にいたがるわけ?
·····
帰って。ここはあなたに関係ないでしょ?
·····
私を呼んだのはあなたでしょ?
いつからそんな口を聞くようになったの?
·····
でも、もうどうせ私は私じゃないのだから、あなたはあなたじゃないでしょ?
·····
だけど私はあなたにとって必要だから。
私がいないとあなたは何も出来ないから。
·····
わかったよ。わかったから。
さっきの青空は消え、雲が目立ってきた。
まずは目標を決めましょう。
毎日この紙に日記を書いていくことにする。
とりあえず、今の目標は「慣れる」
よし、こうなったら、
「絶対慣れてみせるから!」
癸子、私は癸子。
優雅でおしとやかで、もしかしたら反抗的かもしれない。
「癸子様!舞子様がいらっしゃいました」
ふぅ、第一ラウンド、舞子
「そう、迎えに行きましょうか。」
こんな表現でいいかな。
「またまた!舞子様が仰っていました。癸子様はどうせ迎えに来たがるから、それを止めてちょうだいっと。本当に以心伝心、仲がいいんですね!」
これは良かったかもしれない。
後、私と舞子は随分仲がいいみたい。
おそらく身分も似たようなものだから、これで話し方もだいたいわかる。
「まあ、舞子ったら、私の思うことをわかるのね。不思議ねぇ。」
周りからの対応を見たら、恐らく私は天然なのだろう。
「そうですね。あーあ、私もお友達が欲しいです...」
友達がいない...?
そういえば、私の所へ来る使用人みたいな人は小麦色の肌の女の子だけ。
この時代、小麦色の肌はきっと、醜い象徴だったのかぁ。
あっちの時代は小麦色でもコミュ力高ければ全然陽キャなのに...
この子は現代に行けば、モテモテだろうなぁ。
愛らしい目に、ハキハキした口調。人懐っこい人柄に、ちょっとしたくせっ毛。
この時代ではおそらく美しい分類では無いけど、それだけで人を分類はできない。
どんなに素敵だとしても、長い歴史から見ればそうでもなかったりする。
やはり人の評価基準はパッとは決められない。
なんだか少し、安心した。
「おほほ、あなたは話していて楽しくなるから、いずれ沢山の友達ができるわ」
彼女は目を丸くして、ほっぺが赤くなった。
はは、やっぱり可愛い。
「癸子様、林命婦ですよ。」
肌が白い、おそらく美しい女性がやってきた。
えっと、林命婦·····?
「舞子様!ようこそおいでくださいました!」
あ、平安時代だから、女性の名は隠すべきか。
そして、この美しい女性はあまり舞子と親密ではないから、林命婦と言うってことね。
「癸子、今日もまたお見合いなの?」
舞子は、うっとりするような、でも、幼さが残る、甘えた猫のような声だった。
「え、ええ、そうよ。」
そういえば、舞子はお見合いの日に来ている。
なぜだろう。
暇じゃないのに。
「大変ねぇ、でも、いくら嫌でも、私がいないと御相手様に会えないくらいの人見知りは変えた方がいいわ。」
へえ、私、人見知りなのか。天然かと思ったけど、以外と空気を読みすぎるのかもね。
にしても、癸子は良い友達がいるのか。いいな
「うるさいわね。だけど、あなたの言う通りだわ...。今日こそ治さなくちゃね…」
林命婦を連れてきた女房が小麦色の肌の子に耳打ちをして、2人は立ち去った。
「あーら、珍しいこと。この癸子様が性格を治すのね!」
舞子は冗談めかして、甲高い声を出した。
以外とお茶目?いや、公の場ではきっと違うのよね。
風が吹いた。
この人は信じれる...かな。
結埜香はひとつの考えを思いついた。
私はここで過ごすのに、あまりにも情報が少なすぎる。
私と同じような生活をしている舞子に頼れば、もしかしたらここに馴染みやすくなるかも。
でも、こんなことして、悪いこととか裏切られたら...
いや、仲間は必要よね。
とりあえず、私の体験をただの物語として、彼女に聞かせてみよう。
その反応をみて、また決めればいい。
「あのね、舞子...」
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