第5話 頭部


 その日の夕食。


 対面に座るコイツ(俺の怪物)は茹でジャガイモをフォークで刺して、ゆっくりと口に入れ、


「モグモグ、さすが博士。 ブイヨンの風味と塩味が絶妙です。 ジャガイモの黄色に、人参の赤にブロッコリーの緑、添えたパセリ☘のワンポイントもあって、いろどりが素朴ながら美しくて良いですね。 あ? ところで博士? 私の嫁の頭部は奇麗ですか?(●)(●)」


 俺の足元には俺のオリジナルソーセージをほおばるツギハギ猫のレイン。


「ぐんにゃあああ♪(ↀ∀ↀ)」


「レイン? 俺のソーセージはうまいか?」


「ぐにゃああぁんん♪(ↀ∀ↀ)」


 ドン!!! 


 コイツがテーブルを強く叩くとレインは俺のソーセージを咥えて逃げた……


「博士? 私の嫁の頭部は奇麗ですか?(●)(●)」


「奇麗だ。 名前はゼルダ。 かなり気が強そうだけどな?」


「ツンデレ……悪くないですね。 博士の美的センスには、この私も一目置いていますから期待しています(●)(●)」


「ゼルダの頭部は北町アロー墓地の土の中だ、深夜に取りに行ってくる」


「博士、私も一緒に行きたいです(●)(●)」


「巨体のオマエが外に出る?」


「私も花嫁造りのお手伝いをしたいです(●)(●)」


 俺の城から遠いアロー墓地で墓を掘り返すのは大変だから連れていくか…… 

 それなら素材調達の時は布で口を隠す俺同様に、コイツのフクロウの様な顔も隠した方が良いな……


 夕食を終えた後に、通路に先祖代々ある飾り物の鎧のグレートヘルムを食堂に持ってきて、


「お、重い……」


 ドンっとテーブルの上にグレートヘルムを置いて、


「オマエはこれをつけて顔を隠すんだ」


「はい(●)(●)」

 グレートヘルムをきつそうに付けた。


「さすがにグレートヘルムは威圧感があるな?」


「そうですか?」


「まるでハーデスだな」


「ハーデス? 冥府の神ですね」


 俺は窓の外を見る。

 今夜はいちだんと霧が濃い……

 好都合だ……

 



 0時にコイツに大きなシャベルを持たせて城を出る。

 30分歩き、アロー墓地にたどり着いた。


 とても広いアロー墓地だが、埋葬されたゼルダの墓を探すのは容易だった。

 鉄柵の出入り口近くに新しい菊の花が添えられていた墓がある。

 墓にランタンを近づける。 『ヒルトマン家』と彫られてあった。


「ここの土を掘れ」


「はい」


「頭部が傷つかないように優しく掘れ」


 コイツはシャベルで掘る。


 やがて白い布が見えた。


「これだ」


 俺はランタンをヒルトマン家の墓の上に置き、白い布に包まれた頭部を両手で拾い、


「これでフランケンレデイの頭部は手に入れた。 後は処女で最高の胴体」


 ゼルダの頭部を顔の前まで持ち上げて、


「俺はこのフランケンレデイを最後に怪物は二度と造らない」


 ヒルトマン家の墓の上に置いたランタンを取るために目線を向けた時……


「え?」


 ツノ?


 ヒルトマン家の墓の向こうに!

 牛の頭部型の鉄仮面を被った彫刻のような筋肉粒々の巨人が見えた!?


 え!? 


 ツルハシを俺に振り上げている!?

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