第3話 墓荒らし担当 新米警官ラルと警察犬ワトソン
翌日の朝、俺はアイツ(俺の怪物)とレイン(愛猫)の朝食を作った後、近所の墓地を歩いている。
花嫁フランケンレデイの
「今日も霧か?」
俺の子供のころから、この町には霧が異様に増えるようになった。
「今日は墓の業者が墓穴を掘ってる様子はないな……ん?」
薄い霧の向こうに、以前に俺の怪物(●)(●)の素材を盗んだ事のある墓の前で、警察帽子を深々と被った警官と白い犬が何かをしている?
俺の存在に気付いた警官が、
「あ? フランケン・シュタイン博士?」
警官の右手のリードで繋がった白い毛で両目が隠れる老いたオールドシープドックと一緒に近づいてきた。
警官は脱帽して金の天然パーマの頭を下げて、
「ラルです。 おはようございます」
警官の帽子を外して、私の城の隣の屋敷で暮らしているラルだと分かった。
「ラルは、1年前に亡くなった父さんの意思を継いで警察になったんだな? 父さんのような立派な警察官になれるように頑張れよ? でも、まさかラルが警察になれるなんてな?」
「警察に入れたのはプロメテウス署長のおかげなんです。 プロメテウス署長が推薦してくれたから警官になれたんです」
「プロメテウスが署長? まだ30歳だろ?」
「署長を知っているんですか?」
「子供のころの学校のクラスメートだ」
プロメテウス…… 生真面目な男だった。
俺と同じで先祖代々の城で暮らしてたな?
そういや、男前でかなり女にモテてっ
とか思ってたら!?
「ワン!!」
老いぼれ犬のオールドシープドックが俺に嚙みつかんばかりに吠えやがった!
「こらワトソン! フランケンシュタイン博士は絶対に墓荒らしの犯人じゃないよ! 吠えないで!」
白い毛の隙間の鋭い眼≪◉≫≪◉≫が俺を見上げている……
まさか、この老いぼれ犬は……俺が墓荒らし犯と気付いている?
鋭い眼がキラリっと光って見えた……
まずい……
「フランケンシュタイン博士! ごめんなさい! この警察犬のワトソンは引退間際なんです! きっとボケてるんです!」
俺は作り笑顔で、
「ははは、そんな感じだな?」
「ワン!! ワン!!」
間違いなくワトソンは俺が犯人だと気付いてやがる……
主が純粋なラルで良かったとしか……
「ラルは墓荒らしの捜査をしてるんだな?」
「はい。 プロメテウス署長から最近多発している墓の遺体荒らしの捜査をワトソンと一緒に任されています」
20センチのシークレットブーツの俺と同じ目の高さのラルを見つめ、
「俺の推理だが犯人は、盗まれた遺体の近親者だと思う」
「近親者?」
ラルは右手を口に持ってきて目を左右に動かしながら、
「たしかに……離れ離れになるのは辛くて……か?」
ワトソンは首を左右に振っていた。
俺はラルとヤバイ犬に背を向け、
「では、またな」
「待ってください、フランケンシュタイン博士……今日の午前11時にギロチンがあるんです」
俺は振り返り、
「最近、やたらとギロチンが多いな? 今回の処刑人の罪状は?」
「姦通罪です」
「女か? 姦通罪じゃ死刑でも仕方あるまい」
「……フランケンシュタイン博士だから言いますけど」
「なんだ?」
「ギロチンにかけられる女の人は、僕の昔からの知り合いなんです」
「その女は何歳だ?」
「僕と同じ17歳です。 名前はゼルダ。 最近、夫が死んで、彼女の不貞はその直後でした」
「美人か?」
「え?」
ラルは唇を嚙みしめて、
「……とてもきれいです」
「髪の色は? 瞳の色は?」
「金の長い髪で青い瞳……ううう」
唇が震えていたラルは泣き出し、
「僕は彼女のギロチンなんて見に行けません! フランケン・シュタイン博士が、僕の代わりに彼女に天国への祈りを捧げてくれませんか!!」
「わかった」
俺はギロチンが行われる中央広場へ歩んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます