ジェンガ

 張り詰めた空気が私と先輩の間で流れている。その中で、私の人差し指が、震えながら中の下あたりにある左端のブロックを一つ押し出す。よし、……よし。ぐらついてないからいけそう。そしてそのブロックをそのまま、上にそうっと、そーっと、音がならないように乗せる。

「よ、よかった……!」

「なんで今のがいけるんだ……」

 嫌そうな顔をしながら、先輩は下の方にある真ん中のブロックを一つ、ゆっくりと、抜いた。その段にはもう両端のブロックがなかったからタワー全体が大きく動く。ウワ、と一瞬動きを止めた先輩は、タワーの動きが止まったことを確認して、ブロックを上に乗せる。

「なんとかいけた……」

 分かりやすく安心する先輩を横目に、私は焦る。だってこのジェンガ、そろそろ倒壊しそうな気がする。それくらい、一本のブロックに支えられているところが多すぎる。ブロックを抜いても置いても離れるまで気が抜けない。悩みに悩んで、結局、さっきと同じ位置くらいにある、一本だけ残っている右端のブロックを引き抜くことにした。ブロックを掴んだだけで、なんか、嫌な予感がする。本当に動かしたら倒れそう……。ゆっくり、ゆっくり、…………。

「あ」

「あ」

 ちょうど抜き終わったところで、無惨にもタワーはポッキリ折れるかのように半分から倒れていった。

「まけた……!」

 ド派手に散らばったブロックを拾い集めながら、悔しくて声を上げる。結構良い勝負だっただけに、負けるととても悔しくて仕方がない。そんな私の様子を見て、先輩は物凄く楽しいというような笑みを浮かべている。む、むかつく……。

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