サボテン

 顧問が部室にミニサボテンを置いたことで、新しく部活内容にサボテンの世話が加わった。ますます文芸部からかけ離れた部活になっている気がする。まあ、それは置いといて、だ。俺も後輩もサボテンを育てたことがないから、どうすれば良いのか全くわからない。二人で検索をかけて、取り敢えず覚えておくことだけをメモした。

 サボテンは日当たりが良いところに置いて育てるものらしいが、直射日光を当てすぎるのは良くないらしい。そう告げると、後輩は窓から少し離れたところに鉢を置いた。

 それで、次は水やり……と思ったが、ここにはじょうろもなければコップもない。当たり前だ。仕方がないから美化委員会から借りることにした。快く貸してくれた小さなじょうろに水を入れて、部室に戻る。そういえば、水やりってどのくらいすればいいんだっけか。

「水ってどのくらいあげればいいんだっけ」

「今の時期は“鉢底から水が滲み出るほどたくさん”、らしいですよ。でも、“あげすぎると根腐れするから注意”、って書かれてる」

「じゃあ、鉢底に注意しながらやるか」


 水やりを終えて、じょうろを返し戻ってくると、後輩が物凄くウキウキした顔でサボテンを見ていた。

「そんなにサボテンを見てどうしたんだ?」

「サボテンって育てるとすっごい大きくなるらしいんですよ、だから早く大きくならないかなあって」

「そうか」

 ……凄く、言いにくいんだが。ミニサボテンは一年で一センチ程度しか成長しないらしいから、そんなに期待しても大きくなるのは俺たちが卒業した後だ。

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