第87話 悲しい言葉たち

さよなら

悲しい言葉たち

もう

あたしの海を波立たせないで



昔の傷が

思い出したように痛む時も

夕陽が

殊更に淋しげに見える時も


あの夜を思い出させる雨の音を聴く時も


遠くから

微かな声で

呼ばれた気がする、この夜も



さよなら

悲しい言葉たち


もう

あたしの許に

戻ってはこないで



強くなどなれはしないけれど

囚われてはいたくないの


消え去ることがないのなら

せめて

記憶の海の底に

沈んでいて欲しい



さよならを


どうか

悲しい言葉たちに

さよならを




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