第88話 新月
少しずつ明るくなっていく空に
浮かぶのは
白い
白い、月
夜明け前には
くっきりと見えていた輝きが
薄れていく
そして
朝陽に主役を譲り
やがて見えなくなる
まるで
あの人が
あたしの前から
ひそやかに消えていったように
空の月は
また今夜には輝く姿を
見せてくれるのだろう
けれど
あたしは
いつまでもいつまでも
新月のままなのだ
あの人にとって
見えないもののままなのだ
あの人にとって
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