12話。海竜機神リヴァイアサンで勝利する

 機神ドラグーンが空に飛び上がる。

 同時に、海竜機を構成するパーツがバラバラに弾け飛んだ。それらは磁石で引き合うようにドラグーンを追いかけてきて、ドラグーンの追加武装や追加装甲としてドッキングする。


「うぉおおおおおっ! 見参(けんざん)! 【海竜機神リヴァイアサン】!」


 大地を再び強く踏み締めた機神ドラグーンは、海竜機神リヴァイアサンへと変化していた。

 機体にみなぎる圧倒的パワー。相手が何者であろうと粉砕する超暴力の化身だ。


『やりましたぁ! 【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】成功です!』


 作戦司令室の熱狂が、通信機ごしに響いてくる。テストもろくにしていないぶっつけ本番だったからな。みんなの喜びもひとしおだ。


『はっ、ああーんっ! 海竜機を通して、ヘルメス様と……ひ、ひとつになっているのを感じます!」


 レナ王女が身悶えしながら、叫んだ。

 海竜機と彼女は、魔力供給のため魂で繋がっている。その副作用で、機体と感覚も共有されていた。

 機体同士の合体による感覚フィードバックが、レナ王女にかつてない快感をもたらしているようだ。


「ぐっ! これは予想以上にキツイな……合体を維持できるのは、せいぜい3分くらいが限度だ!」


 俺の方は、合体維持のため大量の魔力を機体に吸い取られて、全力疾走でもやらされている気分だった。


『はい! わたくしもそれ以上は……こ、壊れてしまいそうです!』

 

 グォオオオオオン!


 こちらの動きが鈍いのを見てチャンスと感じたのか、魔獣ケルベロスが突っ込んできた。

 だが、甘い。


「はぁあああああ──っ! 【氷結のドラゴン・バンカー】!」


 海竜機神リヴァイアサンが、魔獣の顎にアッパーカットを喰らわす。

 同時に、右腕に内蔵されたオリハルコンの杭が、猛スピードで魔獣の顎に叩き込まれた。


 海竜機と合体したことで、【ドラゴン・バンカー】は水属性を得ており、攻撃に氷結の追加ダメージが発生する。

 ケルベロスは天に吹っ飛ばされると同時に、その3つの頭が氷漬けになった。


『すごいですわ! これが海竜機神!?』

「これでヤツは火炎弾を使えなくなったハズだ!

一気に決めてやる! レナ王女、あったりの魔力を送ってくれ!」

『はい、ヘルメス様! わたくしのすべてを捧げます!』


 レナ王女から大量の魔力が流れてくるのを感じた。俺と彼女の心は、今、完全にひとつになっている。融合するふたりの魔力が、究極の魔法を発動させる。


「砕け散れぇええええ! 【氷海のブレス】!」


 白く輝く絶対零度のドラゴンブレスが、撃ち出された。万物を凍てつかせる猛威が、魔獣ケルベロスを粉砕する。


『て、敵の生体反応ロスト……! ヘルメス様の勝利です!』


『うわああああっ! やりましたよ、レナ総司令!』


 作戦司令部でも、敵の消滅を確認したようだ。

 【氷海のブレス】が通過した天空には、何も残らなかった。

 俺は海竜機神の合体を解いて、二機に分離する。


「レナ王女、ありがとうございます……だいぶ無理をさせてしまいましたが、大丈夫でしたか?」


 戦闘に夢中になるあまり、レナ王女に対して敬語を使っていなかった。俺は慌てて口調を変える。


『……はい。だ、大丈夫です。あまりにもヘルメス様が激しく求めてきて、身体がバラバラになってしまいそうでしたが……』


 スクリーンの小型ウィンドウに映るレナ王女は、床に手をついて荒い息を吐いていた。かなりの負担を強いてしまったみたいだ。


「すみません。【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】は、なるべく使わない方がいいですね」

『い、いえ! 海竜機を通してヘルメス様を感じられて……ヘルメス様のお力になれて、とてもうれしかったです。また、わたくしと合体してください!』

「そ、そうですか……ありがとうございます」


 潤んだ瞳で興奮気味に見つめられて、俺はドギマギしてしまった。レナ王女はやっぱり、かわいいな。

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