【機神の錬金術師】〜「無能のあんたが憧れの錬金術師なわけない!」と俺を振った幼馴染の聖女。俺が結婚したかった人だと知り死ぬほど後悔してるがもう遅い。俺の錬金術に惚れ込んだ王女と偽装婚約しちゃったので
6話。幼馴染、自分はヘルメスの婚約者だと自慢しまくる
6話。幼馴染、自分はヘルメスの婚約者だと自慢しまくる
「無能だなんて……! ロイ様に対して失礼ですよ。わたくしにとって、ロイ様以上のパートナーはいないから、お誘いしたのです。そもそもティア様に何か関係あるのでしょうか?」
「ぐっ……!?」
こともなげに告げるレナ王女に、ティアは言葉に詰まった。
「……ティアも、もしかして新しいパーティーメンバーを探しに冒険者ギルドに来たのか?」
「そうよ。あんたなんかより、よっぽど有能なAランク冒険者を雇うの! なんてたって私は、偉大なヘルメス様の婚約者なんだからね。仲間も超一流を揃えないと」
ティアは勝ち誇ったように胸を張った。
「そうか。俺はレナ王女とコンビを組むことにしたんだ。お互いにがんばっていこう」
レナ王女は俺の正体を知っている。
彼女と組めば悪目立ちはするだろうが、機神ドラグーンをこれからどんどん強化しようと考えている俺にとって、都合が良い面が多い。
冷静に考えれば、ずっと【万年Eランク】のロイで通してきた訳だし。レナ王女と組んだところで、俺の正体がバレる危険は低いだろう。
「ああっ! うれしいですわ、ロイ様! これでわたくしたちは生涯を共に歩むパートナーになれたのですね!?」
「いや、冒険者としての意味であって、婚約した訳じゃないですからね!?」
レナ王女にしなだれかかれて、俺は慌てて離れた。彼女の鎧は胸の部分が大きく開いており、露出した膨らみがちょうど腕に当たってしまったのだ。
誰だ、こんなけしからん鎧をデザインした奴は!? ……って、俺か。魔力循環効率を高めるためには、このデザインにする必要性があったんだよな。
「はぁ!? ロイ、あんた何、デレデレしているのよ! ロイの癖に生意気よ!」
指を突きつけて、ティアが怒鳴り散らす。
「はぁ……?」
言っている意味がわからなかった。
「ティアとは別れたんだし。俺が誰と仲良くしようと、干渉されるいわれは無いハズだけど?」
「ぐっ!? そ、そうかも知れないけど……っ! あんたが、私以外の女の子にデレデレしていると、なんかムカつくのよ!?」
「ティア様、ご自分が無茶苦茶なことを言っている自覚がありますか? あなたはロイ様を一方的に追い出したのでしょう?」
レナ王女の指摘に、ティアは顔を引きつらせた。
「ぐぅううう……!? そ、そうよ! 私のパートナーは【機神の錬金術師】ヘルメス様よ! ふんッ! どう? うらやましいでしょう!? レナ王女、ちょっとかわいくてSランク冒険者だからって、いい気になっていられるのも今のうちよ!」
「……いい気になる?」
レナ王女は思い当たる節が無いようで、小首を傾げた。
「ヘルメス様の協力を得られれば、私はトントン拍子で、Sランク冒険者になれるわ! この国最高の冒険者として、聖女ティアの名声はもっともっと高まるのよ!」
ティアはAランク冒険者だ。
格上のレナ王女に対抗心を燃やしているようだった。
「ぷぷッ! でも、まさかレナ王女の男の趣味がこんなに悪いなんて、思わなかったわ。そんな無能男を相棒に選ぶなんてね。ふんッ! 私の婚約者ヘルメス様とは、比べるべくもないゴミね」
「……そ、そうか」
俺たちを見下すように笑うティアに、脱力してしまう。
「言っておくけど、私はヘルメス様にすごく愛されているんだからね! この前、私を襲ったドラゴンを一撃で倒してくれて、ものすごくカッコ良かったんだから!」
ティアは自慢気に胸をそらした。
そのヘルメスから婚約破棄される運命にあるとは、思ってもいないようだ。
「……ティア様、哀れなお方。ロイ様、行きましょう。これからのことを話し合わないと」
「そうですね」
レナ王女に促されて、俺たちは立ち去ることにした。
さすがに、これ以上、ティアと一緒にいるのはいたたまれない。
「哀れですって!? くっ、な、なによ、上品ぶって! 放蕩王女なんて言われているクセに! 私の方が、あんたたちなんかより、断然、上なのよ! これからヘルメス様と幸せになってやるんだから!」
負け惜しみのようなティアの絶叫が、背後から響いた。
ティアがヘルメスと初顔合わせをする予定の日は、2日後に迫っていた。
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