第6話 なにする?
「さて。時間が惜しい。何をするかパパッと決めよう」
「じゃ、定番のゲーセン行く?」
「えーでも今日、そんなにお金持って来ていないし」
「んー皆いくらあるの?」
財布の中身を確認した結果、葛城6500円。黒川3500円。花岡520円。
「紅葉。なんで小銭しかないのよ。ナメてんの?」
「だって昨日いい感じの小物を見つけて買っちゃった後だもん。タイミング悪すぎだよ」
「まぁ、無いものはしょうがない。おい。子豚。あんたいくら持っているのよ」
来た。俺を連れ出したと言うことは少なくとも俺の財布をアテにしていたことが少なからずあったのではなかろうか。
俺は葛城に無理やり財布を取られて中身を確認される。
「げっ! 財布の中身パンパンだと思ったらほとんどレシートやポイントカードばっかりじゃん。何よ。このゴミ箱」
「いや、買い物するとついつい財布にとりあえず入れちゃう癖があっていつの間にかそんな状態に……」
「有効期限切れたポイントカードなんていらないだろ。レシートだって受け取るならそれなりの管理しろよ。できなければ受け取るな」
「ご、ごもっともです」
葛城は何かの火が付いたのか、不要なものを分けてゴミ箱に捨てた。
俺の財布は見違えたようにげっそりと細くなった。
「ほら。身体だけじゃなくて財布もパンパンなら現金でパンパンにしろ」
「はい。ありがとうございます」
「で? 結局いくらあったの?」と黒川は横から聞く。
「こいつ、現金ない」
「え?」
「商品券や割引券。後、マネーカードとかしかないよ」
「はい。現金は基本入れていないです。あれば使っちゃうので限られた店で使えるものを入れています。基本、その店しか使えないようにしています」
現金に換算すると二万円くらいある。だが、それも使える店が限られるので自由に使える金とは言えない。
「なんだよ。そのパンパンの財布に期待していたのに意味ないじゃない。マジでこの子豚お荷物じゃない」
ガックリと葛城は落ち込む。
「まぁ、私たちだけで一万円はあるわけだし、なんとか遊ぼうと思えば遊べるよ」
「紅葉。あんた小銭しかない分際で私たちのお金アテにしている?」
「い、いやだなぁ。そんなことないよ。決して」
あるな。と俺は察した。
「極力お金を使わない方向で考えればいいよ」
うーんと三人は何をするか頭を悩ませる。そこまでして遊びたいのか。
まぁ、今更学校に戻れないし、帰ったとしても親になんて言われるか分からない。
と、なれば何か時間を潰す方法を考えなければならないのだろう。
「公園行く?」と、花岡は提案する。
「公園って小学生じゃないんだから」
「ハンバーガーショップは? あそこなら何時間もいけるし」
「ここのところ連日行っていない? せっかくのサボりで似たようなことをしても新鮮味がないというか」
「なら雅はどこがいいの?」
「私は……ゲーセン?」
「だからお金ないんだってば」
「だよね」
「おい。子豚。あんたも黙ってばかりじゃなくて何か意見を言いなさいよ。皆、必死に考えているんだから」
ギロリと葛城に睨まれる。
「俺は家に帰りたいかな。ゲームや漫画もあるしいくらでも時間を潰せるから」
「あんた、またそんなことばかり言って!」
「あ、いいかも。それ」
「紅葉。いいって何が?」
「子豚ちゃん。あんた、今の時間に家に帰って親とかに何か言われる心配はないの?」
「うちは共働きですし、夜も遅いので今帰ったとしても誰もいないのでサボりの心配はないですよ」
そう言うと三人は顔を合わせて何かを察したように頷いた。
「よし。なら決まりだね」
「適当にお菓子やジュース買っていこうか」
「そうだね。何をするか決まったわけだし」
三人はニヤニヤと浮かれながら話す。
「え? あの、決まったって何が?」
「鈍いな。今から私たちはあんたの家に行くって言っているのよ」
「え? 俺の家に来るんですか?」
「だってお金使わずに時間潰せるんでしょ? うってつけじゃない」
「勝手に決められても困りますよ」
「子豚ちゃん。あなたに断る権利なんて?」
「あ、ありません」
「よし。じゃ、決まり。いいって」
「やった。行こう!」
何故か三人は強制的に俺の家に来ることになってしまった。
女子が入ったことがない俺の部屋が一気に華やかになる予感がした。
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