第3話 マッサージ


「わ、わわわ!」


 移動教室の為、廊下を歩いていていた俺は何かに引き寄せられるようにとある部屋に引っ張られた。

 そこは保健室だった。


「はーい。騒がないの。子豚ちゃん。騒ぎ立てたらプチ殺すからね」


 俺の腕を引いたのは花岡紅葉はなおかもみじである。

 あざと可愛い彼女は好意を寄せる男が多いが、付き合うとしたら無いと言われている。

 その理由は毒舌だ。笑顔で吐くその毒舌は心が折れる人が絶えないという。


「花岡……さん? 何?」


「シー。静かに。ちゃっちゃと始めようか」


「始めるってなに? 早く行かないと授業に遅れるよ」


「授業なんてサボっちゃえばいいの。それより」


 花岡さんはベッドのカーテンを開けた。

 一体何を始めようと言うのだろうか。

 幸い、保険の先生は不在。今は花岡さんと二人きりだ。

 花岡さんはベッドにうつ伏せで転がり込んだ。


「さぁ、早くお願い」


「お願いって何を?」


「はぁ? マッサージに決まっているじゃない。全身が凝っているのよ。揉んで!」


「マッサージですか?」


 目的は単にマッサージだ。痛い目に逢うと思ったが、美少女ギャルに触れていいのだろうか。


「早く! 体育で筋肉痛なのよ」


「わ、分かりました。では、失礼します」


 俺は花岡のふくらはぎを揉んだ。


「あー。気持ちいい。もっと強く」


「こうですか?」


 ギュッと俺は力を入れる。


「あーいい。子豚ちゃん。マッサージ上手いのね。私の専属マッサージ師にしてあげてもいいわよ」


「あ、ありがとうございます」


 おそらく冗談で言っているのだろうが、俺は本気で言われたら立候補するかもしれない。

 そうこう言っている間に次の授業を知らせるチャイムが鳴ってしまう。


「あ、花岡さん。授業始まったよ?」


「別に一限くらいどおってことないわよ。それより次は腰辺りをお願い」


 授業をサボるのは確定してしまう。

 だが、美少女ギャルに触れられるのであれば一限や二限なんて大したことない。


「んー。なんか違うな。なんか力入っていなくない?」


「すみません。身長が低いせいでこの体制だと力が入りにくくて」


「ドチビ。なら私の上に乗ってよ。それなら力入るでしょ」


「上にって馬乗りのような形になるのですが」


「良いって。早く乗って」


「はい。では」


 俺はうつ伏せの花岡の上に乗った。

 距離はかなり近い。そのまま俺は体重をかけながら親指を立てて腰辺りをマッサージする。


「あ! ンンン。いい。気持ちいい。一気に快感かも。筋肉痛がほぐれていく感じする」


「そうですか。ついでに肩の方もやりますね」


 俺は腕を後ろから引っ張りながら肩をほぐす。

 花岡は全身の力が抜けきっており、その身は俺に委ねている状態だった。


「あー。良い。子豚の割には良い仕事するじゃない。もっとやって」


「はい」


 それから俺は花岡の身体を触り尽くして全身のマッサージをする。

 細い手足の割にカッチリした体格なので運動神経は良さそうだ。


「花岡さん。何かスポーツやっていました?」


「んー小学生の時は空手やっていたよ。可愛くないから辞めちゃったけど」


「へ、へー。じゃ、強いんですか?」


「どうだろうね。脅しくらいの力は残っているよ。あんたも脅してやろうか」


「辞めてくださいよ。脅される前に下手に出ます」


「あははは。それはいいわ。おい。お尻揉んで」


「お、お尻?」


「お尻も凝っているんだって。頼むよ」


「わ、分かりました」


 痴漢のように俺は花岡のお尻を揉みまくった。

 だが、これは痴漢ではない。本人の許可を得ての行為だ。

 女子高生のお尻をこんなに簡単に触れるなんてギャルに目をつけられて良かったと思う。


「あんた、良い召使いだわ。今度から定期的に頼もうかな。マジで」


 花岡は俺を使って優位に立っている様子だが、そのむっちりした身体を触れるのであればいつでも歓迎だ。

 今は虐められている風を装ってご褒美を堪能しようと心に決めた。

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