第12話 アメリの変化
「なにこれ……。王宮の中に大きな家が一軒あるみたいな広さじゃん……」
アメリに案内された部屋は、今まで私がブラークメリル王国のボロ屋に住んでいたときの、ざっと五倍以上の広さがありそうだ。
まずドアを潜ると再びドアがあった……。
おそらく警備的な問題で厳重にされているのだろう。
この時点で、ロブリー陛下の王室とまるで仕組みが一緒だ。
続いて二つめのドアを開けると、部屋でボール遊びが余裕でできてしまうほどの広々とした空間。
天井までも高さがあるし、お洒落なシャンデリアまで吊るされている。
ソファーやテーブル、更に本棚まで……。
部屋の中にも更にドアがいくつもあり、用を足す専用部屋、水が出てくる水浴び部屋、脱衣所、大きなベッドがどーんと設置された寝室、更に応接室のようなところまである。
さすがに豪華すぎやしないか?
「アメリもこんなに広い部屋を……?」
「いえ、私はこの半分くらいですね。はっきり言って待遇が良すぎて、最初は断ってしまいましたよ」
「私も断ろうかな。さすがにこんなに豪華なところに居座るほどの仕事はできないもん」
「私も同じ気持ちでジオン様に物申しました。しかし、『ブラークメリル王国の常識は捨てろ、二人の仕事内容とこの国の待遇を考慮すればこれが打倒だ』と言われてしまいまして」
話を詳しく聞いてみたところ、ジオン様がアメリの部屋を決めたらしい。
これは私はアメリに感謝するべきかもしれないな。
密かにそう思っていたが、口にはしなかった。
二人の動向はそっと見守りたいから。
「さて、さっそくですが、水浴びをしていただいてからお着替えをしていただきます。しっかりとお手伝いさせていただきますので」
「水浴びも!?」
「はい……、これもお世話係の特権……げほっげほっ……じゃなくて、仕事ですよ」
アメリが少し嫌らしい顔になっていくのを見逃さなかった。
「水浴びや着替えは一人でやらせてちょうだい! 今までだって私一人でなんでもやってたから!」
「はぁ……、ざんねんです」
アメリがちょっとだけ怖くなってきた。
だが、ホワイトラブリー王国へ向かっている最中のアメリはそんな素振りも全くなく、笑うことすらほとんどなかったのだ。
きっと、この国へきて余裕が生まれて本性が出せるようになったのだろう。
アメリとは今後とも仲良くしていきたいし、どんな趣味があっても突き放したりはしないよ?
ひとまず、アメリが元気になってくれたことを、アメリを元気にしてくれたホワイトラブリー王国に感謝したい。
「初日くらいは一緒に寝ますか? もしかしたらイデア様が寂しくなってしまったり」
「遠慮しとく……」
大丈夫かな……。
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