第6話 【ざまぁサイド】経費削減と増税の秘策

「皆の者よ。緊急会議に集まってもらってすまないが、こうしている間も労働時間を使っていて時間がもったいない。結論だけ述べさせてもらう」


 ロブリー国王の部下、大臣といった国の重要機関の者たちを王宮の応接室へ呼び出した。

 全員が集合し、一息着く暇もなく、ロブリーは本題へと進めた。


「まず、兼ねてから不要だった聖女イデアはクビにした。これは皆の者が反対してはいたが、やはり不要だと判断したため理解いただきたい」


 早速大臣たちからのどよめきの声が集まった。

 聖女イデアという偉大な存在で国の要(かなめ)ともなっていた重要人物を解雇などあってはならない。

 ロブリー以外全員はそう考えていたからだ。


 当然このような一大事を黙って聞いているだけにはいかない。

 一人の大臣がロブリーに尋ねた。


「お言葉ですが陛下よ、イデア様をクビにした理由をハッキリと教えてください」

「……時間がもったいないと言っているのに……! 聖女など必要がない。現に今も結界がなくともモンスターは一体も現れないだろう? つまり、聖女の結界に金をかけているだけ無駄だったということだ」

「しかし──!」


 大臣たちが反論しようとしたが、ロブリーは躊躇いもせずに主張が続く。


「それにホワイトラブリー王国の国王が、王金貨五十枚で買いたいと頼まれていた。私はイデアの無職になることも考え、他国へ恩を売っておくことも踏まえた。以上の観点からイデアは販売させてもらった」

「なんと愚かな……」

「今のは、誰だ? 反論をしてきたものは……?」


 一瞬で静かになる。

 次のリストラは自分になるのではないかと恐れていたため、誰もロブリーに強く反抗することができなかったのだ。


「王金貨に関してはいずれ送られてくるだろう。だが、国を運営するにあたってはまだまだ余裕などない。今後、さらなる経費削減をし、増税に踏み切ることにした」

「へ……、陛下。大変申し上げにくいのですが、無理のない経費削減ならば賛成です。しかし、増税はどうかと……。前回引き上げた増税により民衆たちからも不満の声が……。実際に苦しんでいる家庭もちらほらと……」

「それはしっかりと稼げていない、働けていない者たちに責任がある。君の意見が却下だ」


 大臣たちの中でも不満がつのる。

 自分たちも限界まで働き詰めの毎日で年俸も下げられてしまった。

 だからこそ、民衆たちの気持ちも痛いほど理解していたのだ。


「では、どのような政策を?」

「まずは経費削減の点からだ。そもそも食べ物や雑貨、その他娯楽において購入したりする行為が自由だからこそ経費削減ができないのだと私は思っている。はっきり言って、国だけでなく民間人も経費削減する意欲がなければ私の政策だってご理解いただけないだろう。従って、今後物品の売買に対して同額分は納税してもらう!」


 民間人にも経費削減をする意欲を芽生えさせ、さらに税収が見込める政策を閃いたロブリーは、この閃きが天才だと思っていた。

 これならばあらゆる分野から税が入ってくるし、より節約しようという意欲に芽生えることだろうと考えていたのだ。


「陛下は国の流れを止めるつもりですか!?」

「は!?」

「ただでさえ民衆は苦しんでいる状態だと言ったではありませんか。追い討ちをかけるような税を導入してしまえば、路頭に迷う者が続出し、最終的には税収が見込めなくなるでしょう。それだけではなく、税が高すぎて他国への移民者も続出する可能性すらあります!」


 一人の大臣の発言に対して拍手がおこった。

 だが、ただ一人ロブリーだけは納得がいかず、不機嫌になっていく。


「黙れと言っただろう!? 私の完璧な政策に理解できぬのも仕方ないかもしれないが、これは決定事項だ。変更の余地もない。そのかわり、必ずや素晴らしい結果としてよりよき明日を迎えられる国になると信じている」


 ロブリーの強引な提言によって、大臣たちはこれ以上反論すら許されなかった。

 この政策はすぐに反映され、早速民衆たちから不満の声が続出する形となったのだ。



 ブラークメリル王国、王都郊外のにある小さな村。

 主にこの集落では、人々は魔道具の研究をし、開発と販売によって生活をしている。


 今回のロブリー国王の無茶な増税を知らされ、ここにいる集落は崩壊の危機になっていた。


「魔道具は高価な物だ……。それに対して同額の税が課せられてしまうということは、二つ買うことと同じではないか。国はバカなのか!?」

「魔道具を作る材料ですら今までの倍額を負担することになってしまう……。つまり利益を得るためには販売価格を上げる必要がある……」

「高額になった魔道具が更に倍の税……。購入者も激減し、更に販売価格を上げる負の連鎖か。やってられないな!」


 魔道具の研究している組合たちは怒りをあらわにしていた。

 故郷を捨てるのは惜しいが、このままでは全員生きていけないと真っ先に気がついたのがこの集落であった。


「すぐ近くにホワイトラブリー王国がある。そこまでなんとか移動できれば、移民を受け入れてくれるかもしれない」

「しかし……そう簡単にいくかどうか」

「なぁに、俺たちの魔道具開発においては向こうの陛下も高く評価してくれていた。だったら、あっちで開発していけば向こうの国にとっても好都合になるだろう?」


 こうして魔道具を開発していた集落はこの日、移民計画が遂行されて数日後には廃墟の村となった。


 国にとって、この集落で開発されていた魔道具の存在は甚大なものだったのだ。

 魔道具を求めて他国からの購入者だったりしていたため、観光や輸出にも大きく貢献していた。


 ロブリーが提言した政策によって、早速ひとつ、国にとって大きな存在が消えてしまったのだ。

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