第12話 卒業式

    (中学校の卒業式の後、校門前で)


咲「お別れだね、やみこ」


やみこ「……お別れっていっても、遠くに行くわけじゃないし」


咲「そうなんだけど、もう高校からは一緒の学校じゃないって思ったら寂しい気がして。――ごめん。なんか涙が出てきちゃった」


やみこ「咲の学校、県内一の進学校なんでしょ。がんばってね……」


咲「うん。やみこの方こそ、高校にいってもずっと変わらないでいてね」


やみこ「ずっと変わらないで……そ、そんな……」


咲「ど、どうしたの、やみこ」


やみこ「私、高校では変わろうと思っていたから……」


咲「えっ?」


やみこ「私、いまの自分がキラい。いまのままだと友だちもできないし、どうせ暗い未来しか待ってない。だから変わらなくちゃいけない……。でも咲に『変わらないで』って言われたら、もうどうすればいいか分からない。変わりたい。変われない。どうしようどうしよう」


咲「お、落ち着いてやみこ! そんなに深い意味で言ったんじゃないから。やみこが変わりたいなら、それでいいと思うよ」


やみこ「……本当に?」


咲「うん。やみこが変わりたいっていうなら、私、応援するから!」


やみこ「咲……」


咲「だから、元気だして、やみこ」


やみこ「……うん。じゃあ変わる。ぜったい変わる。高校に行ったら私は変わる。もう私は昔のやみこじゃない。じゃあ帰る」


咲「あ、待ってやみこ! 私も帰るから!」

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