【第六章】短い人生の長い一瞬

「総理、本当に適道診断を撤廃するおつもりですか?」


「適道診断自体は撤廃しないよ。

あれのおかげで犯罪が減少したのは事実だからね。

だが、適道診断による職業の選定は撤廃する。

僕たちには、なりたい自分になるための努力をする権利があるはずだ。

夢を持つのは、僕たちに与えられた特権だよ。

それより、メトロチルドレンの方はどうなってる?」


「そちらの方は順調に進んでいます。

廃線になった全ての地下鉄の駅を調べ、

そこで暮らしていた子供たちの国営の施設への受け入れはほぼ完了しています」


「それなら良かった。引き続き頼むよ」


「はい、かしこまりました。

ところで、総理はメトロチルドレンが本当に実在していることを

最初から知っていたのですか?

私はてっきり都市伝説とばかり思っていたので」


「僕も昔は単なる都市伝説だと思っていたよ。

だがある日、一人の少女と出会ったんだ」




不死になった僕たちにも、命の期限はある。

 

それは未来のことを考えた僕たちが自らに課した寿命だ。

 

僕たちが自らの命を全うできるのは、六五歳の誕生日まで。

 

それが長いのか短いのかは分からない。

 

きっとその長さは、僕たちが六五年という年月を

どう過ごすかによって変わってくるのだろう。

 



楽しい時だって、

辛い時だって、

嬉しい時だって、

悲しい時だって、

喜ばしい時だって、

苦しい時だって、

僕たちは生きていかなければならない。




僕たちには、その一瞬一瞬を目一杯噛みしめて生きていく権利がある。

 

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No.43【短編】メトロチルドレン 鉄生 裕 @yu_tetuki

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