言葉が通じてる?

 次の日は、土曜日だった。私は平日のように起きて、小学校に行った。


 なぜかと言うと、この頃は、まだ週休二日制が無かったから。

 その日は、三時間目まで授業を受けて、さっさと教科書やノートをランドセルの中にしまった。



 私は、はーちゃんとノブちゃんとは一緒に帰れなかった。

 はーちゃんは、ニワトリ当番でしばらく小学校に居なきゃいけなかった。

 あと、ノブちゃんは、少し遠くのピアノ教室に行くから、ノブちゃんのお母さんの車に乗ってかなくちゃいけなかった。


 そこで、私は同じ地区に住むヒデちゃんと一緒に帰ることにした。

 二人で教室を出た時、ヒデちゃんは私に話しかけた。


「なあなあ。今日の帰りに、川辺のサクラの木に寄らないか? また、あのウサギが居るかもしれないし」


「うん、いいよ!」


 そして、私たちは急いで小学校を飛び出した。




 サクラの木のところに着いた時、まず私たちはサクラ色のウサギを探して、歩き回った。

 しかし、その必要は無かった。


「キューイ」


 探し回ったらすぐに、ヒデちゃんの足元からそんな甲高い声がして、ヒデちゃんと私は驚いて、サクラの木の下を見た。

 そこには、こちらを見上げているウサギが居た。


「なーんだ。すぐ下に居たのかよ。本当にビックリしたぜ」


「私もっ。……それにしても、このウサギさん、カワイイ鳴き声するんだね」


「そうだな」


 それから、私たちは芝生しばふの上に座って、ウサギに色々と話しかけた。


「ねえ、ウサギさん。アナタはあっちの山に住んでいるの?」


 と、私は少し遠くの山を指した。


「キュー、キュー」


 すると、ウサギはそんな鳴き声を出して、小さく首を横に振った。

 それを見て、私たちはさらに驚いた。小学校のウサギも、時々見る野生のウサギもいくら話しかけても、そんなことは絶対しないから。


「なあ、お前。もしかして、俺らの言葉が分かるのか?」


「キュイ、キュイ」


 今度は、ウサギはそんな鳴き声を出して、大きく首を縦に振った。 まるで、「そうだよ」と言っているように、私には聞こえた。

 どうやら、本当に私たちの言葉が分かるようだ。これには、さっきよりも驚いて、腰を抜かしそうになった。


「……で。それじゃあ、山じゃなかったら、どこに住んでるの?」


 サクラ色のウサギは、慣れた足取りでサクラの木に登った。


「キュキュイッ!」


 ウサギはサクラの木の太い幹の上で、軽く数回ジャンプしながら声を出した。


 ウサギの言動を見て、すぐに私とヒデちゃんは、ウサギがサクラの木に住んでいることが分かった。


 それから、数時間が経った。

 日が暮れる前に、私たちはまたウサギに別れの挨拶あいさつをして、家に帰った。

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