第20話 秘密の話
バタンと扉が閉まり、騎士団に呼ばれた団長とディカルト殿下が退室して廊下を歩いて行く音を確認すると、ザックは陛下に恐る恐る歩み寄る。
「まだ,お前は俺に報告し足りないことがあるだろう。」
陛下にギロリと見られたら、脇から変な汗が出てくる。
「いずれは報告するつもりでしたよ。まさかこんな事態になるとは思いませんでしたけど。」
なんでこうなるかなぁ〜
ザックは心の中で小さなため息を吐く。
さて,なにから報告しようか。
「まずは俺がザックにダズベル王国に行ってもらっていた件は上手くいったか?」
陛下も少し余裕がない顔をしている。
彼とは乳兄弟だから大体は考えていることはわかる。
弱冠20歳で皇太子継承騒動を鎮静化させ、国政を安定させた頭のキレる彼にもこの事態は予想外だったんだろう。
「そうですね。上手くいきましたよ。まず陛下との打ち合わせ通りに、ダズベル王国の外交の顔であるノッカード侯爵に我が国の王弟であるディカルト殿下とあちらの第三皇女レナリーナ姫と歳の頃合いもちょうど良いし、お互いの国の友好を強固なものにするためにも、婚約の話を考えてもらえないかと提案をしました。」
そう。
陛下と俺はディカルト殿下の女性不信を心配していた。
だから、無理矢理にでも婚約でもしたら、女性不信も変わるのではないかと思い、この話をディカルト殿下には内緒で進めていた。
継母の連続殺人未遂は、まだ少年であったディカルト殿下にはあまりにも過酷過ぎる体験だったんだろう。
ひどいトラウマになっている。
特に年上の女性に対しては拒否をすることはないが、話しをするだけで青い顔をする。
女性に全く興味がないわけではなかったようだがレナ嬢への初恋を拗らせ、騎士団の仕事を理由に舞踏会にもほとんど出席しない。
(世の貴族女性は虎視眈々とディカルト殿下を狙っているのにも関わらず…)
騎士団の筋肉マッチョ達に囲まれる楽しい生活を過ごされる毎日。
だからあらぬ噂まで立てられ、俺にまで被害が及ぶ始末。
「ダズベル王国側の反応はどうだった?」
「悪くはなかったですね。あちらは第一皇女はダズベル王国の筆頭公爵に御降嫁されているので、ディカルト殿下と同じ歳の第二皇女か、2歳年下の第三皇女を隣国と婚約させるのは、向こうにとってもいい話だったみたいです。」
「そうか。そうか。それは良かった。このまま上手くいけばディルの初恋は成就しそうだな。ディルのあの様子ではまだこの話は秘密にしなければいけないな。しかしなぁ〜。ディルの初恋がレナリーナ姫だったとはなぁ。」
ホッとした表情を一瞬したが、また眉間に皺を寄せる。
「そうですよ。俺もまさか6年前の命の恩人がレナリーナ姫だったとは思いもしませんでしたよ。それで今回、また姫がディカルト殿下の前に現れたのはなにかありそうなんですよ。」
「どう言うことだ?」
陛下が怪訝な表情になる。
「まず、ノッカード侯爵の話によると、レナリーナ姫は今は第一皇女の嫁ぎ先である公爵家の領地に行っていることになっているんです。でも実際は魔女に協力をしてもらい、身分を隠しラストリアにいる。姫の来訪の目的は6年前の絵を仕上げることらしいのですが、周囲にラストリアに来ることを秘密にしてまで来ている理由がわからない。」
「絵とはディルが部屋に飾っている、あの半分になっている絵か?」
「そうです。あの絵ですよ。レナリーナ姫はあの絵を今回仕上げたいそうです。それを仕上げると帰国するらしいです。滞在期間は1ヶ月もないらしく日程に余裕もない、周囲には秘密のそんな旅を魔女が2人も全面的に協力しているんですよ。」
「魔女が2人も?アドレの魔女だけではないのか?」
「恐らく、ダズベル王国の王都ベルにいる魔女も協力者です。そして、我々のこの婚約話にもすでに気づいていました。」
そう。アドレさんは2人の婚約話にあの時点で気づいていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます