田舎-1
改札を出て段差を降りると、古びた掲示板が目に付いた。褪せた塗料がところどころ剥げているし、庇なんて細い三角の割れ目が入ってしまっている。ふと上の方を何かが過ぎったのが見えた。可憐な鳥だった。メジロだろうか。やがてメジロはこちらに気付いたのか、庇から身を乗り出して覗き込むと、
「よく来てくれたなぁ嬢ちゃん。祝、第一観光客」
喋った。真くんの方を見れば、愕然とした顔をしている。
「まーじで人来なくてさぁ、オレの自慢のガイドトークもサビ付いちまうところだったぜ。ま、その分オレの鼻歌はずっとサビで盛り上がってたんだけどね笑」
真くんの眉間がかすかに震えた。学生帽に手を添えると人差し指でとん、とん、と叩いている。ものすごく警戒しているように見えた。真くんは一つ深呼吸をすると「お前、何者だ」と小鳥に尋ねる。だけど彼はそれには答えず、
「嬢ちゃん、とりあえず町長のとこまで案内してやるからな。隣に宿もあるから今のうちにチェックインしておくといいぜ」
「ねえ、鳥さん」
「ん、どうかしたかい?」
「私の隣にいる男の子、見える?」
「……まぁ、見えるけどさぁ。何かヤバい感じするぜ、そいつ。祓うのも難しいんじゃないかなぁ」
――ヤバい? 祓う?
私は真くんの方を見やった。真くんはまたびっくりしたような顔をしている。
「そいつ、■■■から来た“詩”だろ? すげー
小鳥さんはそのまま飛び立ってしまった。私は置いてかれないように真くんの手を掴んで必死に走る。息が切れて頭が痛くなってきたところで一軒の家が見えた。そのお家はとても大きな影を地面に落としていて、
「おや、来客とは珍しいな。
家が喋った。入り口がまるで本当の口のように蠢いて、確かにそこから音が伝わってくるのだ。咄嗟に私は真くんを背後に庇った。だって真くん今まで一度も見たことがないくらい青ざめた顔をしていたから。
「観光客。電車で来てくれたんだぜ。町長、とりあえずこの子に立ち入りの許可あげてくれよ」
「観光客、なあ。まあいいんじゃけど。その、安全面とかは気を付けるんだぞ?」
「大丈夫っすよ。必ず生きて帰してみせるからな。オレの自慢のくちばしに懸けて誓うぜ? 何なら後ろに憑いてるの浄化する方法も探してやるからさ、」
何の話をしているのか分からなかった。でも、真くんは“祓”ったり“浄化”したりしなきゃいけないような悪いお化けじゃないんだよと伝えようとして私は、
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