第4章 マルクス主義の波及

第17話 伝統の破壊

 マルクス主義の用語の一つに「ヘゲモニー」と言う言葉があります。これは一般には覇権という意味で用いられますが、1920年代から 30年代におけるイタリアのマルクス主義者 アントニオ・グラムシとその後継者たちは、独自の概念として使用しました。

 グラムシによれば、主流派が持つ知的、道徳的な圧力で支配者階級を支配していると主張しました。具体的には、社会習慣や伝統的な行動となりますが、社会習慣や伝統的な行動は、被支配者が無自覚に受け入れているものにすぎない。しかし、そうした伝統的な行動には現体制を支えていることから革命の障害となっているとの考えです。このグラシムの盟友とも言うべきトリアッティがイタリアにはイタリアの現状に則した革命があっても良いと主張して「ユーロコミュニズム」と呼ばれる動きに発展しました。

 また、この時期に「西欧的マルクス主義」の代表者に位置づけられるハンガリーのルカーチ・ジェルジュは、経済的な条件が成熟するならば、革命が起きるとの考えを否定しました。資本主義が発達すれば労働運動は起きるが、革命には至らないと指摘しました。

 マルクスの考えでは、資本主義が発展すれば行き詰まり、革命が起きて社会主義となるとされ、社会主義は歴史的必然のはずですので、この考えはマルクス主義の否定となります。また、資本主義が発展しても資本主義が抱えている問題が解消され、より健全な社会になるならば、何も問題はないと思いますが、マルクス主義の人々の発想は、革命を成し遂げなければならないとしか考えないようです。

 これは手段が目的になっていると言えます。マルクス主義においては資本主義社会のもとでは,労働者が生産過程で創出する剰余価値を資本家が搾取し、労働者は隷属状態となり、すべての労働者を窮乏化(きゅうぼうか)することになるはずでしたが、資本主義が発展したならば、労働者は豊かになりました。

 マルクス主義が労働者の権利を守り、労働条件の改善や労働者の生活向上を目的とするのであれば、革命を起こさなくても目的は達成されたと言えます。マルクスの考えでは、社会活動の根底にあるのは経済活動であることから資本主義社会体制を変えなればならないことから必然的に革命を起こす必要があるはずでした。

 しかし、ポストマルクス主義とべき人々は、資本主義が発達して労働運動は起きたが革命が起きなかった理由を考えるのではなく、何としても革命を起こさなければならないと考え、革命が起きないのは、労働者が伝統的な価値観に染まっているからであり、この考えがリベラルと呼ばれる人々の根底にある考えです。

 ここでは政治思想の問題点を検証することが目的ではなく、心霊世界の観点から見た考察が目的であることから心霊世界から見た考察に移ります。労働者の権利を守り、労働条件の改善や労働者の生活向上を目的ならば、革命は手段であり、目的ではありませんが、革命を目的にしている段階で、魔界の者たちの暗躍を疑われます。

 過去の経験から言えることは、魔界の者たちが現世に生きる者を操る代表的な手口は、現世に生きる者の不満や怒りを煽ることであり、不満や怒りを煽ることで現世に生きる者の心を支配します。また、魔界の者たちが好むのは混乱と破壊であることを考えるならば、ポストマルクス主義に心酔している人々は、魔界の者たちに翻弄されている可能性が高いと思われます。

 生前に社会主義に傾倒していた方の多くが不成仏霊となり、現世に生きる者の不満や怒りを煽っている事例が数多くありました。これらの不成仏霊に支配されるようになりますと、常に世の中に不満を抱くようになり、性格は攻撃的となります。そして口では社会正義を語りながらも自己中心的となり、自己主張が強くなります。

 しかし、生前に社会主義に傾倒していた不成仏霊の障りが解消すると次第に心が穏やかになり、自然に感謝の言葉を口にするようになる傾向があります。そのため、ポストマルクス主義と呼ばれる思想の背後には、魔界の者たちに翻弄されている可能性が高いと思われます。

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