第12話夫婦喧嘩に巻き込まれたらしい
爆弾発言から数日後。朝から私は疲れていた……本当に疲労困憊。
何故かは察しの通り、
アイザックは翌日からことある事に私の元へ訪れた。
朝の挨拶から始まり、一日が終わるまでに数回……下手をすれば数十回とあの男は現れる。
私はアイザックに見つからないように逃げ隠れしているのだが、どういう訳だかいつも簡単に見つかってしまう。
アイザック曰く「そんなに殺気まみれでれはすぐに見つかりますよ?」との事。
そんな事を繰り返していたせいか、今では顔を見ただけでは闇に呑まれることはなくなった。
それどころか嫌味を言えるほどになっている。
ライはいい傾向だと喜んでいたが、私は何となく素直に喜べなかった。
このままアイザックとの仲を深めて、
それこそ私の心は死んでしまう。悪霊なんて可愛いものではなく、悪魔に魂を売ってしまうかもしれない。
私はそれが怖い……
(そろそろ、本気で距離を取らないと)
そう決意をした。
◇◇◇
「……今日はアイツ来ないな」
「そうね……忙しいんじゃない?」
この日は珍しく挨拶にも来ず、急いで城へと向かって行った。
まだ屋敷に残っていたイアンに聞いたところ、ここ数日降り続いている雨の影響で川が氾濫し、街に被害が出ているらしくこれ以上被害が及ばない様に騎士団が派遣されたらしかった。
外はまだ雨。止む気配もない。むしろ酷くなっている。
「この様子じゃ、まだ帰って来れないな」
「……そう」
ライが外を見ながら呟いた。
神様の言うことだ、暫くは帰って来れないのかもしれない。
(距離を置くいい機会よ)
「……気になるか?」
「何でそんなこと聞くのよ?気にするはずないでしょ?いなくて清々してるわよ」
「そうは見えんぞ?さっきから外を気にしているだろ?」
ライが嫌な目つきで指摘してきた。
確かにチラチラ窓の外を見ていたような気もするけど、それはアイザックを気にしてるんじゃない。
「ち、違う!!アイザックの心配じゃなくて街の人達を事を心配してるのよ!!」
そう。アイザックじゃない。街の人を心配してるのよ私は。
「……まあ、そういう事にしといてやる」
ライはそう言うと、ベッドの上に転がった。
……まったく、生意気なスズメなんだから。
それにしても、こんなに降り続く雨も珍しい。
いつもなら降っても2、3日。今回の雨は既に一週間降り続いてる。『異常』その言葉が頭を掠めた時、目の前のスズメが目に入った。
(こいつ、一応神様よね……)
「ねぇ、この雨って異常だと思わない?──……もしかしてだけど、あんたの仕業……って事無いわよね?」
その言葉を聞いたスズメは一瞬ビクッと肩が震えたが、そのまま寝たフリを決め込んだ。
私はすぐに察した。「こいつ、何か知ってる」と。
私は寝たフリをしているスズメをガシッと掴み、問いただした。
「あらあら、ライさん。寝ている場合ではなくってよ?……5秒以内に知ってることを話さないと、この羽全部毟るわよ?……5…4……3……」
「待て待て待て!!確かに知ってはいるが、私ではどうする事もできない!!」
ギリっと力を込めカウントダウンを始めると、ライは焦ったように言ってきた。
ライがどうする事も出来ないってことは……どうゆう事?
「とりあえず下ろせ」と言われ、素直にライをテーブルの上に置いた。
一生懸命乱れた羽を直しているが、やはり腹がつかえて上手く直せないでいる。
「……今回のこの雨はゼウス様とヘラ様が天界で夫婦喧嘩をしている為に起こったモノだ。要はとばっちりだな」
淡々と話したが、結構重要なことを言った。
どうやら、ゼウス様の浮気が
(……ちょっと待って。それって神様同士の喧嘩に人間が巻き込まれてるってこと?)
神様って人々を護ってくれるはずの存在よね?その神様が人に危害を加えているの?
「冗談じゃないわよ!!それで人が死んだらどう責任とってくれるの!?家を流された人もいるのよ!?街の人達の生活を壊しといて神を名乗るんじゃないわよ!!」
思わず叫んでしまった。叫ばずにはいられなかった。
神様同士の喧嘩はどうでもいいが、人を巻き込むのは神としては失格だろ。
そんな神様なら目の前の肥満スズメの方がまだいい。
ライは小煩いが、私の事を思って言ってくれているのが分かっているから。
「お前の言い分も分かるが、
ライは困ったように頭を掻きながら言ってきた。
まさかの最高神……
うちの肥満スズメは平神様……しかも体良く追い出された左遷神様……権限が弱い!!無いに等しいわ!!
「天界でも何とかしようと
「まあ、数人は返り討ちにあって動けんようになってるらしいが……」恐ろしい者を見るように体を震わせながら言っていた。
神様が太刀打ち出来ないんならどうしようもない。
そもそも最高神に太刀打ち出来る神がいるのか疑問なのだけれど……
そんな話をライとしていると──
「──……なにやら下が騒がしいな。戻ってきたんじゃないか?」
確かに下が騒がしい。
逸る気持ちを落ち着かせて、下に下りて行くとイアンを含めた数人の騎士がびしょ濡れでいた。
その中にアイザックはいなかった。
「シンシア!?」
私の姿を見つけたイアンが声をかけて来た。
その顔はどこか青ざめていた。
「……何かあったの?」
「──……あぁ……副団長がな……」
私から目を逸らし、言いずらそうにしながらも教えてくれた。
「増水した川に落ちた子供を助けようとして飛び込んで子供を岸まで引き上げた時、まだ川の中にいた副団長の頭に大木が当たって……副団長が、流された……」
「……え?」
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