第4話 夢と現実

「あああああああ。」


やはり、松下さんが何かを言いながら、夕日の見える窓から外を眺めています。

悲しげな様子です。

なぜか、夕日も悲しげに見えました。

昔に何かあったのでしょうか?

松下さんは言葉が不自由なため意思疎通ができません。

何もできない私の無力さが悲しいです。


そういえば、私は夢を見ました。


それは沢田さんと私と手を繋ぎ、そして子供がいたのです。

そして、楽し気に虹の向こうに3人で歩いていきました。

とても幸せな夢でした。

続きが見たかったのですが途中で目が覚めてしまいました。

幸せな夢が途中で終わってしまうのは残念ですよね。


私は沢田さんのことが気になって仕方がありません。

でも、沢田さんは奥様もいて、子供もいます。

私の手が届く人ではありません。

しかし、毎日のように食事に誘ってくれます。

私はもう、すっかり慣れてしまって戸惑いはなくなりました。

本当はそれではいけないのですが・・・


そして、時はやってきたのです。


「沢田さん、今日は食事の後にバーにでもいかないかな?」


私はうれしくてたまりませんでした。

お酒はあまり強くありませんが何かを期待するものがありました。

しかし、それが現実になったのです。

私はバーでの空間が幸せでした。


「清河さん、今日はいつも以上に楽しいね。」


「はい。」


私は沢田さんのそばで一緒にお酒を飲めること自体が楽しくて仕方ありませんでした。

時間があっという間に過ぎ去ったような気がします。

すると、突然に沢田さんの口から・・・


「清河さんはお酒に弱いのかな?」

「少し顔が赤いよ。」


「それは気のせいです。」


「そうかな?」

「僕の色に染まっているんじゃないかな。」

「僕についてきて。」

「今日は二人になろう。」


「お任せします・・・」


私は遂にひとつの壁を越えてしまったのです。

それは、私にとって夢のような出来事でした。

しかし、それは後悔のはじまりでした。


沢田の自宅にて


「あなた、最近、帰りが遅いけど、まさか浮気しているんじゃない?」


「そんなことはないよ。」

「仕事の打ち合わせや上司との酒の付き合いなど大変なんだよ。」

「僕も新入社員だから仕方ないんだよ。」


「本当かしら?」


「ああ、愛しているのはお前だけだよ。」


「あなた、私も愛しているわ。」


清河の自宅にて彼女は想う。


幸せでした。

でも、このままでいいのかな。

沢田さんの奥様ににも悪い。

不倫でしょ。

複雑な気分だな。

でも、あの夜は忘れられない。



時は移り



ある日、野村さんが風邪で学校を休んだ時のこと。

久しぶりに妙子さんと二人で帰ることになった。

僕はこのままでいいのだろうかと思う。

でも、何も出来ない自分が情けない。

すると、妙子さんがある行動にでたんだ。


「松下さん、少し目を閉じてください。」


「どうしたの?」


「いいから。」


「ああ、わかった。」


僕の頬に何か優しいものを感じたんだ。

目を開くとすぐ目の前に妙子さんがいて。


「松下さん、口づけしてください。」

「今度は私は目を閉じますから。」


僕はとても恥ずかしかった。

すぐ僕の目の前に妙子さんがいたんだよ。

びっくりするだろう。

僕は戸惑った。


「早く、口づけをしてください。」


妙子さんは積極的だった。

僕は勇気をだした。

心がはじけそうだったけど、かっこ悪いかな。

でも、妙子さんの柔らかい優しさが体に伝わってきたんだ。

どうか夢ではないことを祈ったよ。

僕はその日の夜は眠れなかった。


翌日


風邪が良くなった野村さんと三人で帰ることになったけど、いつもと違うんだ。

それは、妙子さんが僕の手を握ってきた。

野村さんの目の前でだよ・・・

恥ずかしかったけど僕も強く握り返したんだ。


すると、野村さんは悲しげな表情を浮かべた。

僕は複雑だった。


「野村さん・・・」


「いいのよ、松下さん。」

「野村さんには、明日、私からちゃんと説明しておきますから。」


野村さんは泣きながら走り去っていった。

仕方ないよね。

泣きながら走る野村さんを見て僕は何かを感じたんだ。


それからは野村さんは諦めたのか、いつも二人で帰るようになったんだ。

でも、悲しげな野村さんと会うと僕は心が絞めつけられた。

いつも、仲良く3人で帰っていたから僕は辛かったな。

野村さんの気持ちを想うと本当に辛いよね。

これでいいのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る