第3話

 「あのさ……」


 一つ年上の幼なじみの瑞希に僕は聞く。瑞希は「どうしたん?」と走って汗を拭いている。確か、瑞希は三年四組だったと思う。先輩から聞いた情報だと清水さんは三年四組。なら、清水先輩のいじめの件についてなにか知っているはず。


 「清水さんの話さ。何か清水さんが悪いことしたの?」

 

 瑞希は険しい顔をして「何もしてないよ。何もしてないからエスカレートした。って説明しなきゃわかんないよね」と言った。


 瑞希の話をまとめるとこうだ。最初は只、一軍に無視されるだけで、特に何もなかった。だけど、清水先輩の友達まで無視された。清水先輩は「私と一緒に居たら、虐められちゃうよ」と言って友達を失った。一軍は二軍、三軍を手駒に取って、清水さんをクラス全員で無視した。だけど、清水さんは平気なようで、それにむかついた主犯は遂に越えてはならない一線を越えた。


 「石川さん、居ますか?」


 人づてに放課後、主犯が集まるように頼んだ。のうのうと生きているヤツら

は楽しそうに話して待っていた。


 「あ、はい。私です……けど」


 後輩から告られた。それは立派なステータスだと思う。

 主犯は髪をくるくるさせて、恥ずかしそうに「なに?」と言うのだ。


 「清水鈴さんって知ってますか?」

 「あー。うちのクラスのやつだけど」


 先輩の話になるとすぐに機嫌が悪くなった。


 「いじめてたんですか?」

 「いじめは嫌がっていたらそう言うんだよ。あいつは嫌がっていなかった」

 「嫌がってましたよ。なのに、それに気づかないお前はバカだ。良し悪しも分からない子供だ。そういう奴らが生きているから悲しむ人が増えるんだよ!」


 ムカついてどんどん声が大きくなっていく。

 

 「あの人だけには手を出すな」

 

 僕は主犯の胸ぐらを掴んでそう言う。周りの奴らは怖気づいて何もしてこなかった。

 このことを告げ口されても今までの僕の態度なら、先生はこいつらより僕を信じてくれるはずだ。それに、周りには誰もいない。ここに来るまでにちゃんと確認したのだから、大丈夫だ。


 いじめはそれから無くなったらしい。けど、先輩に残った傷は何年も残り続けるのだと思う。もしかしたら、それは一生かもしれない。

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