第2話 OL
私は中小企業に勤務しているOLです。お客様からのお電話も多く中にはクレームまがいのお電話もかかってきます。
そんな私はいつからか電話機から発する『言葉』や『音』を物質として認識するようになっていました。私は『言葉』や『音』を視認でき触れる事ができるのです。
そんな私は物質と化した『言葉』や『音』に押しつぶされないように逃げ続けているのです。
◇
今日もクレームまがいのお電話がかかってきました。
『おう、お前だれや』
電話機から『おう、お前だれや』がマッハで飛んできます。
第一声からこれでした。しかし私は第一声から警戒しているので余裕でかわします。
『お前んとこの商品どうなっとんじゃ』
電話機から『お前んとこの商品どうなっとんじゃ』がマッハで飛んできます。
第一声が『おう、お前だれや』だったため、警戒レベルを上げている私は余裕でかわします。
『聞いとんのか、コラ』
電話機から『聞いとんのか、コラ』がマッハで飛んできます。
私はあまり話を聞いていませんでしたが、慣れているので余裕でかわします。
『上司だせや』
電話機から『上司だせや』がマッハで飛んできます。
今このフロアに上司はいないのでどうにもなりませんが、慣れているので余裕でかわします。困った場合は適当に誰かに代われば上司でなくてもバレません。
『○すぞ、コラ!』
電話機から『○すぞ、コラ!』がマッハで飛んできます。
私は「この通話は録音しています」というアナウンスを聞いているはずなのに殺人予告をしてしまってこの男性は大丈夫なのかしら?と心配になりながら余裕でかわします。
1時間が経過して電話先の相手も飽きてきたようです。
『おう、まあ次から気をつけろよ』
電話機から『おう、まあ次から気をつけろよ』がマッハで飛んできます。
私は長かったなと思いながら余裕でかわします。
◇
隣りにいる同僚の電話機からも『言葉』がマッハで飛んできます。
同僚は定時を気にしながら余裕でかわしているようです。
今日もフロア中に『言葉』がマッハで飛んでいます。しかしベテランのみんなは余裕でかわし続けます。今年入社の新人さんが被弾しました。大丈夫でしょうか。
定時になり着信がなくなりました。マッハで飛ぶ『言葉』がなくなりました。
今日は同僚とちょっと意識の高いご飯を食べに行く約束です。マッハで飛ぶ『言葉』をかわした後に同僚とおしゃべりしながらのご飯は美味しいです。
明日もマッハで飛ぶ『言葉』をかわしながら頑張ります。
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