おまけ 対アラド戦後の召喚獣達
「お帰りなのじゃ、ゴリ丸兄様、ドラゾン兄様、ミドリ」
召喚を解かれ、我が家とも呼ぶべき主の魔力で形作られた空間に戻ると、ミケ君とマジュラス君が満面の笑みで迎えてくれました。
可愛い弟達の出迎えに、ドラゾン君も満足げです。
「おう、出迎え苦労さん。まあ、ゴリ丸の兄貴と俺が出張ったんだ。負ける要素はねえわな」
それは私も同じ意見ですが、今回の敵は思ったよりも強かったというのが正直なところです。
魔力の充填が十分ではなかったとはいえ、まさか人間との一対一での殴り合いを制することができないばかりか、担がれて投げ飛ばされるとは。
世界は広い。
私もまだまだだと思い知らされました。
「ミドリもよくやったな。初めての戦闘は怖くなかったか? それがしがついていてやれればよかったのだが、今回は呼ばれなんだ」
私が反省をしていると、ミケ君が末の妹の顔をわしゃわしゃと撫でくりまわします。
それを嫌がるそぶりを見せずキャッキャと喜ぶミドリ君。
ああ、なんと癒される光景でしょうか。
「うん! 怖くなかった! 魔力たくさん! ミドリ頑張った!」
「ええ、本当によく頑張りましたね。初めて相対する敵が、私一人では倒しきれなかった強敵だったことを考えれば、満点をあげてもいいでしょう」
とは言うものの、何の手立てもなく勢いだけで敵に突撃し、撥ね飛ばされたのを見た時には肝が冷えました。
なんとか受け止めることができてホッとしましたが、この子が怪我などしようものなら主人の指示を無視してあの人間を八つ裂きにしていたかもしれません。
いえ、あの瞬間は確かに頭に血がのぼっていて飛び出す寸前だったのですが、ドラゾン君の目配せで落ち着くことができました。
今日は反省ばかりだと、そっとため息をついた私の足元に駆け寄って来たミドリ君。
ブンブンと短い尻尾を振ってこちらを見上げてきます。
「ゴリ丸お兄ちゃん、抱っこ!」
甘えん坊ですね、ミドリ君は。
先ほどまで瞳を森色に光らせながら獲物を狙っていた精悍な姿はすっかりなりを潜めています。
「おら、ゴリ丸の兄貴は出ずっぱりで疲れてんだ。俺が抱っこしてやるからこっちこい」
反省に埋め尽くされている私の心の内を読んだであろう下の弟が、甘えん坊な妹を諌めるように首元を咥えて持ち上げました。
まあ、私に気を遣いつつ、自分もミドリを構いたいと言うのもまた本音でしょう。
彼はすぐ弟妹を甘やかしますから。
しかし、そんな兄の心妹知らず。
ミドリ君はジタバタと暴れて拘束から抜け出すと、小さい牙を剥き出して威嚇の構えです。
「や! ドラゾンお兄ちゃん硬いもん! ゴリ丸お兄ちゃんがいいの!」
「なっ!? 硬いのは仕方ねえだろうよ!」
竜種の骨ですからね、ドラゾン君は。
脅威度Sの竜種すら叩き落とすことのできる強度を誇っているので、私の体毛の方が柔らかいのは間違いありません。
「まあまあドラゾン君。いいじゃないですか。ミドリ君も今日は頑張りましたからね。ほら、おいで」
「わーい」
私が両手を広げると同時に飛びついてきて体毛に埋もれるようにグリグリと頭を擦り付けてくる妹。
その愛らしさについつい頬が緩むというものです。
ドラゾン君もミケ君も同じような顔をしていますが、それを誰が責めることができるでしょうか。
「結局皆ミドリに甘いのう。まあ、末の妹であることを考えれば仕方ないが。我儘に育っても知らぬぞ? 兄様方」
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