第134話 リザルト

 今回の騒動の顛末をおさらいしてみよう。

 まずはこちらの被害。

 これは軽微ということでいいか。

 一足先に退いたらしいエイミーちゃんは既に回復していて問題なし。

 フィルミーが魔力切れを起こして倒れているけど、ジャンジャックの見立てでは寝てれば治るいうことで一安心。


「星堕し一発で魔力切れとは情けない。体調が戻り次第訓練を再開しなければなりませんな」


 とは、お師匠様の言葉だが、その素養を買っていて、自分の二つ名を譲っても構わないと言い切った弟子が土魔法で竜種を討伐したことを、少なからず誇らしく思っているらしい。

 ポケットマネーでフィルミー用の剣を含む装備一式を新調してあげると言っていた。

 領地的には、森の浅層にまあまあの規模のクレーターが出来ているのと、深層の奥が荒れに荒れてしまっている。

 どちらも土魔法師弟コンビによる星堕しの被害だが、まあノーダメージだ。

 屋敷の周りさえ無事なら生活には困らないし、なんせ生命力の強い森なので、時間はかかるだろうけど、近い将来元の姿を取り戻すだろう。

 今後は深層の奥にも気軽に、かはわからないけど、遠慮なく入ることができる。

 奴より怖い魔獣はいなかったからな。

 今後は家来衆の修行場として用いられることだろう。

 

 結果、人的被害も財産的な被害もほぼなし。

 完勝と言っていい結果にリスチャードや駆け付けてくれたサウスフィールド家のミックも苦笑いを浮かべていた。

 いや、みんなのお陰で後顧の憂なく攻め込めたんだ。

 国都の屋敷の守備に就いてくれた皆さんも含めてしっかり御礼はしよう。

 

 次に今回の戦闘で得られた成果を見ていこう。

 まずは次元竜ことディメンションドラゴンの肉や皮、爪など一式。

 首は結納品代わりにクリスウッドに送りつけようかと思ったが拒否された。


「前にも言ったけど、そんなもの貰ったった処理できないのよ。脅威度Sの竜種の首? 一体、お返しは何を用意すればいいのかしら。いらないとか言ったら水に浸けるわよ? クリスウッド公爵家は嫁の実家からの贈り物に返礼もできない。そう思われるのが貴族でしょ?」


 あー、面倒くさい。

 マッデストサラマンドの肉くらいなら問題なかったみたいだけど、フィルミー渾身の星堕しで爆散したらしい。

 いや、そりゃそうだ。

 ジャンジャック版星堕しを見たけど、あれで可食部分が残ってたらおかしいから。

 結局、ディメンションドラゴンの首は歴代当主のコレクション群とともに並べておくことに決まった。

 リスチャードには個人的にディメンションドラゴンさんの素材で何か作って贈りたいと思います。

 親友として、義兄として。


 国からは報奨金がいただけるらしい。

 僕としては自分の領地を守っただけだし、なんなら自分から攻め込んだところもあるので報奨金なんかいらないんだけど、これも貴族的事情にお断りすることはNGだと。

 王家からの報奨を断るとか最高の不敬なので、もらったうえで何か珍しいものを返しなさいよってことらしい。

 

「ディメンションドラゴンの爪の一本でも渡せばいいんじゃない?」


 リスチャードはそう言ってたけど、そんなもんでいいのか?

 僕だけでは判断がつかない。

 これは第一執事ことハメスロットが帰ってきたら要相談だな。

 

 そして、今回の騒動で得た一番の成果がこちら。


【おめでとうございます! 忠臣が閣下の配下になりました! 


亡霊王 マジュラス


 忠臣を解説します。


 200年前に滅ぼされた軍事国家の少年王。強い怨念をもって現世に留まっていたが、レックス・ヘッセリンクの召喚獣となることで魂は浄化され、実体化を果たした。召喚主由来の魔力による拘束を得意としている】


 ガチャで引いたキャラだけど、しっかり忠臣アナウンスが流れた。

 久しぶりに聞くとやっぱり嬉しいものだ。

 ようやく出逢えた、亡霊王マジュラス。

 僕の召喚獣になったことで恨み辛みが浄化されたらしい。

 まあ、喚び出したら瘴気ダダ漏れの首無し巨大骨格標本だったもんね。

 瘴気と言えば。


『恐らくディメンションドラゴンのものだと思うのですが、寒気がするほどの瘴気を感じました。その直後に魔獣が溢れたことを考えれば、あれが本格的な氾濫の引き金だったと考えるべきでしょう』


 フィルミーからそう聞いた時は背中を冷や汗が伝った。

 それ、明らかにマジュラスの仕業だから。

 もっと言えば、僕がマジュラスに注ぐ魔力をケチって、半端な状態にしたのが原因だから。

 とても本当のことを言える状況ではないので、恨みはないけどディメンションドラゴンには濡れ衣を着てもらうことにした。

 すまん。

 さて、マジュラスの話しに戻ろう。

 召喚獣だから喚んだり戻したりもできるけど、本人はずっとこっちに留まりたいらしい。


「せっかく実体化したんじゃからこのままにしておいてほしいんじゃが。もちろん主が戻れと言うなら言うことを聞くが、できれば我はこのほうが都合が良いのう」


 そんな風に瞳をうるうるさせながらおねだりしなくても、エイミーちゃんが召喚獣だとわかったうえで可愛い可愛いと膝に抱っこして離さないからこのままにせざるを得ないんだけどさ。

 マジュラスは、寝るし食べるし風呂にも入るから、実情を知らなければ、見た目そのまま子供で通用する。

 近々でマジュラスの力を必要とする事態には陥らないだろうけど、折角の忠臣なんだ。

 このままにしておいて悪いことはないだろうと判断し、戻さず手元に置くことにした。

 それと、あのお子様には色々聞きたいこともあるしね。

 僕のことを何か知っているような口振りだったし。








 

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