第13話 ***そして俺は獣になりさがった

注意:このお話の中には性的表現が含まれています


 さっき、姉ちゃん以外の女性の下着姿を初めて見た俺だから女性の全裸を見るのももちろん初めて。姉ちゃんの裸は見たことがない。

 でも、女性の裸を見てもえっちな気持ちにはならない。すごく落ち着いた気持ちで裕香の裸を見ていられる。

 こうして改めて見ると裕香の身体はすごく締まってみえる。運動をしているのではないから筋肉が付いている訳ではないが無駄な肉は全く付いていない。それでいて全体的には女性らしい身体をしている。

 こういうのを良い身体というのかも知れない。いや、美しい身体と言っても良いと思う。


 ん? んんっ?

 ま、まずい。凄くまずい、かも。あー、ダメだ。自分で血液がもの凄い勢いで先端に向かっていくのが分かる気がした。裕香の裸を見ていたら俺のアレが静かに動き始めた。

 どうしたわけか俺のアレはグングンと大きくなっていった。この状況でコレは不味過ぎる。裕香は今、全裸でキャンバスに向かっている。俺も全裸に薄い布を一枚羽織っているだけだ。

 目を瞑る。裕香を見なければよい。これで大丈夫だ。ピンチを脱せる。

 だが、俺のアレは収まる気配が全くない。どうしたって言うんだ。何でこうなってしまうんだ。

 その時、裕香が初日に俺が勃起した後に言ってた言葉を思い出した。

 ——瀬能くんにはあるのかな? 女をそのぉ、性的に美しいと思える瞬間が


 あった! 俺、さっき裕香の身体を美しいって思った。

 どうしよう。一度、美しいと思った事を思い出してしまったら、もう美しいとしか思えなくなってきた。綺麗な身体だ。ラインが美しいんだ。

 ——美しい物を手に入れたい


 そう思ってしまった。でも、ダメだ。裕香は俺の大切な友達だ。友達を裏切ることは出来ない。ここは我慢するしかない。

 ——所有欲を満たすための行動が征服欲として現れるのが生殖活動の原点なのかもしれないね


 ダメだ。目を瞑れ。よし、大丈夫だ。見えていなければ……見えていないのに裕香の身体が頭に浮かんでくる。見えていないのに!!

 ——心の目で見たものを描けばいいのよ


 目を瞑っても見えてしまうものはあるんだ。それが心の目なんだ。

 俺は裕香が欲しい。心底そう思った。もう俺のアレはマックス状態が続いている。収まる気配はない。

 だが、もう少しの辛抱だ。我慢するんだ。動じるな。


「やった。これでほぼ完成だ。伯美、こっちに来て見てみてよ」

 裕香の『こっちに来て』という言葉が俺の中で我慢し続けていた所有欲を征服欲へと変える行動の鍵をぶち壊した。

 ポーズを崩して裕香の方に向かう。そしてそのまま裕香に抱きつき床に押し倒した。もうダメだ。どうしても我慢が出来ない。

「は、伯美ぃ」

 裕香の声は届いているがもう決めたんだ。

「ゴメン、裕香。俺はお前が欲しい」

 そう言って裸になっている裕香の身体を手で触る。あちこち。胸は柔らかい。裕香は泣いていた。涙を流していた。でも、俺はやるって決めたんだ。

 裕香が時折声をあげる。身体は反応している。痛がらせるのは本望じゃないから念入りに。ここまでやったらもういくしかない。もう後戻りは出来ない。

「僕はお前がどうしても欲しいんだ。ゴメンな」

 そう言って裕香の身体を開かせて中へと挿れた。その瞬間、『うっ』と言う声を裕香があげた。


 やってしまった。今はただこのままやるしかない。俺は快楽の世界に身を委ね裕香の身体の上で腰を動かし続けた。

 やがて絶頂感が俺を襲い快楽は頂点に達した。


 やった。終わった。そう思ったと同時に俺が乗っている裕香のことを考えた。

 俺はなんという事をしてしまったんだ。俺のことを信用して、だからこそ他の学生から何と言われようが俺を助けてくれた友達に俺はなんという裏切りをしてしまったんだ。

 俺のやったことは親友となった者への裏切り行為だけではなく明らかな犯罪行為だ。俺はレイプをしてしまったんだ。


 上に乗っていた裕香から身体を離す。裕香はまだ仰向けのままだ。ショックで立ち上がれないのだろう。今は何を言っても言い訳にしかならない。

「裕香、ごめん。本当にごめん。でも、我慢がどうしてもできなかったんだ。お前が欲しくなって。頭じゃダメだって分かってた。でも、でも心が制御出来なかった」

 裕香は何も言わない。無言だ。

「俺、帰るわ」

「伯美!」

 裕香に呼ばれた。罵声を浴びせられるに違いない。獣以下だって。

「絶対に来週までにこの絵を完成させるから。だから、絶対に彩美音祭に来てこれを見て。絶対だよ。伯美に見せたくて描いてるんだから」

 もはや獣以下でしかない俺に、再び裕香の前に出て行く資格はない。

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