第13話 RPGあるある その1

「……だからさ、追い越しちゃダメだよね」


 主人公アルマスを追い越し、カリール城への道中、渡らないと行けないワスタ橋。薄茶色の煉瓦で出来たアーチ状の橋だ。

 よくできた事で、他の所を突っ切ればいいじゃん、と思うだろうが、無理なのだ。

 この橋の周り、山! 川! 森! ダンジョンでないから入れないし突っ切れない!

 よくできた橋、よくできたストーリー。で、さらには。


「ココちゃん、この橋は通れねーってよ」


 ピヨしんに乗った推しが振り向いた。


 そう、橋が通れないっていう、ねー?


『兵士「冒険者さまでありますか!?」』


 橋の脇に立っていたカリール兵が声をかけてきた。

 そして、ウィンドウが現れた。


『はい


 いいえ』


 いいえを選択すると、


「いや、カリール城下町に卸しに来た商人だ」


 推しが説明してくれた。


『兵士「そうですか…… くっきょうな体なので 冒険者さまかと……」』


「……」


 いー体でしょう! 闘技場コロシアムの覇者だぞ!


『兵士「申しわけありません 今 橋は通れません ごらんのとおり 盗賊たちによって 塞がれております」』


「…………」


 私が『未来クエスト』、『ミラクエ』を好きになった理由はいくつかあるが。その内の一つが、RPGあるあるがぎゅっと詰まっている所だ。


 RPGあるある、その1。

 橋が壊れて通れない。


 そう、ミラクエでも橋は壊れて通れない。

 はずだったのに、ねー?


『盗賊「ギャーハッハ! うたげだー!」』


「……」


 私というバグは、どこまでもバグを呼ぶんですねー。盗賊たちが橋のド真ん中でたむろして、宴会をしていますねー。いいご身分ですねー。


『兵士「けんしょう金も かけているのですが どの冒険者さまも こてんぱんにやられまして 困っているのです……」』


「……」


 カリール兵の隣に立っている立札に近づいた。


 コマンド選択。


 しらべる


『ココは 立札をしらべた。

立札には つわもの求む! けんしょう金 10万マネー と 書かれてある』


 ……中々いいお値段ですこと。


「どうする? ココちゃん」


 ピヨ之進から降りた推しが振り向いた。私も、のそのそとピヨ三郎さぶろうから降りる。


「どうしましょうねー……」


 ピヨ三郎のお腹をツンツンしていると、


『盗賊「何だぁ? お前ら やろうってのかぁ?」』


 盗賊が話しかけてきた。いやいや、何にも言ってませんが。


『盗賊「通りたければ 身ぐるみ 全部おいていきな!」』


 いや、それ、絶対に通してくれないパターンのやつじゃん。


「それはできねぇ!」


 推しが盗賊に近づいた。


「ココちゃんをそんな恥ずかしい姿にできねぇし、この金は、ココちゃんが汗水流して貯めたお金だ。渡せねぇ!」


「…………」


 眩しいくらいかっこいいんだが、テイオスさんすいません。今あるお金はきっと、大事に使っていた武器や防具を、エンウーが売りやがったお金だと思います。


『盗賊「じゃあ 俺たちに出会ったのが 運のつき ボコボコにして 身ぐるみはいでやらぁ!」』


 テレレレレッテレレレレッテレレーテッ。


「……」


 ええ、はい、ストーリー上必ず出会う、ちょっとボス的な奴と戦闘に入るBGMですね。


『盗賊が あらわれた!』


『盗賊が あらわれた!』


『盗賊が あらわれた!』


『盗賊が あらわれた!』


「…………」


 ねー?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る