第118話 第四章完結 ちょっとしたIFSS「初めての後」

 朝起きると、隣には生まれたままの姿になっている玲羅がいた。

 すごく疲れているのか、ぐっすりと眠っている。


 昨日、俺たちは初めてを迎えた。

 高校3年の冬。お互いの進学先が決まり、お祝いもかねて昨日の夜に2人きりで過ごしていた。


 結局、そのままの流れでベッドインして、俺が玲羅の初めてをもらったのだ。


 ちなみに、お互いの進学先は同じだ。

 ここまで時間がかかったのは、俺が玲羅に推薦枠を譲ったからだ。


 指定校推薦の枠をうちの高校で、志望大学のものは一つしかなかった。


 なので、俺は玲羅にその枠を譲って、一般で合格した。

 本当に玲羅に感謝されながら謝られた。


 別に、受験自体はそんなに難しくなった。なんせ共テは満点取ったからな。


 そんなこんなで俺と玲羅は晴れて、同じ大学の同じ学部に入学が決定したのだ。


 「んぅ……」

 「ん?……おはよう」

 「あ、し、翔一……」

 「どうした?」

 「お、おはよう……」


 眠りから覚めた玲羅は、昨日のことを思い出して顔を真っ赤にしていた。

 「おはよう」というときも、無意識に自分の胸を隠していた。


 「別に、もう恥ずかしがることでもないだろ?」

 「き、昨日と今ではテンションが違うんだ……その、今はちょっと……」

 「そういうもんか?―――よっと……」

 「ひゃわ!?」


 しおらしくする玲羅の体を持ち上げて抱きしめる。

 お互い、すっぽんぽんなのでほのかに熱い体温が伝わりあう。


 心地よい暖かさで、なにより玲羅の肉感がとても柔らかい。


 「もう……翔一のえっち」

 「ふふん。夜は玲羅の方がエッチだったくせに」

 「そ、それは……!言わないでくれ……」

 「もっと!もっとぉ!」

 「や、やめろお!」


 昨日のことでからかってあると、顔を真っ赤にしながら胸をドンドンと殴ってきた。

 はは、すげえ可愛いや。


 そんなことを考えながら玲羅の拳を受けていると、不意に胸倉をつかまれた。


 ―――かと思うと、目の前に玲羅の顔が迫ってきていた。


 「んちゅ……」

 「む……!?」


 突然、キスをされた。それも舐るような熱いものを。


 たっぷりと十数秒、俺の口腔内を犯した後、玲羅は言った。


 「ばか……意地悪ばっかりするな……」

 「……悪かったよ。ほら、おいで」

 「ああ……」


 玲羅の講義と言わんばかりのキスを受けた後、俺は大きく両腕を広げた。

 そして、開かれた胸へと玲羅が飛び込んできた。


 そんな彼女は、昨日の夜と同じようにすりすりと甘えてきた。


 いつも見てきているような姿なのに、なによりも愛おしく感じてしまう。


 ちなみに、結乃は友達の家に泊まっている。

 俺たちの雰囲気を察したのか……。だとしたら、気の利く妹を持ったものだ。


 「翔一……そろそろ起きないか?」

 「……もう11時か。そうだな、もう起きるか。俺の机にバスタオル置いてあるから、それ巻いて、着替え取りに行ってからシャワー浴びてきな」

 「翔一は?」

 「俺は玲羅が上がってくるの待つよ。何気に、うちの風呂そこまで広くないから」

 「わかった。できるだけ早く出てくる」

 「風邪ひくからあったまって来いよ」


 玲羅はその言葉を聞いて、部屋を去っていった。


 思えば、今までいろいろあったな。


 今までの人生で一番濃密な三年間だった。

 初めての夏祭りに、初めて恋人と2人きりで過ごすクリスマス。


 俺がしたことないことをたくさんしてきた。多分、これからもそうなんだろうな。


 大学卒業後は、美織が起業すると言っているので、そこについていくことになる。


 高校三年間で、俺たち二人は二家の勢力をだいぶ削った。あそこまですれば、俺たちに干渉してくる家の人間はいなくなるだろう。


 ちなみに、俺の就職先は社長秘書だ。

 美織に決定と言われてしまったので、従うしかない。


 はあ、秘書検定受けるか……


 ちなみに美織は某有名な大学に行った。

 その大学は医者を排出するような場所だ。本当に、なぜ起業するとか言ったんだろうか?


 まあいいか。あいつの突拍子のない発言はいつも通りと言えばそれまでだ。


 そうこうしていると、玲羅がシャワーを浴び終わったのか、部屋に入ってきた。


 「翔一……って、なんで裸なんだ!?」

 「昨日の夜に、玲羅としたからだよ?」

 「そ、そうじゃなくて、なんでなにも羽織らないんだ!……め、目のやり場に困る……」

 「そうか。じゃあ、シャワー浴びてくる」


 俺は浴室の前の脱衣場に入ると、籠の中に気になるものを見つけた。


 玲羅の下着だ。


 まあ、機能する時に脱ぎ捨てたから、玲羅が自分で持っていったんだろうけど、もう少し恥じらいを持ってほしいな。

 いや、昨日のことで頭がいっぱいっぱいなのか?


 ともかく、俺相手になんの警戒をしないのはうれしいが、これはこれで……


 あ、シーツ洗わないと


 「そういえば、布団のシーツシミになってないよな?」


 そう俺のシーツが心配になった俺はシャワーを早々に終わらせて、部屋に向かった。


 ガチャ


 「うひゃあ!?―――は、早いな……」

 「なにしてた?」

 「な、なにも……」

 「いや、嘘つけや。明らかになんかしてたろ」


 部屋に入った瞬間、玲羅は俺の使っている枕に顔をうずめていた。

 いや、なにをしていたかとかはなんとなく察しつくんだけどさ。


 「そういうのはバレないようにしな。それか、俺のを直接していいんだぞ」

 「な、なにもしてないって……」

 「まあ、そう言うならそれでいいけどさ」


 そう言って、俺は掛け布団をどけてみた。


 すると、案の定シーツに大きなシミができていた。

 昨日の夜に、ここがぐちゅぐちゅに濡れていたのだろう。


 「はあ、どうしようかな。洗濯するにしても、今日はあいにくの雨予報だしな」

 「す、すまない……私がこんなのなばかりに……」

 「別に何も悪くないだろ。ていうか、玲羅が悪いとか言うのなら、ここまで攻めたのも俺だろ?」

 「……っ」

 「どうした?」

 「昨日のこと、また思い出してしまった……恥ずかしい」

 「大丈夫かな、これ」


 昨日のことを思い出しただけでこれか。

 心配になってくるな。ここまでグダグダだと。


 これから先、しようというときに毎度毎度顔を真っ赤にされたら、こっちも攻めづらくなってしまうかもしれない。


 「本当に、玲羅との子供作れるのかなあ?」

 「き、気が早いだろ……そういうのはちゃんと籍を入れてから……」

 「じゃあ、今日入れに行く?」

 「ふぇ?」

 「今日、名実ともに夫婦になる?」

 「だから、気が早いって……」


 そう言いながら、ちらちらとこっちを見て、あからさまに期待している玲羅の姿はとってもかわいかった。

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