第114話 翔一宅にて―――
トントントントントントントントントン
「だああ!負けたああ!」
トントントントントントントントントン
「やべえ!結乃ちゃん、蘇生頼むわ!」
「任せて蔵敷先輩!」
トントントントントントントントントン
「よっしゃああああ!勝ったああああ!」
「結乃ちゃん、ゲームうまいね」
トントントントントントントントントン――――ドンッ!
「うるせえよ!―――もっと静かにゲームできないのか!」
俺が1人で料理をして玲羅がそれを眺めている中、他のメンバーはキッチンの隣にあるリビングでゲームをしていた。
うちの家は少々特殊で、昔からゲーム好きだった俺のために、結乃とのマルチプレイができるようにテレビが二枚出せるようになっていた。
最近は出すのが面倒でやっていなかったが、今日結乃がそれを出してきて、2人ペアでFPSをやっている。
俺のアカウントでやってるみたいだから、戦績落されると非常に困るのだが……
「あ、プレ〇ター落ちた」
「!?」
俺は蔵敷の言葉を聞いた瞬間に、鍋とかの火を止めてリビングに走った。
そのまま移動した俺は、蔵敷からコントローラーを奪ってマッチングを開始した。
今はそこまでやってないとはいえ、玲羅と同棲する前にはランカーやってたんだ。ランク下がるなんてプライドが許さん!
「お、おい……翔一?いや、悪かったけどさ」
「しゃべるな。集中してんだ」
「お兄ちゃん、私も悪かったと思ってるよ。だから、そんな怖い顔をしないで……」
そんな周りの声を俺は、振り切って試合のスタートを見た。
てか、なんでランクマやってんだよ。人のアカウントならカジュアル回せよ。俺じゃなかったら絶縁されてもおかしくないことしてるからな?
俺はそのままの勢いで3戦し、すべてを10キル以上の戦績でチャンピオンを取った。
そのおかげで、俺はすぐにマス〇ーからプレ〇ターに昇格した。
そして、迎えた4戦目
「ねえ、翔一、あなた料理は?」
「飯の時間8時にする」
「えー、腹減ったのだけど……」
「いいだろ?美織もどうせ夜中に飯食ってんだろ?」
「よくわかってるじゃない」
「じゃあいいじゃん」
俺はフレンドも呼ばずに野良でマッチングしていたために、余計なトラブルを避けるために部隊から離脱しなかった。
まあ、指示ボイチャがうるせえけど全部無視すればいいか。
そう思いながらフィールドを動き回っていると、仲間のHPが一瞬で削られた。
「なんだ、今の?」
「どうしたんだ、翔一」
「今の減り方、どの武器でもあり得ない」
「はい?ライフル系なら全部あんなもんだろ?」
「いや、明らかに早すぎる」
「じゃあクレー〇ーじゃないの?」
「それなら、少しずつ減るんじゃなくて、一瞬で全損する。それでもなかった」
仲間のシールドは赤だった。だから、そこいらのライフル系ならそんなに一瞬ではなくならない。
まさか……
俺がある仮説を立てた瞬間、もう一人の指示厨の方が全損した。―――やっぱりな……
全部ヘッショだ。それに、一撃の大きさはス〇ピのヘッショダメージだ。しかも、連射速度が明らかに速い上に、全部頭に当ててる。
なるほど―――
「チーターだな」
「へ?チーター?」
「ああ、オートエイミングとポッ〇アップのチートかな?速射系のチートの可能性はあるけど、タボチャのような気がする」
「な、なんだそれ!卑怯だろ!」
「そんなことは相手もわかってる。だから使ってるんだろ?……まあ、負ける気ないけど」
先ほどの通りなら、オートエイムは全弾ヘッショに設定されているだろう。
まあ、指示厨殺したのは褒めてやる。
俺はその後、壁に隠れて機会をうかがった。相手はWHとかを使ってなくて助かった。
そのまま相手が隙を見せた瞬間に、ヘッドでクレー〇ーを叩き込んだ。
「よし、おけ」
「おお、すげえ……」
チーターと言えど、死ねば終わりだ。はあ、最近また増えてきたなあ……
その後、そのマッチも余裕でチャンピオンになった俺は、調子に乗ってもう一回行こうとしていた。そこで玲羅に話しかけられた。
「し、翔一……」
「ん?なんだ?」
ぐぅ~
少し小さな音だったが、俺はしっかりと聞き取った。
それを察し玲羅は、ものすごく顔を赤くしながらボソッと言った。
「お腹すいた……」
「悪い。すぐ作るわ」
俺はゲームを終了して、すぐに料理を再開した。
ほとんど終わっていたので、割とすぐに出せたのでそれ以上玲羅が腹を空かせることはなかった。
俺の作った食事を食べたメンバーは、満足し、その日はそれで解散となった。
本当は、今日も泊まっていくつもりだった美織を除いて、蔵敷と奏は俺の家を去っていった。
俺たちもホテルに泊まっていたとはいえ、久しぶりにこんなに遊んだので、倒れるように玲羅を抱きしめながら就寝した。
―――ちゅんちゅん
翌朝、久しぶりに遅めに起きた。
まあ、起きた理由も―――
ブーブーブー
―――なぜか、この時間に電話がかかってきたからだ。
「ふわぁ……もしもし……」
『あ、もしもし?』
「あれ?蔵敷の―――徹のお姉さんですか?」
『そうね、こんな時間に電話して悪いんだけどさ?弟はそっちにいる?』
「んぇ?昨日の夜のうちに帰りましたよ?」
『そう……おかしいわね』
そんなお姉さんの口ぶりから嫌な予感がした。というか、この感じから察せないほうがおかしいだろ。
「帰ってないんですか?」
『そうなの。昨日の夜には帰ってくるって言ってたから、久しぶりにおしゃべりでもしようかと思ってたけど、全然帰ってこなくて……連絡も……』
「わかりました。こっちからもなにかわかったら連絡します」
『……頼むわね』
そう言って、お姉さんは電話を切った。
蔵敷が帰ってない。あいつに恨みを持ってる奴なんていくらでもいる。このタイミングなのは気になるが、犯人が絞れない。
美織に頼むか……
そう考えついついた俺は、美織に電話をした。
すると、彼女は少し焦ったような声で電話に出た。
「もしもし?美織か?」
『もしもし、ちょうどいいわ。連絡しようと思ってたのよ』
「ん?なにかあったのか?」
焦ったようなその声がすべてを物語っているのだが、取り乱すのは聞いてからだ。
『蔵敷君だったかしら?』
「ああ、あいつがどうした?」
『彼、この町の暴力団に拉致されたみたいよ』
「本当か?」
『ええ、なんかあなたが1年位前にボコボコにしたごろつきいるでしょ?あいつ、構成員だったみたい』
多分、この瞬間に俺の眼からハイライトから消えたと思う。
「……そうか。場所は?」
『行くのね』
「ああ、どんな状況に置かれても、あいつは俺のダチだ」
『わかったわ。私ももう一つの方も片づけに行くから、派手にやってきなさい。警察は抑えておくわ』
「ああ、助かる」
そう言って電話を切ると、俺はクローゼットの中にしまってあった袴を着始めた。
そうすると、寝ていたはずの玲羅が体を起こした。
「翔一、どういうことだ……」
どう、説明したものか……
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