第105話 駅集合
夏休み。そして、季節は夏―――小〇構文かな?
ギラギラと照らす太陽の下、浜辺の更衣室の前に誰もが目を引くような美しき花たちが咲いた。
彼女たちは、地元の高校の女子たち。
そのスタイルも容姿も完璧で、通り過ぎる男たちはおろか、女たちも足を止めて、その美しさに魅入ってしまうほどだった。
ただ、その者たちの唯一完璧じゃないところは―――
「あ、翔一!」
「こっちだこっち。それにしても、奏の水着は攻めてるなあ」
「ふふっ、これで蔵敷君をイチコロだよ!」
「イチコロって、最近聞かねえな」
その花たちは男連れということだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今日はこの間に蔵敷たちと約束していた海に行く日だ。
つい一昨日に連絡が来て、突然今日行こうということになったのだ。
俺と玲羅は良かったのだが、なにやら結乃が一緒に来たそうな表情をしていたので妹も同伴だ。
そこまではいいのだが……
「遅いわね。集合時間の5分前には来るのは、当たり前のことよ」
「なんで、お前がいるんだよ―――美織」
結乃から話を聞いたという美織が飛び入りで参加し、待ち合わせの駅に俺たちとともに集まっている。
「まあ、いいじゃないか。人数は多い方が盛り上がるものだろう?」
「いいや、こいつを連れていったらろくなことにならない」
「あら、ひどいわね翔一。せっかく私の水着姿が見れるのよ、感謝しなさい」
「お前、俺の目の前で何回全裸になった?もう興味ねえよ」
「ち、ちょっと待て!し、翔一、美織の裸を見てるのか?」
「ああ、こいつ家の中だと裸族だから」
「な、な……」
「あら?玲羅は、まだ翔一にすべてを曝け出してないの?早くあなたも、身も心も全部翔一にささげなさい」
「も、ってなんだよ。ささげられた記憶ねえよ」
美織の話を聞いた玲羅は、なぜか「私も頑張らないと……」とか言っていたが、これは空耳だ。まさか、今日の夜に服脱がないよな?
やばい、これ以上は本当にやばい。―――美織、お前は玲羅と接触禁止だ、馬鹿。
と、そんなことをしていると、俺たちを誘った本人たちがやってきた。
「みんなー、お待たせ。いやー早いね。待った?」
「いいや、奏はこれまた大胆な服だな」
「へへ、これで蔵敷君を悩殺するの!」
「尻軽女みたいだな」
「あ?なんか言った?」
「いや、なにも」
遅れてやってきた奏は、胸元を大胆に開いた服を着ていた。正直、清楚を語る人間が着るような服ではない。あの話を聞いたからには、奏が清楚路線で蔵敷を攻略すると思っていたから驚きだ。
「よお、翔一」
「奏はいいが、てめえはダメだ」
「はい!?」
「男は10分前行動!女を待たせるな!」
「えぇ……」
「椎名君いいんだよ。蔵敷君、私との待ち合わせ、30分前に来てたから」
「ならいいわ!」
「翔一……お前の情緒がわからん」
そんな感じでさっそくと移動しようとした奏が足を止めた。
彼女の視線の先には、結乃と美織がいた。―――ああ、そういえば奏って結乃にも会ったことなかったな。
「ああ、奏、こっちの子が翔一の妹さんの結乃ちゃんだ」
「へー、可愛いね!やっぱり美形家族なんだ。こっちの人は?」
「こっちの人は―――すぅ……誰?」
蔵敷がそう言うと、美織はすかさず2人の前に仁王立ちした。
バァァァァン!と、効果音でもつきそうなものだ。なんせ、彼女は突然ジョ〇ョ立ちを始めたのだから。
なにしてんの?
「初めましてかしら?私の名前は条華院美織。そこの男の翔一とは幼馴染の関係よ!」
「「は、はあ……」」
「なんか質問ある?」
「えっと……条華院さんは、椎名君が好きだったり……?」
「好きよ!翔一、結婚しましょう!」
「え?やだよ」
「わかった?」
「「なんもわかんなかった」」
美織の勢いの良さに、2人は圧倒されていた。
だが、蔵敷は美織の激しい動きに連動している胸のせいで、若干目のやりどころに困っていたが、本性を知ればあれをすることはなくなるだろうな。
「まあ、悪い奴じゃないからさ。結乃と同じような扱いで連れて行っていいか?」
「わ、私はいいけど……」
「俺も……」
色々大変なことはあったが、俺たちは時間通りの電車に乗車することができた。
電車に乗車してからは、女子たちをできるだけドア側にやり、俺たちはほかの乗客たちとの壁になるように立った。
そんな形で乗っているからか、女子の必然だからかはわからないが、奏と美織が話し始めた。
「奏さん、あなた胸大きいわね」
「そういう条華院さんも」
「やっぱり、翔一の周りには巨乳の女ばかりやってくるわね」
「そういえば……椎名君の彼女は天羽さん。妹の結乃ちゃん―――巨乳しかいない!」
「もしかして、翔一に近づいた貧乳は胸が大きくなる……?」
「そんなわけあるか。だいたい、翔一にそんな力があったらどこの馬の骨とも知らない女たちが寄ってきてしまうだろ」
「そうだねえ、椎名君の正妻は椎名玲羅だもんねえ」
「なっ!?」
冗談を言う美織にツッコミを入れてからかわれる玲羅。いつもの光景だが、それに奏という下ネタ2号機が加わることによって、俺の彼女はいつも以上に辱められていた。
なにがやばいって、今電車の中なんだよね。
あ、やめろよ!初めてはこんなシチュがいいとか聞くの!
「と、とにかく、優しく抱きしめながら一緒に果てたい……」
「えー、天羽さん初心すぎ!」
「そうね。玲羅はまだ子供過ぎるわ」
「な、なにか悪いか!」
「私だったら、思いっきりケツひっぱたいてほしいわね」
「条華院さんはアブノーマルだね。私は、ぎりぎりで苦しんでる蔵敷君の顔が見たいなあ……」
「!?」
女子たちのトークを遠巻きながらに聞いていた蔵敷は、奏の唐突な暴露に、わずかだが身震いしていた。
そうか。蔵敷は奏に攻められるのか……
「なんか、失礼なことを考えていないか?翔一」
「さあな。でも、お前みたいな変態にはちょうどよかったんじゃないか?」
「変態ってなんだよ!」
「前に言ってただろ?こんなほんわかしてそうな子に攻められたい。って」
「それはアニメキャラだから!」
周りに、俺たち以外に人が少なかったのが幸いだ。
今の俺たちは、まごうことなきカオスの真っ最中だったのだから。
まあ、収穫はあった。玲羅は、初めての時は抱きしめながらしてほしい。っと
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