第28話 神ナギの戦い
「アルク、さすがにくつろぎすぎなんじゃないのか?」
「アルクくん。私もそう思うよ」
「わらわもじゃな。アルクは戦いを舐め過ぎじゃな」
え? 僕が? もう1泊しようって言ったのはレオンくんなんだよ。
僕達が5日ぶりに戦場に戻ると……神ナギとスライムの攻撃速度が上がっていた。
激しい激しい攻撃と攻撃。
でも……。
「え~っと、街に戻ろうか」
「ふふっ。本当にいいの?」
イリスちゃんはそう言うとスライムくんに回復魔法を。
「はぁ~アルクは戦いを舐めてるよな~」
レオンくんもそう言うとスライムくんに回復魔法を。
「じゃな。アルクはもっと真剣になる必要があるのじゃな」
ホーラちゃんもそう言うとスライムくんに回復魔法を。
僕には何となく分かる。スライムくんの体力が全快したのだと。
街へと歩き出した僕達の後ろから声が。
「貴様ら~~~。振り出しに戻ってしまっただろうが~~~」
泣きそうな神ナギの悲痛な叫び声が。
「ヘンタイがもう1人増えそうだな」
「ふふっ。大丈夫なんじゃない? 勝者は1人なんだから」
「スライムが勝てばよいのじゃが」
え~っと……スライムくんが勝ったら、今度は僕が?
神ナギが頑張ってスライムくんを満足させてくれたらいいんだけど。
「やはりヘンタイが増えたな」
「ふふっ。ヘンタイに目覚めたみたいだね」
「スライムの攻撃をあれだけ受けて興奮してるとは、ヘンタイ過ぎじゃな」
5日後に戦場に戻ると神ナギの目に力が戻っていた。
あの目は……ヘンタイの目……というより、勝利を確信しているのかな?
スライムくんの体力が10%を切っているように感じる。しかし神ナギの体力はまだ……100%? 減ってない?
「アルクくん、どうしたの?」
「え? え~っと……。何となくだけど、神ナギの体力が減ってないように感じるんだよ。スライムくんの体力は10%以下に感じるのに」
「ふふっ。神様なんだから回復魔法くらい使えるんでしょ」
「あっ。なるほど」
「ふふっ。だからこうすればいいんだよ」
イリスちゃんはスライム目掛けて矢を放つ。
神ナギは叫ぶ。
「貴様ら貴様ら許さぬぞ~~~」
スライムくんの体力は全快したようだ。
さすがエリクサー。
イリスちゃんが矢にエリクサーが入った瓶をつけていたのだ。
僕達に向かってきた神ナギ。
仕方ないので僕は槍を出して迎え撃つことにした。
吹き飛ぶ、神ナギ。
スライムくんから背中に体当たりされたようだ。
神ナギは僕達を狙う余裕がなくなり、再びスライムと攻撃し合う。
「え~っと……街に戻ろうか」
「ぐっ。逃がすものか。グハッ。全てを滅ぼせ、ムスペルよ。ぐふっ」
神ナギがそう言うと僕達の前に現れた。
「あっ。お得なゴーレムだ」
あれ? お得じゃないのか?
「イリスちゃん。冒険者ギルドの依頼じゃないからゴーレムを倒しても討伐報酬は貰えないのかな?」
「ふふっ。私が責任をもって討伐報酬を払わせるから、どんどん倒していいよ」
イリスちゃんにそんな力が?
よく分からないけど報酬が貰えるなら、いっぱい倒したいよね。
最後のゴーレムもあっさりと倒れる。
「30匹しかいなかったね」
「ふふっ。10匹で世界を滅ぼせる力があるんだけどね」
「あの巨大な拳で殴られたり、巨大な足で踏まれたりすれば、ヘンタイ以外は一撃で死ぬんだけどな」
「わらわ達じゃ、回復力の高い巨兵の体力を減らすのは至難なんじゃがな」
そんな目で見ないで欲しいんだけど。
僕はヘンタイじゃないのに。
僕達は3日後に戦場に戻った。
神ナギがヘンタイに目覚めてたからね。
神ナギが言う。
「近づけば殺す。もう回復はさせない」
僕達に向けて殺気を放つ神ナギ。
さすがに無理そうだ。
レオンくん、イリスちゃん、ホーラちゃんでは。
「死ね、円風斬り」
神ナギが回転しながら剣技を放つ。
痛いっ。痛いけど、でも連続攻撃よりマシだね。
僕はスライムくんに近づき、エリクサーを振りかける。
「頑張って、スライムくん」
スライムくんは左右にゆっくりと震える。
何となく、喜んでいるように感じる。
まだ戦い続けることが出来るのだと。
2日後に僕達が戦場に戻ると神ナギが必死な顔でスライムくんに物凄い速度の連続攻撃を。
神ナギは僕に気づくとギョッとした顔に。
「もう戻って来たのか……」
歯を食いしばる神ナギ。
もう? いい温泉があったので、のんびりくつろいでたんだけど……。
「グハッ。貴様ら私が必死に必死に戦ってる時に~~~」
めちゃくちゃ怒ってる神ナギ。
あっ。僕の考えてることが読めるんだったよ。え~っと……ごめんなさい。
僕がスライムくんに近づこうとすると必死に邪魔してくる神ナギ。
「円風斬り。乱連続回転斬り」
必死に必死に邪魔してくる神ナギ。
僕は気にせずに進む。スライムくんの元へ。
痛いっ。痛いけど、痛いけど、僕の代わりにスライムくんが戦ってくれてるんだから、これくらい我慢だ。
僕はエリクサー入りの瓶を神ナギから破壊されないように注意しながら、スライムくんに接近。
« エリクサーはいらない。アルク、俺は大満足だ。後はアルクが戦っていいぞ »
え? 満足?
« ああ。大満足だ »
え~っと……僕は戦いたくないんだけど……スライムくんは?
« さすがに少し疲れたよ。後は任せたぞ »
え? 僕じゃ勝てないんだけど……。ほら、あの神様の動き速いでしょ。
« それもそうだな »
だよね。じゃあ、スライムくんが……?
『真奥義、50連続突きを進化させますか』
え? ダンジョンじゃないのに?
« 進化させれば当たるようになるからな »
え~っと……進化させたら僕が戦わないといけなくなるんだよね。
覚えたくなかったけど……。
覚えたくなかったけど……。
僕は槍を取り出した。
「神奥義、必中100連続突き~~~」
めちゃくちゃ速い突き。
自分で突いているのに、よく分からない速さ。
「うぐっ。ぐっ。私の速度より速いだと?」
そうか。必ず当てるためには、速度も必要なんだね。
突きが終わると涙目の神ナギと目が合う。
僕は気にせずに。
「神奥義、必中100連続突き~~~」
「貴様貴様貴様~。許さぬぞ~~~」
めちゃくちゃ怒ってる神ナギ。
僕は気にせずに。
「神奥義、必中100連続突き~~~」
僕の連続突きが終わると神ナギが慌てて攻撃してくる。
「神奥義、神速連続連続連続斬り」
痛いけど痛いけど僕の目では見えない神ナギの剣技。
僕は気にせずに。
「神奥義、必中100連続突き~~~」
「神奥義、神速連続連続連続斬り」
「アルクのヘンタイ度合いが、進化してないか?」
「ふふっ。ヘンタイの極みに辿り着いたみたいね」
「アルクはセレスを越えたのか? さすがのセレスもこれ程ヘンタイじゃなかったと思うのじゃが」
必死に必死に痛みを我慢して戦っている僕の後ろの方で、ベッドの上でくつろぎ、レオンくんとイリスちゃんとホーラちゃんがそんな酷いことを言っている。
「ぷはー。神奥義、必中100連続突き~~~」
「しぶとい奴め。貴様が時々飲んでるそれはなんだ。神奥義、神速連続連続連続斬り~~~」
「え~っと、エリクサーのこと? 大丈夫ですよ。まだ500本以上あるので。神奥義、必中100連続突き~~~」
「エリクサーだと? 8時間に1回飲んでるということは貴様の体力も魔力も大したことなさそうだな。神奥義~。神速連続連続連続斬り~~~」
「え? 体力と魔力はそんなに減ってないよ。水分補給と眠気覚ましのために飲んでるだけだから。神奥義~。必中100連続突き~~~」
「エリクサーで水分補給? エリクサーで眠気覚ましにだと? ふざけるな~。そんな嘘が私に通じるとでも思っているのか。神奥義~。神速連続連続連続斬り~~~」
嘘じゃないんだけど。もしかして罠? ギリギリまでエリクサーを使わせないようにして僕を倒そうとしているのかな? でも、それは意味ないよね?
「くっ。なんて体力と魔力なんだ。私がこれだけ攻撃してるというのに。神奥義、神速連続連続連続斬り~~~」
「スライムくんがスキルをくれたからですよ。神奥義~必中100連続突き~~~」
「スキル? ちなみに? 神奥義~、神速連続連続連続斬り~」
「完全回復魔法と魔力量めっちゃ軽減ですよ。神奥義~必中100連続突き~~~」
「は? 完全? 軽減? めっちゃ? ちなみに貴様の残り魔力は? 神奥義、神速連続連続連続斬り」
「残り80%ですよ。後4日は持ちますよ。神奥義~必中100連続突き~」
「あのスライムは……神?」
神ナギの動きが止まる。
僕は気にせずに。
「神奥義~必中100連続突き~~~」
神はジッとスライムくんを見つめている。
僕は気にせずに攻撃を続ける。
「神奥義~必中100連続突き~~~」
神ナギの呟きを聞いたホーラちゃん達が言う。
「やはりセレスじゃたか」
「ふふっ。神様以外に凄いスキルを与えたり、進化させたり出来ないよね」
「だな。アルクと長く遊ぶためだけに、アルクにチートなスキルや武具を与えたんだろうな」
ホーラちゃんとイリスちゃんとレオンくんの話に神ナギが反応する。
「やはりセレス様」
神ナギはそう言うとスライムくんに向かって……土下座?
さすがに……僕も攻撃を躊躇ってしまう。
え~っと攻撃したら……ダメだよね? チャンスだと思うんだけど……。
「申し訳ございませんでした。セレス様が創造した種族達を私が創造した種族達が滅ぼしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
土下座のままでスライムくんに謝り続ける神ナギ。
僕はよく分からなかったのでホーラちゃんに、こっそり教えてもらう。
世界の歴史をね。
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