第26話 神






「僕の話を聞いてないだろ。僕を完全に無視するとは、いい度胸だ。神奥義、光輝爆剣」


「神奥義~~~。50連続突き~~~」


「ぐっ。いきなり僕に攻撃変更? 仲間を諦めたのか? 連撃嵐」


「神奥義~~~50連続突き~~~。もう大丈夫なんだ。友達が来てくれたから」


「くっ。何が友達だ。フェンリルの群れから3人を守れる奴なんていないだろ。連撃嵐」


「神奥義~~~50連続突き~~~。僕の友達はね、僕のこの突きを5日間も耐えることが出来るんだよ」


「くっ。嘘をつくな。こんな馬鹿げた攻撃を耐え続けられる奴はいない。連撃嵐」


「神奥義~~~50連続突き~~~。周りを見る余裕もないみたいだね」


「ちっ。馬鹿にしやがって。何だ? あれは……」


「神奥義~~~50連続突き~~~。攻撃する余裕もなくなったかな?」


「ちっ。本当に誰かいるなんて……? 青い塊?」


「神奥義~~~50連続突き~~~。早く君を倒さないと、友達が君を倒してしまいそうだよね」


「僕を倒す? 僕は勇者。真の勇者なんだぞ。神奥義~光輝連撃剣~」


「神奥義、50連続突き。あ~もう倒しちゃったね」


「くっ。何なんだよ、君のその余裕は~。僕の神奥義をまともに受けてるのに。え? ス、スライム? グハッ。くっ。待て、ぐふっ。ぐっ。グハッ。止め、グハッ。ぎゃはっ。止めてくれっ、ぎゃはっ。ぎゃはっ。ぎゃはっ」


避けることの出来ないスライムの10連続体当たりに預言者あつしは涙を流しながら足を止めた。


僕はこのチャンスを逃さない。


「神奥義。50連続突き~~~」


「止めてくれ~~~」


僕の攻撃は全て命中する。





「え? え? 嘘だよね?」


預言者あつしは倒れたのだが……。


倒れたのだが……。


スライムが震えている。


物凄い高速で震えるスライム。


「僕達は友達だよね?」


だよね? スライムだって言ってたよね?


だよね?


ね?


「ぎゃはっ」


痛いよ。僕の友達なんだよね?


「グハッ」


痛いから。違うの? じゃないの?


「ぐふっ」


痛いっ。前よりも痛く感じるんだけど?


「ぎゃはっ」


痛いから。まだ終わらないんだよね?


「うぎゃ」


痛っ。本当に痛いんだよ。


「ぐふっ」


痛いっ。ほら、やっぱり。HPが2も減ってるじゃないか。


「グハッ」


痛い。僕も泣いちゃうよ。


「ぎゃはっ」


痛い。まだ続くんだよね?


「グハッ」


痛いっ。痛いんだから~


「うぐっ」


ううっ。酷い。酷すぎだよ。


「僕達は友達なんだよね?」


スライムは左右にゆっくり揺れているだけで何も言ってくれない。


「僕の言葉が分かってるんだよね?」


スライムは左右にゆっくり揺れている。


僕は怒ってたのに、レオンくんがとんでもないことを言う。


「アルク。アルクの攻撃を待ってるみたいだぞ」


イリスちゃんまで、とんでもないことを言う。


「ふふっ。物足りなかったみたいだよ。アルクくんに遊んでもらいたいみたいだね」


ホーラちゃんまでも。


「わらわ達を助けてくれたのじゃ。遊んでやれ、アルク」


預言者あつしのことなんか、もう忘れてしまったように戦いをうながすレオンくんにイリスちゃんにホーラちゃん。


絶対に嫌なんだからね。


「ふふっ。頑張ってね、アルクくん」


「ヘンタイのアルクに付き合えるのは、そのスライムしかいないよな」


僕はヘンタイじゃないし、スライムの方が……。痛くないのかな? 僕の方が何倍も攻撃していたのに。


「スライムくんは痛くないの? 僕は凄く痛いんだ。だからね、スライムくんとは戦いたくないんだ」


レオンくんが言う。


「アルクもヘンタイだけど、そのスライムもヘンタイだよな~」


イリスちゃんが言う。


「ふふっ。アルクくんよりヘンタイかも知れないね」


レオンくんとイリスちゃんの言葉を聞いたホーラちゃんが驚きながら言う。


「アルク以上のヘンタイじゃと……。まさかまさか……ヘンタイセレスなのか?」


ヘンタイ=セレスって。さすがにそれはないでしょ。


スライムは左右にゆっくりと揺れている。


なぜか……僕の攻撃を待っているような感じがするのだが……。


僕は本当に戦いたくないんだからね。


「セレスさんって、どんな人だったの?」


僕の問にホーラちゃんが答えてくれる。


「セレスはヘンタイじゃった。弱いのに、弱いのに、常に先陣を切って戦い続けてたのじゃ」


「弱い? あれ? セレスさんは確か……剣神セレスって呼ばれていたんじゃ?」


「どんな敵にも剣で戦い、最後に立ってるのがセレスじゃったからな。剣術を習ったこともなかった素人なのにじゃ」


「剣神って呼ばれていたのに素人?」


「更にじゃ。ヘンタイと呼ばれていた所以は敵の攻撃を一度も避けなかったからじゃ。」


「ヘンタイだ。攻撃を避けないなんて、本当にセレスさんはヘンタイだったんだ」


「誰が言ってるんだよ」


「ふふっ。アルクくんも一度も避けてなかったよね」


「セレスと同じじゃな」


「絶対に違うから」


「同じだな」


「ふふっ。同じだよね」


僕はヘンタイじゃないのに。皆を守るために必死に戦ったのにヘンタイよばわりは酷すぎだよ。


「ほら、アルク。スライムが待ってるぞ」


スライムは左右にゆっくり揺れている。


「ふふっ。そのスライムと戦えるのはアルクくんしかいないんだからね」


絶対に嫌。


誰か助けてくれないの?


僕の味方はいないの?


「頑張るのじゃ、アルク」


「貴様らに死を。僕の残りの命を捧げるから神ナギよ、皆殺しにしてよ。世界を滅ぼしてくれ~~~」

 

預言者あつしがそう言うと空が光り、雷が落ちる。預言者あつし目掛けて。

 

そして天から光の柱が僕達の前に。


光の柱の中から現れる。


神々しい人物が。


さすがの僕でも一目で分かったよ。


蛇神が現れたのだと。


そして僕はスライムと戦わないで、いいのだと、安堵した。









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