第21話 僕の友達










「レオン、もう1度だけ言うぞ。我らに、つけ」 


「何度も言っただろ。お前達が強ければ俺達エルフ族は味方するとな」


「それは人族が我らより強いと言っておるのか」


「そんなの知らねぇよ。だから実力を示してくれよ。ダンジョンを突破してな」


「くっ。何なのだ、あのダンジョンは。あのスライムは」


「ただのスライムだろ。俺達は何度もスライムを倒して突破したぞ」


「ふん。それは昔のことなのだろ」


「ふふっ。この弓、いいでしょ」


「そ それはアポンの弓か」


「この杖も良いのじゃよ。わらわの魔力がよく馴染む」


「それはへメスの杖か」


「アルクも見せてやれ」


「え? この槍を?」


「グ、グエンの槍!! やはりグエンも」
























「さっきの人達はレオンくんとイリスちゃんの知り合い? 頭に角が生えてたよね?」


「ああ。12魔将の1人、バエルだよ」


「え~っと……勇者を倒したあのバエルじゃないよね?」


「ふふっ。大丈夫。私達の方が強いから」


「だな。俺1人でも楽勝そうだったな」


「え? 強そうな人、沢山いたよ」


「そうか? 12魔将も、残りバエルとコブヤイだけだろ」


「え? 残り2人? 10人は?」


「アルクは何を言っておるのじゃ? 宝箱の中身を見たじゃろうが。わらわの杖も、アルクの槍も、レオンの剣も、イリスの弓も、魔将を倒した証」


「ふふっ。アルクくんの友達がね」


え? 友達? 前も言ってたよね。宝箱の中身はレオンくんとイリスちゃんがいろいろな物をダンジョンに吸収させてるから、よく分からないんだよね。まあ、僕も、スライムとの戦いは最後だと決めていたから、大事な大事な剣を吸収させて進化させたんだけどね。















「3日間で多くの魔物を倒して証明してください」


「多くの? 魔物の強さは関係ないのですか?」


「魔物と遭遇するのは運ですからね。何匹倒したか、その腕輪に記録されます。魔力を込めれば、いつでも確認出来ますよ」


僕達は魔王領に隣接する大国ベジエスト王国に来ている。


魔王軍と戦える実力があるのか判断するために魔王領の森で魔物と戦って欲しいのだと。


僕達の他にも冒険者や兵士が千人以上参加するのだと。







「勇者って、いっぱいいるんだね」


「ふふっ。各国が最強の兵士や冒険者を勇者として送り込んで来てるからね」


「ちょっと強いくらいで勇者と思い込んでいる奴らも多いみたいだな」


「実力がない奴らが何人集まっても、足手まといになるだけなのじゃがの~」


















「アルクは何をしておるのじゃ?」


「ふふっ。魔物退治ですよ。私達もやりますよ」


「だな」


「わらわもか?」























「アルク殿が……1306匹。レオン殿が……759匹。イリス殿が……1015匹。ホーラ殿が…………5662匹です」


「は? 何だ、その馬鹿げた数字は。さすがにありえぬであろう」


「そう思いますが……腕輪に細工はされていないかと」


「されていなかったのか……」


「ちなみにハスラ殿が5位で26匹です」


「それが普通というか、1日に倒せる限界の数字だよな」
























「何なのだ、この数字は。あの森に出る魔物はA級以上なのだぞ。腕輪は交換したのか?」


「はい。最新の腕輪に交換しています」


「なら、この数字は?」


「正しいと判断するしか」


「1位のホーラ殿のこの討伐数5372匹が本当のはずがないだろうが。こんな出鱈目な数字を発表すれば各国から我が王国が非難されるぞ」


















「レオン殿。今日は兵士を同行させてください」


「別にいいが、足手まといにならない兵士にしてくれよ」


「ありがとうございます。同行させて頂く兵士は王の親衛隊の中でも、上位の5名ですので安心してください」











僕達の後をついてくる強そうな5人の兵士さん。


「レオンくん、見られるのは」


僕が小声で言うとレオンくんがため息を。


「はぁ~。見られるはずないだろ。誰が俺達について来れるんだよ」


「ふふっ。昨日もハスラっていう人のパーティがついて来ようとしてたんだよ」


「え?」





意味が分からなかったのだが、いつも通り移動する。






「敵を斬り裂け。自在剣、レーヴァテイン~」


遭遇した魔物をレオンくんが瞬殺。


止まらないレオンくん。


イリスちゃんがその後に続いて走り、


その後を僕がホーラちゃんをおぶって走る。


「魔狂風鳥の群れを瞬殺したぞ」


「ああ。やはり強いな」


「しかし、あの記録は」


僕の後を5人の兵士さん達が走ってついて来ている。










「敵を斬り裂け~。自在剣、レーヴァテイン~~~」


四方から現れた大きな猿の魔物の群れ。


レオンくんが前方の魔物を倒してくれたので、僕達は左右から向かって来る魔物の攻撃を回避しながら進む。












「あれ? 兵士さん達は?」


「走って街の方へと逃げてるのじゃ。まあ、大丈夫じゃろう」


「何かあったのかな?」


「アルクは馬鹿なのかの」


「ああ、そうだな」


「ふふっ。アルクくんは常識が分かってないからね~」


「え?」






















「1位はホーラ殿で17355匹。2位はアルク殿で3921匹。3位はイリス殿で3201匹。4位がレオン殿で1987匹。5位がハスラ殿で51匹です」


「どうすればいいのだ。公表するべきなのか……」


「順位だけ公表すれば問題ないのでは……」


「あっ。そうだな」















「お肉~~~」


「ぷはー。美味しい~。で? で? 今日のアルクちゃんの活躍は?」


「はぁ~。狂戦士ハスラの心をズタズタにしたそうだぞ」


「ぷはー。何それ~」


「大国ベジエスト王国の兵士で世界最強だと謳っていたのだかな」


「ぷはー。さすがアルクちゃん」


「院長先生強い~~~」


「お肉も強い~~~」


「お肉~~~」













アルクのダンジョンのスライム……の出番はなかった。

















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