第20話 3人目の仲間
「アルク、暇だ」
「アルクくん、体調は?」
「おはよう、レオンくん、イリスちゃん。ようやく体力と魔力が回復したよ」
「3日も寝てたんだから、当然だろ」
「ふふっ、激闘だったからね」
「最近、ギリギリまで体力と魔力が減ることなんてなかったからね」
「アルクがケチってポーションと魔力ポーションを飲まなかったのが悪いんだろ」
「ふふっ。沢山あるのにね」
はぁ~。飲めるはずないでしょ。ダンジョンで進化させた最上級ポーションと最上級魔力ポーションなんて。最上級の上なんだよ。いったい、いくらするの?
「レオン、イリス、彼が勇者様なのだな」
「ふふっ。間違いありません。勇者アルク様です」
「勇者なのかは分からないが、とにかく強い。英雄ノアよりも、ずっとずっとな」
「ノア様よりもか。最強の冒険者と言われているゼウルスは?」
「ノアが勇者の可能はあると思っていたが……アルクと比べるとな。ゼウルスはダメだな。俺より弱かったから」
「ノア様よりも強いのか……。それで仲間になれそうな者は?」
「厳しいな。今のところ、仲間は2人だけだな」
「勇者様の仲間は4人なのだぞ。ん? ……アルク様しかいないが……仲間の2人は?」
「ふふっ。私」
「俺」
「イリス、レオン、遊びではないのだぞ。2人の才能は認めているが、まだまだ未熟。せめてガークを超える強さを身につけなければ、勇者の仲間とは呼べぬぞ」
「ガークなら倒したぞ」
「ふふっ。私はターナさんに勝てたよ」
「なっ。エルフ最強のターナに? 里の守護戦士ガークにも?」
「まあ、アルクと比べると全然何だがな」
「ふふっ。私達は普通だからね~」
「里を出て、たった3年で……」
「アルクと一緒にダンジョンを突破しまくったからな」
「ダンジョンを……。……そうなのか。いないのなら、ガークとターナを仲間にするしかないのか」
「無理だな」
「ふふっ。ターナさんとガークさんでも足手まといになるよ」
「ガークとターナが?」
「ああ。でも1人だけ、心当たりがある」
「ふふっ。だから里に帰って来たのよね」
「ワシか?」
「なわけねぇだろ」
「ふふっ、ホーラ様だよ」
「イリス?」
「前勇者の仲間だったなら、問題ないと思うぞ」
「レオン? 言っている意味が分かっておるのか?」
「ああ。俺はホーラ様しかいないと思ってるぞ」
「ふふっ。アルクくんの実力を知って貰うためにも、ちょうどいい相手だと思うよ」
「ちょうどいいだと? 黒魔鷲獅子の強さは勇者様以上だったそうなのだぞ。だからホーラ様が自らを犠牲にして封印するしか、手立てがなかったというのに」
「そうなのか?」
「そうだったんだ。じゃあ~ホーラ様でも足手まといになりそうだね」
「だな。宛が外れたな」
「イリス? レオン?」
「アルク、今から鳥頭の犬と戦ってもらうからな。サクッと倒してくれ」
「鳥? 普通の犬の魔物より弱そうだね」
「ふふっ。飛んで逃げられないように先手必勝だからね」
「空を飛べる頭が鳥の犬?」
僕はレオンくんの後に続き、洞穴の中へ。
「レオン。万が一の場合は再びすぐに封印するからな。封印に巻き込まれても知らぬからな」
「大丈夫だ」
レオンくんはそう言うと地面に描かれていた魔法陣を剣で破壊。更に扉に付いていた青い宝石を取り外し……空間収納の指輪の中へ。
洞窟の中に入って来たのは僕とレオンくんとイリスちゃん。
そしてエルフの長老とエルフの戦士30人。
僕の実力を知りたいそうなのだが……弱い鳥犬の魔物と戦ってほしいなんて……僕はかなり、見くびられているよね。
扉を開けると……女の子?
小さな女の子が壁にもたれかかって……寝ているのだが……。
部屋の中央には鳥? え~っと鷲? 小型犬を想像してたんだけど……超大型犬?
僕は走って鳥犬の魔物に近づく。
「神奥義、50連続突き~~~」
「やり過ぎだな」
「ふふっ。30連続でよかったよね」
「ごめん。これじゃあ、売れないよね。もしかして……高級な素材だった?」
「ああ、アルクのせいで金貨500枚は下がったな」
「え? 元は?」
「ふふっ。金貨1000枚以上だと思うよ」
「これでも500枚の価値があるの?」
「それくらいはな」
「ふふっ」
僕達が話していると小さな女の子が目を覚ます。
「勇者? いや……そっちが……?」
小さな女の子はそう言うと僕の顔をジッと見たり、レオンくんをジッと見たり、イリスちゃんをジッと見たり……僕達の顔を何度も何度も交互に見つめている。
「ふふっ。おはようございます、ホーラ様。」
「そ そなたは……違うが……似ている」
「ふふっ。お祖母様にですか」
「お祖母様? と言うと……孫?」
「勇者ノルンの孫、イリスです」
「同じく、レオン。そして、コイツがこの時代の勇者。名はアルク」
「おお。そなたもノルンの面影が」
小さな女の子ホーラちゃんは目を輝かせ、僕をジッと見ている。そして振り返ると僕達の後ろでエルフ達が全員、ひざまづいていた。
「レオン、その剣はレーヴァテインじゃな」
「はい。魔将グエンが持っていた剣ですね」
「わらわもレーヴァテインがSSS級だとは知らなかったぞ。それに盾まで。イリスの装備もか。んん? アルクの鎧は??? 神級か???」
「ふふっ。アルクくんはその鎧を鍛えるためにダンジョンで強いスライムと1日中戦ってたんですよ」
「アルクはヘンタイだからな。俺達の装備は全てアルクのダンジョンで進化させましたよ」
「ダンジョンで進化?」
ホーラちゃんに説明するイリスちゃんとレオンくん。
ホーラちゃんは興味津々で2人の話を聞いている。
「そこに行けば、わらわの装備も。アルク、頼めるか」
「え? む 無理だよ」
「どうしてじゃ。わらわも魔王軍と戦うために強くなりたいのじゃよ。頼む、アルク」
戦う? ホーラちゃんが?
ホーラちゃんは小さな女の子。とても戦えるとは思えない。
だいたいあのスライムと戦うのはもう嫌だ。
「ご、ごめんね、ホーラちゃん。僕には無理なんだよ」
何度も何度もホーラちゃんからお願いされたけど、僕はその度、断る。
「頼むアルク。1回だけでいいのじゃ~」
「ごめんね。僕じゃ、勝てないんだよ。だよね、レオンくん」
ホーラちゃんが諦めてくれないのでレオンくんに助けを求めた。
「確かに勝てないかもな」
レオンくんがそう言ってくれたのに。
たのに。
余計なことをイリスちゃんが。
「ふふっ。ポーションと魔力ポーションを使えば勝てるよね」
「まあ、そうだな」
裏切るレオンくん。
「そうなのか。ポーションはわらわが用意しよう。頼むぞ、アルク」
僕は反論出来ずに……涙目に。
「ウマウマ~~~。美味しいのじゃ~~~」
「院長先生の奢りなんだよ。毎日お肉食べれるからね」
「うふぉ~。毎日食べれるのか~」
「そうだよ、ホーラちゃん。院長先生の孤児院に来たから、もうひもじい思いはしなくていいんだよ」
「わらわはずっと1人で何も食べていなかった。こんなに美味しい物が沢山あるとは……」
「泣かなくていいんだよ~。皆で一緒に沢山食べようね~」
「ウマウマじゃ~~~。ウマウマなのじゃ~~~」
「くそっ。何が魔将だよ。全く役に立たねぇじゃねぇか~。チッキショ~~~」
「5人は死んだ」
「あの5人が? コブヤイ、そこは本当にダンジョンなのか?」
「間違いなくダンジョンだ。今回は人族と共に中に入り、戦いの映像を記録してある。すぐに送る。見れば全てが分かるだろう。このダンジョンには入ってはならぬとな」
アルクのダンジョンのスライムの伝説は続く。
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