第19話 友達
「神奥義、50連続突き~~~」
まだなのか?
「神奥義、50連続突き~~~」
スライムは?
スライムは……震えている。
何だか……何だか……今までよりも高速で。
ってことは?
「グハッ」
痛い~。
「グハッ」
痛すぎる~。
「グハッ」
ううっ。やっぱり。
「グハッ」
ううっ。酷い。4連続はなしだよ~。
「グハッ」
ううっ。5連続? 酷すぎだよ。
スライムはようやく動きを止めた。
「僕は成長したと思ってたのに。勇者と言われて……自分でも強くなったのかな~って思ってたのに~。神奥義~50連続突き~~~」
萎んでくれないスライム。
「神奥義、50連続突き~~~。どうだ?」
スライムは……萎んでいない。
「グハッ」
ううっ。1回でお願い。めちゃめちゃ震えてたけど。
「グハッ」
ううっ。まだ終わらないんだよね。
「グハッ」
ううっ。やっぱりまだなんだよね。
「グハッ」
ううっ。本当に痛いんだからね。
「グハッ」
ううっ。酷すぎだよ~~~。
僕は泣きながら槍で突く。
「神奥義、50連続突き~~~」
スライムは……。
スライムは……。
萎んでくれた。
や、やっと終わった。
僕は安堵し、振り返る。
……。
……。
……。
レオンくんとイリスちゃんは……寝ていた。
【ダンジョンボス討伐達成】
【ダンジョン突破特典:常備スキル 真のヘンタイ勇者】
「アルク、戦いの日が迫っているようだ」
宝を買取してもらいに冒険者ギルドに立ち寄っただけなのに、真剣な表情でそんなことを言うヤマラさん。
めちゃめちゃ疲れてるのに……明日じゃ駄目なのかな?
さすがに言える雰囲気じゃないんだけどね。
話を聞くと、この街の方角へ移動している6人の魔族が目撃されていたのだと。
その魔族の1人の特徴が、勇者の仲間だった剣神セレスを倒した12の魔将の1人に似ていたのだと。
魔将グエン。
その特徴は真っ赤な鎧。
真っ赤な盾。
そして……真っ赤な剣。
真っ赤な剣……。
僕が苦笑いしているとヤマラさんが睨んで来た。
「アルク。剣神セレス様は歴代最強の剣士だったのだぞ。魔将グエン1人に対して勇者様とセレス様。そして3人の仲間の5人で戦ったにも関わらず、倒されたのだからな」
少し怒っているヤマラさん。
僕が振り返るとレオンくんはダンジョンの宝箱の中に入っていた剣を見つめながら、ニヤニヤしている。
「アルク、聞いてるのか?」
「え~っと……とりあえず……この鎧の買取をお願いします」
「おい、アルク。今は……? 何だ……このヤバそうな鎧は? って!! レオン!! その剣は……」
「いいだろ。ずっと欲しかった炎の魔剣だ」
「……なわけないよな? なあ、アルク?」
「え~っと……真っ赤な盾もあります」
「真っ赤な鎧。真っ赤な剣。真っ赤な盾」
「買取は鎧だけでお願いします。レオンくんが剣と盾を使うので」
「アルクが倒したのか?」
僕は首を横にブンブンと振る。
僕が魔王軍の魔将を倒せるはずないよ。
「じゃあ、レオンが?」
「いや、俺じゃない」
「じゃあ、いったい誰が?」
「ふふっ。アルクくんの友達だよ」
「「 友達? 」」
驚くヤマラさん。そして驚く僕。
友達? 誰のこと?
「アルク院長先生に乾杯~~~」
「院長先生、いつもありがとう~~~」
「お肉~~~」
「ぷはー。今日も最高~~~。で? アルクちゃん、今日は何を倒したの~」
「スライムだよ」
「「「 スライム!! 」」」
なぜか苦笑いする皆。
それから皆の食事のペースが落ちたのだか……。
「グエンからな連絡は?」
「いえ、ありません」
「レオンからは?」
「ありません」
「そうか。ならファムルに突破させろ」
「魔将ファムル様にですか」
「ああ、更にコブヤイを見張りに付けろ。ファムルにも伝えずにな」
「伝えずにですか?」
「レオンの罠の可能性がある。人族の領土のダンジョンに我らを誘き寄せ、大人数で待ち伏せしている可能性がな」
「ファムルは死んだ。ダンジョンボスに敗れてな。グエンもなのかも知れないな」
「それは確かなのか?」
「ああ。間違いない。ファムルはダンジョンボスに挑み、部屋から出て来ることはなかった」
「ダンジョンボスはスライムなのだろ?」
「それは分からないが、レオンの情報が正しければな」
「グエンとファムルより強いスライム……」
アルクのダンジョンのスライムの伝説は続く。
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