第17話 賢者リューナ











「また石人形の討伐依頼があるね」


「さすがに多いな。これで12回目だろ」


「ふふっ。もちろん受けるんでしょ」


「そうだね。弱いのに報酬がいいからね」









僕達は冒険者ギルドの転移の魔法陣で石人形討伐に向かった。






















《 バタンッ 》


部屋の中央の光りの中から現れたのは人?


「え? 魔物じゃない?」


「アルク、魔物だぞ。不死王と呼ばれていて恐ろしい魔法を使うぞ」


「ふふっ。アルクくん、頑張って」


あれ? 僕が戦ってもいいの?


このダンジョンには2人がどうしても行きたいって言うから石人形を倒して、すぐに来たというのに。


「先手必勝。スキル、5連続突き」


『グッ。この威力に聖槍。貴様は勇者か?』


「え? 喋った? とりあえず、スキル5連続突き」


……???


ゾンビは倒れて……その横に宝箱が現れた。


「さすがアルク。まさか瞬殺するとは……」


「ふふっ。だから言ったでしょ、アルクくんは勇者に間違いないって」


「え? ゾンビを倒しただけだよ?」

















《 バタンッ 》


部屋の中央の光りの中から現れたのはゾンビ。


「スキル、5連続突き~~~」


『グッ。進化した我の力を見せてやろう』


「スキル、5連続突き~~~」


……。



「はぁ~。また瞬殺かよ」


「ふふっ。あっ、当たりだよ」


え~っと……進化してた???


危険な魔法を使うから、レオンくんとイリスちゃんがどんどん攻めろって言ってたのに……。




















「奥義、20連続突き~~~」


ゾンビは倒れて宝箱を出した。


「はぁ~何だよ、その無茶苦茶な突きは?」


「え? 2回もスキルを使うのは面倒くさいな~って思ってたら、覚えれたんだよ」


「ふふっ。また手に入ったわよ」


「よし、この調子でどんどん集めるぞ」


レオンくんとイリスちゃんは指輪が欲しいらしい。


「レオンくんとイリスちゃんは戦わなくていいの? 弱い魔物だから訓練になると思うよ」


「あ~今回はアルクに任せるよ。即死無効の常備スキルは手に入ったけど、いろいろ危険な魔法を使うらしいからな」


「ふふっ。私もパス。アルクくん、指輪集めが終わったら、進化させるためにアルクくんの街に戻るからね」


「え~っと……まだ魔法を使われてないんだけど」




















「奥義。20連続突き~」


ん? 倒せない?


ふらついているが倒れないゾンビ。


なら、もう1度。


「奥義。20連続突き~」


僕が2回目のスキルを使うとゾンビは倒れて宝箱を出した。


「まだまだ行けそうだな」


「ふふっ。アルクくんなら、後20回は倒せそうね」


え? 既に20回も倒してるのに?


「それにしても、進化しても強くならないね」


「はあ? どこがだよ。底知れぬ魔力を感じたし、装備もS級だぞ。杖もそうだが、このローブは高く売れるだろうな」


「え? え? ゾンビの服が? 汚いよね? 穴も沢山開いてるし」


「ふふっ。鎧だと厳しいけど、ローブなら穴が開いても修復出来るよ。それにローブ以外の服も価値がありそうね」


え? ローブ以外? 下着ってことだよね? ゾンビの……。


























「奥義。20連続突き~」


光りの中から現れた瞬間に攻撃したので、ゾンビはまだ攻撃体勢を取れていない。


「奥義。20連続突き~」


スキルを2回使ったのに倒れないゾンビ。


『くっ。さすがは勇者。我は魔物になってしまったのだな』


「え? 人の記憶が?」


『ああ。一時的のようだがな。時間がない、聞いてくれ、勇者よ。魔王の復活は近いのだ。予言では300年後と出ていたが、すぐに復活する可能性もあるのだ。街アンフグに我の屋敷があった。街の南西の場所で街で一番大きな建物だからすぐに分かるだろう。地下室を探してくれ。そこに我の日記があるはずだ』


「え? 日記? え~っと……もしかして……え~っと……これのこと?」


『おおっ、さすが勇者。既に手に入れていたのか。なら話が早い。エルフの里に行ってくれ。タムンヤの子孫がきっと力になってくれるだろう。勇者よ、そなたに全てを託す』


ゾンビはそう言うと……倒れて宝箱を出した。


「勇者……。勘違いしていたようだけど……もしかして……賢者リューナ様?」


「ああ。間違いないだろう」


「え~っと……。だとしたら、勇者様に伝えないと。そうだ。エルフの里に行けば勇者の仲間になるエルフに会えるかも」


「ふふっ。私、知ってるよ。タムンヤの2人の孫の名前を」


「え? 知ってたの?」


「ふふっ。勇者の名前もね」


「え? イリスちゃんは勇者とあったことが?」


「ふふっ。もちろん」


「俺もな」


「よかった。居場所は? 知ってるの?」


「ふふっ。賢者リューナの側にいるよ」


「だな」


「賢者リューナの側? 僕の生まれた街に?」


「タムンヤの孫の名はレオン」


「タムンヤの孫の名はイリス」


「「勇者の名はアルク」」


「レオンくん? イリスちゃん? あれ? 2人はエルフ?」


「ああ。アルク、一緒に世界を救ってくれ」


「ふふっ。これからもよろしくね、勇者様」


「え? え? それは絶対に違うよね。それに……エルフじゃないよね? レオンくんもイリスちゃんも黒髪だし、耳も普通。むしろ、黒髪だから勇者なんじゃ?」


「まあ、勇者の血は引いてるよ」


「ふふっ。私達のお祖母様が勇者だったみたいだよ」


「え~っと……エルフのタムンヤさんが勇者様と結婚?」


「結婚はしてないみたいだがな」













それからもゾンビと何度も戦ったのだが、賢者リューナの意識が戻ることはなかった。

























「アルク院長に乾杯~」


「乾杯~。ぷはー、美味え~」


「お肉~~~」


「さあ、どんどん食えよ。そうだ。アルクが1年ぶりに帰って来るそうだぞ」


「院長さんが~」


「アルクちゃん、帰って来るんだ」


「お土産はお肉かな~」


「前に出かけた時は凄く美味しいお肉だったよ」


「お肉~~」 


「アルクが戻って来るのですね」


「ああ。指輪を進化させるために帰って来るそうだ」


「それは……ダンジョン。大丈夫なのでしょうか? 誰も出て来られないと聞いていますが」


「まあ、アルクなら問題ないのだろ。アルクが倒して進化させたスライム。アルクもまた1年間で物凄く進化してるからな。はぁ~」


「また、アルクが何か?」


「ああ。ダンジョンボスの不死王を50回も倒したそうだ。ダンジョンの近くの街のギルドマスターが好きなだけ倒していいと言ったそうなんだが、限度ってもんがあるよな」
























「人族の領土のダンジョンは何もメリットがないというのに」


「これでエルフ達が我らの仲間になるのだから、安い物だろうよ」


「ほう。本当にダンジョンボスの部屋のみなのだな」











《 バタンッ 》





「本当にスライムなのかよ」


「油断するな。何か変だぞ」


「何がだ? ただのスライムだろ」


「来るぞ。グハッ。うう。なっ、なんて威力だ」


「グエン、攻撃だ。全員で攻撃だ」


「効いてない?」


「火魔法、煉獄弾」


「斬撃にも火にも耐性があるのか?」


「なら、氷魔法、巨大氷柱」


「グハッ。俺の体力を80%以上も削るだと」


「狼狽えるな。80%減っても、すぐに回復魔法で80%回復すれば、我らが負けることはない。レオンの話では人族が1人で倒したそうだぞ。冷静になれ。攻撃。防御。回復。それだけでいいのだからな」





























「グエン……俺の魔力も。すまないが、先に行く」


「な、何なのだ、このスライムは。……レオンは我らを嵌めたのか?」











アルクのダンジョンのスライムの伝説は続く。












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