第16話 もう






「君達には常識がないのかね?」


「え? 順番は守ってますよ?」


「守ってる? 待ってる人がいないから、当然だよね? 君達のせいで」


なぜか怒っているギルドマスター。


「え~っと……もしかして、申請してた日と違ってましたか?」

 

「はぁ~。もういいよ。全て買取で本当にいいんだね?」


「はい。お願いします」


「現役の冒険者がA級の身体能力上昇の指輪を売るなんて……。はぁ~ギルドとしてはありがたいんだが……。はぁ~とんでもない奴らだ」















僕は冒険者ギルドを出ると2人に聞く。


「どうしてギルドマスターは怒ってたの?」


「まあ、アルクのせいだな」


「ふふっ。レオンが我儘だからでしょ」


「え~っと……」


「ふふっ。しばらくは挑戦者が現れないってことだよ」


「アルクのせいでな」


「え? どうして?」


「アルクが10回も突破するからだろ」


「私とレオンだけじゃ倒せないから、他の冒険者達もね」


「え? スライムや狼の魔物より、ずっと弱いよ?」


「だからアルクの基準がおかしいんだって」


「ふふっ。この後すぐにホウアハラ王国に絶対に行くようにだってよ」


「大会でしょ」


「ああ。アルクの実力を知らしめるためのな」


「ふふっ。アルクくんが自分の実力を知るためのね」


「え? 参加しても勝てないよね。強い冒険者や兵士さんが参加するって言ってたからね?」


呆れているような表情のレオンくんとイリスちゃん。


なぜか無言。


「ね?」


「「 ………… 」」




















「勝者、希望の光」


え~っと……僕の実力を確かめるためじゃなかったの?


#また__・__#レオンくんとイリスちゃんだけで倒してしまったのだが……。


「楽勝だったな」


「ふふっ。私達の攻撃力が物凄く上がってるよね」


「え~っと……僕の出番は?」


「おっと、そうだったな。次からはアルクにも戦ってもらおうかな」


「ふふっ。もう少し2人だけで戦ってみたかったんだけどな~」


「え~っと……次は決勝戦だよね?」


この大会は5対5で戦うトーナメント方式なのだが……僕は後ろで見ていただけ。


僕のためって言ってたけど……レオンくんとイリスちゃんが大会に出たかっただけだよね。大会のレベルが低いから、いいんだけど……。



















「ゼウルスを倒して優勝したかったんだがな」


対戦相手のリーダーが話しかけてきた。


「え~っと……ゼウルス?」


「お前達が1回戦で倒したチームのリーダーだよ」


え~っと……誰? 1回戦……。さすがに覚えてないよ。


「え~っと……知り合いでしたか」


「ん? ゼウルスは最強の冒険者……だった。俺達が倒して、最強の称号を手に入れるつもりだったのだがな」


最強? ここまで強い人はいなかったけど? 1回戦……。1回戦は……レオンくんが1人で全員倒したからイリスちゃんが怒ってたよね。


「そ そうなんだ……。きっと、調子が物凄く悪かったんだね」


「ふん。でも、まあいい。森の賢者は勇者の仲間になるために旅をしているんだろ。俺の強さを見せつけ仲間にしてやろう」


森の賢者? 僕のスキルにはあるけど……僕が森の賢者って思ってるのかな?





僕は試合場の中央で開始の合図を待つ。


審判が試合場に近づいて来たので、僕は空間収納の指輪から鎧と槍を取り出し、素振りを???


なぜか凄く動揺し始めた相手チームの5人。


顔色が物凄く悪くなっているのだが?


審判の元に駆け寄る相手チームの5人。





「勝者、希望の光」


「え? え? どうして?」


試合開始の合図もまだなのに?


レオンくんとイリスちゃんが言う。


「だろうな」


「ふふっ。賢い選択よね」


「え? え?」


さっきまで相手チームはやる気満々だったのに? 


いったい何が?


僕は周りを見渡したのだが、何も見当たらない。














優勝賞金は金貨が100枚だけ。


最近、物価が上がっているようなので、孤児院の皆の1回の食事代にもならない。


まあ、僕は何もしてないんだけどね。


冒険者ギルドに立ち寄り、討伐依頼を確認したのだが、冒険者が沢山集まっているせいなのか何も残ってなかった。


この街に来る途中で大きな鶏の魔物と石人形の討伐依頼をしておいて、本当によかったよ。















「アルク院長に乾杯」


「お肉美味しい~~~」


「今日は何に乾杯なんだ?」


「さあ~何でもいいわよ。乾杯~~。ぷはー」


「大型のコカトリスを倒したんだとよ」


「ん? 超巨大ゴーレムを倒したんじゃなかったか?」


「あれ? 武術大会に優勝したのよね?」


「食え食え。そして、どんどん飲め。理由なんて何でもいいんだ。とにかくアルクに乾杯だ」


「美味しい~~~」


「美味しいね。早く院長先生帰って来ないかな~。ありがとうって言いたいのにね」


「アルクはまた大活躍ですか」


「ああ。……院長さん。あなたは賢者リューナを知っていますよね」


「名前くらいでしたら。偉大な賢者様だったのですよね」


「俺は賢者リューナを探すために冒険者を辞めて、この街に来た。手がかりどころか、街の人達は名前すら知らないと」


「それは大昔に活躍された賢者様だからでしょう」


「院長さん以外に知っている人はいないんだ。院長さん、どこで賢者リューナの話を?」


「さあ、誰に聞いたのか。両親に聞いたのか、旅人に聞いたのかも覚えていませんね」


「院長先生の孤児院は物凄く古い建物ですが、まだまだ丈夫そうですよね。作られた時代を考えると、当時は物凄く立派な建物だったでしょうね」


「ははは。確かに昔は立派だったかも知れませんね。私も孤児でしたが、その頃から、そんなに変わってませんね」


「この街で賢者リューナの生きていた時代に建てられたのは孤児院だけです。もしよろしければ調べてもよろしいでしょうか?」


「ははは、構いませんよ。子供達はヤマラさんのことを信用してますから、いつでもよろしいですよ」


「ありがとうございます」


「ははは。#もう__・__#何もないと思いますがね」

















「敵を切り裂け。烈風斬り~~~」


「その身を焼き尽くせ。業火」


「貫け。疾風矢」


「ちっ。全く効いてなさそうだぞ」


「安心しろ。所詮スライム1匹。結界魔法。土槍牢」


「グハッ」


「おい。どうなってる。グハッ」


「ガサダ。もう1度、結界魔法っ、グハッ」


「馬鹿な。俺の結界魔法が無意味だと。グハッ」


「くそっ。とにかく攻撃だ。囲め~~~」

















「来るな~~~。無傷で勝てるんじゃなかったのか。ダンジョン突破の栄光が………………」











アルクのダンジョンのスライムの伝説は続く。












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