第12話 軍投入







「腕試しなら、このアニメニア王国のナナマのダンジョンだな」


「ふふっ。前回は99階層で諦めたけど、今回はアルクくんもいるし、装備も進化してるから突破出来るかも」


「そうだな。200年間、誰も突破していないダンジョンを突破すればアルクの名が一気に大陸中に広がるだろうな」


2人で盛り上がっているのだが……僕達の目的はレベル上げなんだよね。


レオンくんもイリスちゃんもレベルが僕より高いって言ってるけど、見た目だけが派手な攻撃が出来るだけで、攻撃力も防御力も低いんだよね。きっと見えを張っただけで、本当はね。まあ、2人ともまだまだ子供だからね。










「転移」


ダンジョンに着くとレオンくんが何かを取り出し叫んだのだが?


「え~っと……ここはダンジョンの中だよね?」


「ああ、このナナマのダンジョンは80階層までしか転移で降りれないからな」


「え? 80階層?」


「私達は99階層まで降りたって言ったでしょ」


え? 本当に? 80階層と見栄を? 本当は8階層くらいかも?








遭遇した魔物はレオンくんとイリスちゃんが瞬殺。









迷わずに進んでいくレオンくんとイリスちゃん。


まるで次の階層に降りる階段の場所が分かっているかのように走って進んでいく。







弱い魔物しか出て来ないってことは、やっぱりね。







僕達はサクサク進んで行く。







まだ8時間くらいしか進んでないのに、レオンくんが言う。


「この先にある扉が100階層のボスだ。俺とイリスだけで戦ってみるから、アルクは見守っていてくれ」


100階層? ボス? まだ20階層くらいだと思うんだけど? 遭遇する魔物も弱いし、大丈夫だよね。


「いいけど、何かあればすぐに助けに入るからね」


「ふふっ。どれくらい強くなってるのか試すのにちょうどいい相手だよね」


ちょうどいい? ボスが何の魔物なのか分かってるのかな?










扉の中には大きな魔物が1匹だけいた。


トカゲの魔物か。なら2人でも大丈夫かな。


「魔法弓、雷神速矢」


戦いはイリスちゃんの先制攻撃から始まった。


トカゲの魔物がイリスちゃんの方へと動き出す。


イリスちゃんは既に構えを取っていて、2射目を放つ。


「魔法弓、雷神怒怒矢~」


放たれた矢はイリスちゃんに向かって来ていたトカゲの魔物に命中するが……トカゲの魔物は止まらない。



「どこを見てる。お前の相手は俺だ。魔法剣、炎纏強重撃~」


イリスちゃんの方へ突進していたトカゲの魔物の側面からレオンくんがド派手な攻撃。


巨体にもかかわらず、1mほど吹き飛ぶトカゲの魔物。


「グオオォ~~~」


レオンくんの攻撃を受けた箇所から大量の血が溢れているトカゲの魔物。動きを止め、レオンくんの方を向き、叫んでいる。



「レオン、ブレスが来るわよ。魔法弓、雷神怒怒矢~」


ブレス? 


「分かってるよ。魔法結界、氷厚壁」


レオンくんの前に氷? 氷の壁? え? 火を吐いた?


レオンくんの前に氷の壁が出来た直後にトカゲの魔物がレオンくん目掛けて5秒ほど火を吐いたのだ。


よかった~。中々、丈夫なんだね。


氷の壁でトカゲの魔物の攻撃を完全に防げていた。


レオンくんは剣を振り上げ、高く高くジャンプする。


「次は俺の番だよな。魔法剣、巨大氷剣」


レオンくんの剣が大きくなった?


「魔法弓、雷神速矢」


イリスちゃんの矢がトカゲの魔物の右目に突き刺さる。


そして振り下ろされた巨大な剣。


トカゲの魔物は動きを止めた。


「ふふっ。楽勝だったね」


「俺達の攻撃力はかなり上がってるな」


「ふふっ。何って言ったって魔弓と魔剣だからね」


「魔鎧の効果も大きいだろうな」


「ふふっ。アデルくん、どうだった? もう足手まといにはならないよね」


「まあ、これくらいの階層だとね。でも過信し過ぎちゃダメだよ。死んだら終わりなんだからね」


「ふふっ。危ない時は守ってね」


「俺とイリスだけでも突破出来そうな感じはするが、頼りにしてるよ、アルク」


2人だけでトカゲの魔物を倒せたのが嬉しかったのか笑顔の笑顔のレオンくんとイリスちゃん。


ボス部屋はボスを倒せば数十時間は安全だということで、僕達は休むことにした。



















僕は知らなかった。


僕達がダンジョンで戦っている時に……。


あのスライムも戦っていたということを。











「全滅だと? 相手はスライム1匹なのだろ? それも、色なしの」


「冒険者ギルドがS級冒険者の力を過剰評価しているだけなのかと思っていましたが……忠告を受け止めるべきでした」


「本当に全滅なのだな」


「はい。ナムダ将軍が記録の玉を残してくれていたので確認出来ますよ。ナムダ将軍率いる精鋭部隊でも、まるで戦いになっていませんでしたがね」


「記録の玉?」


「入口の扉近くに設置してくれていました。全滅すれば扉を開けることが出来ますからね」









それは一方的な蹂躙だった。


ナムダ将軍の苦痛な叫びが続いている。


「馬鹿な。武器での攻撃も魔法も効かないだと」


スライムの1度の体当たりで、10人前後の兵士が殺られていく。


「おのれ~~~。必殺、光輝烈斬~~~」


ナムダ将軍の最強の必殺技。


なのになのに。


「くそ~。この攻撃でもダメなのか」


ナムダ将軍はすぐにスライムから距離を取り、兵士達の後ろへと移動する。


どんどん減っていく兵士達。


泣き叫びながら、必死に扉を開けようとする者もいたが、ここはダンジョンボスの部屋。


「無念です。陛下」


ナムダ将軍はそう呟くと前に出た。


大ダメージを諦め、連続攻撃に出た。


ダメージを与えることの出来ない兵士達は自分達の役割を全うする。


それは盾。


身を犠牲にしてナムダ将軍の盾となる。









「私が鍛え上げた兵士達が……」


立っているのはナムダ将軍のみ。


次のスライムの攻撃を防ぐことが出来ないナムダ将軍は最後の攻撃を。


「必殺、光輝烈斬~~~」













「あのナムダ将軍が1撃でだと?」


「あのスライムは異常です。攻撃力も防御力も」


「冒険者ギルドの報告は事実だったということか……」


「はい。このダンジョンの攻略は誰にも出来ないでしょう。我々の二の舞いにならぬように、国だけでなく、冒険者ギルドにも、この記録の玉の映像を提出する方がよろしいかと」


「だな? しかし……」


「はい。私も無理だと思います」


「私から直接陛下に報告しよう。このダンジョンをすぐに立ち入り禁止にするように」


「それは無理です。ダンジョンは国の物でも冒険者ギルドの物でもありません。出来ることはダンジョンボスに挑戦する順番の管理のみ。挑戦を拒むことは禁止されていますよ」


「くっ。そうだったか。……なら、挑戦する者達はこの映像を見ることを義務に。それでも挑戦するのなら、ナムダ将軍のように記録の玉を残すことを義務に」


「それなら可能ですね」









スライムのダメージ22。


そして翌日には回復。


アルクのダンジョンのスライムの伝説が始まった。


















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